いよいよ摘発! 実験用カニクイザルの密輸でカンボジアの役人と販売業者らがアメリカで起訴!

アメリカから驚くべきニュースが入ってきました!

11月16日、カンボジア政府の野生生物保護の担当職員が、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港で身柄拘束され、なんと容疑は実験用カニクイザルの密輸等だというのです!

これまで長い間、カニクイザルの実験用の違法捕獲や密輸について、海外の団体から指摘が続けられてきましたが、いよいよ実験用カニクイザルの消費国であるアメリカでも立件されたことがわかり、感無量です。(中国での事例についてはこちら

密輸業者だけではなく、賄賂により便宜をはかった役人まで逮捕・起訴されたのは、すごいことです。しかも、パナマで開催されているワシントン条約(CITES)締約国会議に向かう途中で逮捕というのが、またすごい。平然と出席するつもりだったとは、驚くばかりです。

カンボジア森林局の職員らがサル密輸容疑で米国当局に逮捕された。同日、別の森林局幹部は、カンボジアでの違法なサルの取引を否…

逮捕された役人は既に起訴されており、カンボジアのプノンペンとポーサットで 2 つのサル繁殖場を運営するバニー・バイオリサーチ(Vanny Bio Research (Cambodia) Corp. Ltd.)の関係者6人も起訴されていることがアメリカ司法省連邦検事局から公表されました。

その緊急プレスリリースの翻訳を下記に掲載します。

香港に本拠地のある実験用霊長類販売のバニーグループは、トップがアメリカで起訴される事態となっていますが、ここからサルを仕入れている日本の実験動物販売業者は、いったいどうするのでしょうか。アメリカ司法省連邦検事局のプレスリリースによれば、彼らが違法に輸出したのは、アメリカだけではないことがわかります。

また起訴状から、より詳しい内容を報じている記事によると、930 万ドル相当の野生捕獲のサル2,634匹が不法に米国に持ち込まれたとのこと。役人が、施設周辺の土地を購入して道路にすれば、より安全に密輸ができると指南したことなども書かれています。

Radio Free Asia

The Cambodian agency responsible for protecting wildlife den…

この記事には、保護団体である「ワイルドライフ・アライアンス」のコメントとして、サルは2年に1回しか出産しないため、合法的な飼育下繁殖は需要を満たすことに苦労しているとあります。 違法取引が盛んに行われると、実験用のサルは「消耗品」となってしまい、製薬会社がサルを慎重に扱うインセンティブが弱まるという指摘も。

起訴された面々は、最長で懲役145年となりうる事態に直面しています。日本の感覚からすると長いでしょうが、アメリカ市民を公衆衛生上の危険にさらしたことも大問題です。

それに、多数のサルたちが動物実験で苦しめられ、殺されて行ったことを思えば、人間はただ刑務所に入っていればいいのですから、何と人道的に扱われることでしょうか。

South China Morning Post

Masphal Kry, his colleague and six workers linked to a Hong …

カニクイザルは、CITESデータベースで最も多く取引されている霊長類であり、ほぼすべてが動物実験向けです。 2011年から2020年までの間に60万匹以上が輸出され、捕獲後に生まれたか飼育下で繁殖されたと申告されています。2020年だけで、約165,000匹の生きた個体が国際取引されました。日本にも年間およそ5千匹が輸入されています。コロナ禍以降、中国からの輸入が止まったため、カンボジアからの輸入がおよそ6割以上を占める状況になっています。

続き

昨年、カンボジアの実験用霊長類の施設からアメリカに多数のカニクイザルが密輸されてきたことがようやく立件され、施設の関係者だけではなく、香港の本社の経営者や、カンボジアの国の役人までアメリカで起訴されるに至りました。[blogcard u[…]

追記

また、起訴状によると、このカンボジアのサル飼育場は、輸出や輸送に適さないと判断された飼育下繁殖のサルを安楽死させ、その識別タグを野生のサルに移した可能性があるとされているとのこと。これらのサルのワシントン条約上の許可は、彼らを飼育下飼育されたものと誤って特定したうえで許可されていました。起訴状には、2018年以降、偽の許可証で米国に入国した疑いのある野生のサル2,600頭が列挙されているそうです。

The Globe and Mail

Non-human primates should be captive-bred and acquired from …

緊急リリース翻訳

アメリカ司法省
連邦検事局
フロリダ州南部地区

緊急リリース

2022年11月16日水曜日

霊長類の密輸計画に参加したとして
カンボジア政府関係者と6人の共謀者が起訴される

マイアミ:国際的な霊長類密輸組織のメンバーが、野生のカニクイザルを米国に持ち込む役割を果たしたとして複数の重罪容疑で起訴された。

これら8件の起訴状は、カンボジア農林水産省森林管理局の職員2名、大手霊長類提供組織のオーナー兼創業者とそのゼネラルマネージャー、およびその職員4名を、密輸と「レイシー法」および「種の保存法」違反の共謀で告発するものである。この重罪に問われている被告は以下の通り。

