<産業技術総合研究所>サルを使った実験なのに、そのことを隠してプレスリリース

経済産業省の研究所である産業技術総合研究所(産総研)も動物実験を行っています。

以前、新しくできた動物実験施設が使えないということで、瑕疵問題が国会で問題になったこともありました。

しかし驚いたのですが、先日公表された「4592-脳損傷後に新たに形成される神経路を発見 -脳の変化を適切に促すことで運動機能が回復する可能性-」なるプレスリリース読んだところ、何の動物を使ったのか出てきません。何度読んでも、不明です。

驚いたことに、「モデル動物」を使った実験であることだけが書かれており、種名はおろか、サルかネズミかすら書かれていないんです!

そんなことってあり得ますか?

仮にも科学研究のプレスリリースで、使った動物種を書かない。

多くの論文で、使われた動物に関する情報が欠けていることは研究でも明らかになっていますが、さすがに人に広めるときにサルかネズミかも書かないなどということがあり得るのでしょうか。

驚きましたが、参考にリンクされている過去のプレスリリースを見たところ、なんとそこにも使われた動物種が書かれていません。霊長研の名前があるので、サルかもしれないことだけが推測できます。

今回のリリースでも、イラストの手が、どうもサルっぽいので、ニホンザルでしょうか?

でもそこに気が付かなければ、ラットかな?などと思う人だっているかもしれません。

そして、このイラストから感じるのは、サルを使っている実験は残酷な印象を与えるから写真も使いたくないし、サルであることすら一般には明かしたくないのだろうということです。脳損傷モデルという侵襲的かつ残酷な実験だから起きたことだと感じます。

そこで、リリースのページにあるメールフォームから、「こちらのリリースを拝見したのですが、『動物モデル』とは一体、どの種を用いたものでしょうか? 動物種をあえて公表しない理由について教えてください。」と質問を送りました。

そうしたところ、産業技術総合研究所報道室から回答がすぐありました。

回答

【回答】

本研究のモデル動物は、アカゲザルです。

今回の成果は、2019年10月3日(米国東部夏時間)に米国科学誌Journal of Neuroscienceにオンライン掲載されました。以下のリンク先で原著にあたることができます。

https://www.jneurosci.org/content/early/2019/09/11/JNEUROSCI.0077-19.2019

一般の方へのプレスリリースですので、研究成果を分かりやすく伝えるため、今回、ヒトではなく動物の成果であることを簡潔に記載しました。動物種を隠す意図はありません。プレスリリース後メディア等から問い合わせがあった際にはその都度、明確に動物種を回答しています。

今後、詳細を知りたい方が、すぐに原著論文に当たれるように、可能な場合はDOIを追記するようにいたします。

貴重なご意見ありがとうございました。

なんと、ニホンザルではなくアカゲザルでした。ニホンザルの研究者はアカゲザルやカニクイザルが、頭がよくない、手先が器用でないなどとよく言っているので、てっきりニホンザルかと思ってしまいました。(ニホンザルを使うべきだという意味ではありません! ミスリードされる人は多いだろうという意味)

論文のサマリーにもMacaca mulattaとあり、アカゲザルであることは確認できましたが、有料ですので内容までは確認していません。ですので、どのような実験手順が踏まれたのかや殺処分方法についてはわかりません。

いくら一般向けとはいえ、ヒトではなく動物の成果であることだけ伝えればいいという考え方は、全く理解できません。

サルであることを書いたとしてもわかりやすさを阻害しません。

むしろ、内容を理解するためには正しい情報提供が必要です。意味不明なプレスリリースを出してどうするんだ?と思います。

動物を犠牲にしていることに対して真面目でないだけでなく、科学に対しても真摯な態度と思えません。

サルを侵襲的な実験に使ったことも当然批判されるべき行為ですが、隠したらなお批判されるのではないでしょうか。

サルを使ったことを隠したいわけではないと言われて、信じられますか?

該当論文:
Premotor Cortical-Cerebellar Reorganization in a Macaque Model of Primary Motor Cortical Lesion and Recovery
Tatsuya Yamamoto, Takuya Hayashi, Yumi Murata, Takayuki Ose and Noriyuki Higo
Journal of Neuroscience 23 October 2019, 39 (43) 8484-8496; DOI: https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.0077-19.2019


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