3月8日まで、化粧品基準改正のパブリックコメントが行われていました。
現在の日本の法律では、国は化粧品(医薬部外品ではない化粧品)には動物実験は求めておらず、新規成分であっても企業は自らの責任で安全性を担保すればよい形になっていますが、一部例外があります。
化粧品基準の別表に収載されないと使えない種類の配合成分が存在し、この別表の改正の際には現状、動物実験のデータが求められてしまいます。
例えば、「防腐剤、紫外線吸収剤及びタール色素」については、化粧品基準の別表3・4(いわゆるポジティブリスト)に収載された成分・量の範囲でしか配合できません。そして、企業が新たにこれらの分野でポジティブリストに成分の収載を求める際には、現状、動物実験のデータの提出が求められているのです。
これまでの化粧品基準改正は、このポジティブリストへの収載のためのものが多かったのですが、今回パブリックコメントにかかっていた成分は、化粧品への「防腐剤、紫外線吸収剤及びタール色素以外の成分の配合の禁止・配合の制限」に該当する成分で、別表2、いわゆるネガティブリストへの収載です。
もちろん現時点ではネガティブリストの改正のためにも動物実験が求められており、必要なデータはポジティブリスト収載申請に準じる形がとられています。
ただし、厚生労働省に問い合わせたところ、今回追加される物質はシステアミン塩酸塩で、過去に既に安全性評価がされており、化粧品基準収載に際しての新たな動物実験はされていないとのことでした。
これは以前よりパーマ液に使われている物質で、その成分が新たに医薬品(点眼薬)の有効成分として承認されるため(注:3月26日付けで既に承認されました)、化粧品基準のネガティブリストに載せなければならくなったとのことです。医薬品成分は化粧品には使用禁止であり、もし使うのであれば、このネガティブリストで使用範囲や量を規定しなければならないからです。パブコメ案では、頭髪用の製品にのみ使えるようになっていました。
この改正に先だって、厚生労働省から下記の通知が出されており、今回、かなり臨時的・特例的な対応がなされていたことがわかります。
参考
システアミン塩酸塩を配合した化粧品の取扱いについて(令 和 6 年 3 月 2 6 日)
過去の情報
システアミン塩酸塩を配合した洗い流すヘアセット料の安全性に関する調査
システアミンを配合した化粧品の使用上の注意等について
過去の化粧品基準改正について
ちなみに、EUが化粧品の動物実験の完全禁止を実現した2013年以降に、日本で行われた化粧品基準の改正は、下記の2件だけです。(上記パブコメを経て行われる改正は3回目)
少なくとも1件では、明らかに日本での新規申請のための動物実験が行われていました。
2019年3月20日に新たにポジティブリストに収載された成分
2019年3月20日、化粧品へ配合できる紫外線吸収剤として、4―メトキシケイ皮酸 2―メチルフェニルが追加されてします。この改正について審議した2018年10月22日の「薬事・食品衛生審議会 化粧品・医薬部外品部会」 の議事録によると、申請した企業はリードケミカル株式会社です。
議事録では、「現在までに国内外において本成分の化粧品への配合実績はありません」と明言されており、「安全性に関する資料」の説明では、モルモットを用いたmaximization test(皮膚感作性試験)、ウサギを用いた連続皮膚刺激性試験、ラットにおける3か月反復経口投与毒性試験、ウサギを用いた経皮投与による胚・胎児発生試験が行われたことが述べられています。
動物実験自体がいつ行われたものかはわかりませんが、この新規成分のために新たに動物実験が行われたことは明らかです。リードケミカル株式会社は化粧品会社ではなく、原材料メーカー。
消費者の声が直接届かぬところで、こうして動物実験が行われていることがわかります。
2016年6月1日に新たにポジティブリストに収載された成分
もう1件の化粧品基準改正は、同じく紫外線吸収剤のトリスビフェニルトリアジンを追加するために行われました。
2015年11月9日の「薬事・食品衛生審議会 化粧品・医薬部外品部会」の 議事録によれば、申請者は岩瀬コスファ株式会社でした。部会開催の翌日にブログに記事をアップしていましたが、そのときは、どこの企業が申請者かわかりませんでした。
昨日、厚生労働省の化粧品・医薬部外品部会が開催されました。企業が承認申請を出している具体的な製品等について審議がされるので非公開ですが、審議結果について情報を得ることができました。ちなみに、今回議題として事前に公開されていたのは以下[…]
議事録も公表まで時間がかかり、情報公開請求して手に入れた資料(概要しか開示されません)には、BASF SEが開発した成分であることが書かれていたため、 当時、BASFジャパン株式会社に問い合わせをしました。そして、コーポレート・アフェアーズ本部から、当時下記の回答をもらってました。
1回目
また、厚生労働省の化粧品・医薬部外品部会については把握をしておりません。何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
トリスビフェニルトリアジンはBASFが「Tinosorb」という製品名で販売している化学品です。
厚生労働省から入手された資料にBASF名が記載されているのはそのためと思われます。しかしながら、本物質の化粧品基準改正申請に関しましては、前回お伝えした通り、弊社およびBASFグループ会社では行っておりません。
弊社が申請者ではないため、大変申し訳ございませんが、申請者および申請内容の詳細についてお答えすることができません。
なお、化粧品用途向け本製品の動物実験につきましては、添付の文書をご参照ください。
何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
(EU化粧品規則(EC)No 1223/2009のために2009年3月11日以降BASFによって、もしくはBASFの代理の者によって、動物実験は実施されていない)
厚生労働省から開示された申請資料概要を見ると動物実験は多数行われていますが、丁寧にも実験の日付が墨塗りになっているため、上記が本当かどうかは確認できません。非常に残念なことです。申請者がどこの企業かは判明しましたが、釈然としないものが残りました。
基本情報化粧品の動物実験を禁止する国の一覧(随時更新)日本の規制はどうなっているの?動物実験を行って申請してきた企業一覧(化粧品編)JaCVAM(日本動物実験代替法評価センター)が企業アンケートの[…]