・ オマリス・ケオ(Omaliss Keo)、58歳、カンボジア・プノンペン、カンボジア農林水産省森林局局長

・ マッパル・クリー(Masphal Kry)、46歳、カンボジア・プノンペン、カンボジア農林水産省森林局野生生物・生物多様性局次長

・ ジェームス・マン・サン・ラウ(James Man Sang Lau)、64歳、香港、バニー・リソース・ホールディングス/バニー・バイオ・リサーチ(カンボジア)オーナー兼創業者

・ ディクソン・ラウ(Dickson Lau)、29歳、香港、バニー・リソース・ホールディングス・ゼネラルマネージャー

・ サニー・チャン(Sunny Chan)、香港、バニー・グループ・副ゼネラルマネージャー(オペレーション)

・ ラファエル・チェン・マン(Raphael Cheung Man)、71歳、カンボジア・プノンペン、バニー・バイオ・リサーチ(カンボジア)広報・輸出担当マネージャー

・ サラ・ユン(Sarah Yeung)、香港、バニー・グループ財務担当者

・ ヒン・イップ・チュン(Hing Ip Chung)、61歳、カンボジア・プノンペン、バニー・バイオ・リサーチ(カンボジア)ゼネラルマネージャー

有罪判決を受けた場合、各被告は1件の共謀罪で最高5年の禁固刑、2~8件の密輸容疑ではそれぞれ最高20年の禁固刑に処される可能性がある。また、それぞれの訴因に関して、最高25万ドル、または被告が得た金銭的利益の2倍の罰金を科される可能性がある。

クリーは本日、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港で逮捕され、その結果、起訴状が公開されることになった。

起訴状の申し立てによると、カニクイザルとして知られるオナガザル(Macaca fascicularis)は、ワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)で保護されており、米国に輸入するためには特別許可が必要となる。こうした手続きによって、条約締約国は取引量と種類の影響を監視し、取引が合法であり、保護対象としてリストアップされた種の保存に有害な影響がないことを確認することが可能になる。カニクイザルは1977年以来、ワシントン条約のもとで規制されている。ワシントン条約の規定は、米国では「絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律(ESA)」を通じて実施されている。ワシントン条約の許可証には個別に番号が振られ、輸出に関する詳細な情報が記載されており、その中には、その動物が飼育下で繁殖したものか、野生から捕獲したものかを示すソースコードも含まれている。

さらに起訴状では、香港で活動するジェームス・ラウとディクソン・ラウが一連の関連企業を所有・運営し、カンボジアの闇市場の収集家や汚職役人と共謀して野生で捕獲したサルを入手、飼育下繁殖と偽って米国やその他の国に輸出するためにカンボジア企業を通じてロンダリングを行ったとしている。

カンボジアの適切な飼育下繁殖のサルの不足を補うため、共謀者はカンボジアのワシントン条約当局と農林水産省(MAFF)の協力を得て、カンボジアの国立公園や保護区から捕獲した野生のサルを提供した。これらのサルは飼育施設に運ばれ、偽造のワシントン条約輸出許可証が提供された。これにより、3000匹の「非公認」サルの捕獲枠が認められ、農水省の職員は現金の支払いを受け取った。

共謀罪に関する起訴状では、犯罪事業を遂行するために共謀者の1人または複数が行った31の代表的な「明白な行為」を挙げている。その中には、協議、金融取引、数百匹のサル(野生と飼育下の繁殖が混在)のフロリダとテキサスへの偽の書類による輸出が含まれている。野生のカニクイザルも、クリー被告とMAFFの他の職員がカンボジアのプルサットにある施設に届けたとされる。

クリーは2017年12月から2022年9月にかけて、野生のサルを捕獲し、共謀者が運営するサル飼育施設に引き渡すための価格設定に関する会話に参加したとされる。これらの「非公認」のサルをバニー・バイオ・リサーチ(カンボジア)などの施設に届けることに個人的に参加したクリーは、共謀者から違法なサルの代金も受け取っていた。

フロリダ州南部地区のフアン・アントニオ・ゴンザレス連邦検事は、「カニクイザルはすでに国際自然保護連合によって絶滅危惧種と認定されている」と述べた。「生息地から違法に連れ出して研究室に閉じ込める行為は、私たちが止めなければならない。責任ある保護活動よりも貪欲さが優先されることがあってはならない。このようなケースに対して、私たちは変化をもたらすことができる立場にある」

違法輸入の責任者を追跡し、裁判にかけることは、その変化をもたらすための第一歩である。

「カンボジア森林局の政府職員であるマッパル・クリーは、米国の法律に反して不法に輸入する共謀の疑いで本日逮捕された。彼は東南アジアから米国へのヒト以外の霊長類、特にカニクイザルの輸入に関与したとされるため、米国で司法と向き合うことになる」と、国土安全保障捜査局(HSI)ニューアークのリッキー・J・パテル担当特別捜査官は述べた。「HSIは、米国に影響を及ぼす関税違反の捜査を続け、連邦検事局、合衆国魚類野生生物局(FWS)、法執行部、税関・国境警備局、内国歳入庁などの連邦政府のパートナーと協力し、あらゆる権限を活用して、世界のどこに住んでいようと、人々や組織による法律違反を阻止していく」

このような捜査において結果を出すためには、多くの時間をかけて協力し合うことが必要になる。

「カニクイザルの野生個体数および米国市民の健康と幸福は、これらの動物が自然の生息地から持ち出され、米国やその他の地域で違法に販売されることによって危険にさらされている」と、合衆国魚類野生生物局法執行部次長のエドワード・グレース氏は述べた。「合衆国魚類野生生物局は、生物医学や製薬の研究に使用される野生カニクイザルに関する大規模な違法ロンダリングを暴露する、この複雑かつ、複数年にわたる調査の先頭に立った。私たちは、野生のカニクイザルに対する大規模な密猟を終わらせ、この犯罪組織を壊滅させるために、複数の米国連邦政府機関を率いながら、『1つの政府』アプローチを提供した」

声明は、フロリダ州南部地区のフアン・アントニオ・ゴンザレス連邦検事、合衆国魚類野生生物局法執行部次長エドワード・J・グレース氏、現地事務所国土安全保障捜査官(HSI)ニュージャージー州ニューアーク支局特別捜査官リッキー・J・パテル氏が発表した。

この事件は、合衆国魚類野生生物局法執行部、HSIニューアーク支局、HSIマイアミ支局、および合衆国内国歳入庁によって捜査されていた。連邦検事補のトーマス・ワッツ=フィッツジェラルドとエミリー・ストーンが同事件を起訴している。

起訴は告発に過ぎず、被告人は有罪が証明されない限り無罪と推定される。

〔情報提供呼びかけと文書公開についての部分は割愛〕

原文

U.S. Attorney’s Office Southern District of Florida “Cambodian Officials and Six Co-conspirators Indicted for Taking Part in Primate Smuggling Scheme” November 16, 2022

* Vannyグループの社名の日本語表記は、日本の農林水産省のリストでは「ヴァニー」となっていますが、日本事務所名称は「バニーグループ」となっているので、「バニー」としました。

追記

その後の動向や、関連する世界の霊長類の動向については以下の記事をご覧ください。

関連記事

昨年、カンボジアの実験用霊長類の施設からアメリカに多数のカニクイザルが密輸されてきたことがようやく立件され、施設の関係者だけではなく、香港の本社の経営者や、カンボジアの国の役人までアメリカで起訴されるに至りました。[blogcard u[…]

その後、イノティブとチャールス・リバーに対し、証券取引委員会も調査に乗り出しました。

関連記事

アメリカでは昨年11月、カンボジアから実験用カニクイザルの密輸が行われてきたことが公けになり、国際的な霊長類密輸組織に対する司法省(DOJ)の取り締まりの一環として、イノティブ(Inotiv)の子会社である霊長類サプライヤーの従業員とカンボ[…]

関連記事

関連記事

日本へサルを輸出する際の検疫施設として指定されている現地施設の一覧です。農林水産省のサイトでも公表されました。 農林水産省:感染症の病原体を媒介するおそれのある動物の輸入に関する規則第4条の規定に基づき、農林水産大臣が指定する施設[…]

関連記事

霊長類は、すべての地域から原則輸入禁止ですが、試験研究用または展示用のサル(厚生労働・農林水産大臣の指定を受けた試験研究機関または動物園で飼育されるもの)に限り、指定の地域から輸入可能です。すなわち、愛玩用の輸入は禁止です。指定の地[…]

関連記事

中国では、昨年、動物実験用の繁殖施設へ向けてカニクイザル2735匹がベトナムから密輸されていたと報じられ、PEACEのブログでもこのことをご紹介しました。(こちら)この事件では主謀者の呼び名は「阿六」と報じられており、広西チワン族自[…]


関連記事

動物実験に使われるサルたちについての記事一覧です。目次実験用ニホンザルを繁殖する国家事業[sitecard subtitle=関連記事 url=https://animals-peace.net/experiments/[…]

ニホンザル親子
アクションをお願いします

署名にご協力ください日本が最大の消費国 ジャコウネココーヒー「コピ・ルアク」の取り扱い中止を求めるアクション[sitecard subtitle=関連記事 url=https://animals-peace.net/action[…]

活動分野別コンテンツ

活動報告ブログ

最新情報をチェックしよう!
NO IMAGE

動物の搾取のない世界を目指して

PEACEの活動は、皆さまからのご寄付・年会費に支えられています。
安定した活動を継続するために、活動の趣旨にご賛同くださる皆さまからのご支援をお待ちしております。

CTR IMG