牛 角

2023年振り返り① 有罪判決が出るなど牛への暴力が表面化

去年(2023年)、動物を虐待したとして全国の警察が動物愛護法違反の疑いで検挙した事件数は、おととしを15件上回る181件だったと、本日、報道がありました。

NHKは「『より弱いものに攻撃』犬や猫、牛まで…動物虐待疑い事件急増」、TBSは「ニワトリやウシ、カメも…動物虐待事件、去年1年間の摘発件数は過去最多の181件 犬と猫で9割」と報じており、いずれもタイトルにを入れていました。

去年、PEACEも牛への暴行事件を1件刑事告発しましたが、ほかにも牛への暴力が発覚した年でした。時間が取れずブログに載せられなかったことを振り返りでまとめていきます。

 

6月 大田原農場(島根)の従業員による牛への暴行動画が炎上

昨年6月、牛を蹴ったりロープで頭部を縛りあげたりする暴行動画がインターネット上で拡散され、島根県にある大田原農場の従業員の投稿であるとされていました。農場側はそれを事実と認め謝罪文を公表しましたが、動画の行為は間違いなく動物愛護法違反であり、PEACEでは実行した従業員と法人としての農場を刑事告発しました。

残念ながら法人としての大田原農場については不起訴となってしまいましたが、従業員であった外国人の男性には罰金20万円の有罪判決が下されました。すべての動物虐待事件が報道等されてきたわけではないので断言はできませんが、おそらく畜産動物への暴力での虐待事件が立件されたのは初めてではないかと思います。

最終的には殺すことになる畜産動物についても暴行罪での立件がされたことは、生きている間の動物たちの福祉の担保にとって大きな一歩となります。

この件についてはInstagram上で報告していましたので、以下にまとめます。

 

 

7月 茨城県畜産センターの牛への暴力・不適切飼養発覚

7月には、茨城県畜産センターの牛への暴力や不適切飼育についてPETAアジアによる暴露がありました。この件については、複数の記事をアップしており、現在も働きかけを続けています。関連情報はこちらのページからご覧ください。

まとめページ

2023年7月、PETAアジアが茨城県畜産センターの牛の暴力的扱いや劣悪な飼育環境について、内部告発に基づく暴露を行いました。動物実験施設でもあるこの施設の問題について、PEACEでも投稿をしてきましたので、このページから関連情報をたどれる[…]

10月 青森県立三本木農業恵拓高校の牛舎事故は牛への暴力が原因だったことが確定

2021年12月、青森県十和田市の旧・三本木農業高校(現・三本木農業恵拓高校)で、当時2年生の男子生徒が校内の牛舎で実習をしていた際に頭部を負傷、重体となった事故がありました。

この事故について、7月に当時実習助手だった男性が業務上過失傷害容疑で書類送検されたとの報道がありました。

このときの報道では、「現場で指導していた男性職員が干し草などをすくう際に使うフォーク状の鉄製の農具で牛を追い払おうとした際に誤って生徒にぶつけた疑い」(NHK)、「実習助手が持っていた鉄製の棒が頭部に当たった」(佐賀新聞)、「牛を追い払うため鉄製の棒を振り回して生徒の右頭部にぶつけた」(共同通信)、「フォーク状の農機具を振り上げた際、近くにいた男子生徒に当たり」(デーリー東北)、「周囲の安全を確認せずに振り回したフォークを誤って生徒の頭に刺し、脳挫傷などの重傷を負わせた」(読売新聞)等、様々な表現が使われていましたが、Web東奥は「男子生徒の頭部右側にあった傷痕が、農具の爪部分の形状と合致したことなどから、実習助手が農具を振り上げた際に、後ろにいた男子生徒の頭部に爪部分が刺さったとみられる。4本あった爪のうち、3本は欠けた状態で見つかった」と詳細に報じていました。

また、時事通信は「牛舎内でフォーク状の農具を振り上げて牛をたたくなどした際」と書いており、どうやら牛への暴力が事故の原因と思われました。

しかし、7月に県が公表した中間報告では、この点について全く触れていませんでした。事故の原因は牛の角ではなかったにもかかわらず、報告書では、ほかの農業高校では牛が除角されているなどとあり、まるで頓珍漢でした。濡れ衣です。

PEACEとして、調査委員会は調査を最初からし直すべきだと青森県に意見を送りました。事故の原因は実習助手が不適切に牛に暴力をふるったことが原因であり、この牛がもともと興奮しやすかったのは、日頃暴力を振るわれてきた可能性もあるのではないかと懸念を示しました。

また、牛の除角は牛に大きな苦痛を与えることから、無実の罪で牛を苦しめることは止めるよう要望しました。そもそも牛を放牧させる場所があれば、狭い牛房に牛がいる状態で生徒が掃除しなくてもすむのではないでしょうか。根本原因は牛に自由を与えていないことにあるのではないかとも思いました。

そして10月、調査委員会の最終報告書が公表され、詳細が判明しましたが、やはり実習助手はフォークで強く牛を叩いていました。(以下、太字マーカーはPEACEによる)

令和3年12月27日(月)午前10時20分頃、当該校において、動物科学科産業動物専攻の生徒による牛の飼養管理実習中に、同校2学年
(当時)の男子生徒(以下「当該生徒」という。)が肉牛舎第6牛房内で1人で清掃作業をしていたところ、牛が頭を低くした体勢で当該生徒の至近距離にいる状況(図3参照)を発見した実習助手(以下「当該実習助手」という。)が、威嚇状態であると判断し、第6牛房の中に入り牛と当該生徒の間に分け入った。当該実習助手は牛を追い払うために、自身が持っていたフォーク(農具)で牛の顔や頭を強く振り下ろすように叩いた。牛を叩いて追い払った後、当該実習助手が振り向くと当該生徒が頭部を負傷して倒れていた。
当該実習助手は、牛が人間との主従関係を無視するような行動をとった場面などにおいて、これまでも農具で牛を叩いたことが複数回あった
一部の教職員は、牛が頭を下げて寄ってきた際の対応について「鼻先を叩く」ように生徒に指示しており、生徒アンケートでも「危ない時にはスコップで牛の鼻を叩く」ように教職員から教わったそうで、危険を回避する方法として「牛を叩く」ことについては必ずしも禁忌事項ではない状況だったと書かれていますが、人が重傷を負うほどの力で思い切りフォークを振り上げて強く牛を叩くことは想定されていないと思います。
農具を本来の使用目的から外れて使用していることに加え、「牛を叩く」行為については、日常的に牛を叩くことにより、牛の人間に対する警戒心や排除行動を助長することが懸念されることから、牛の飼養管理の観点からも、当該実習助手が危機的状況を回避するためにとった行動は不適切であった。
事前の安全指導では、「作業中に牛の威嚇行動があった場合には、牛房から速やかに出る」よう生徒に伝えており、本件事故においても、当該生徒の負傷を防ぐためには、可能な限り当該生徒を牛房の外へ避難させる対応をとるべきだったと考えられるが、動物科学科ではそのような緊急時の対応訓練を行ったことは無かった。
当該実習助手が牛を追い払うためにフォーク(農具)で牛を叩いたことについては、人が近くにいる状況で農具を強く振り下ろすような行為は極めて危険であることは明確であり、農具の適切な使用を指導する立場にある教職員として不適切な行為である。

しかし、結論として、除角をすることが提言されるだけでなく、生徒作業時に牛を保定することまで提言されていました。それはあまりにストレスです。代わりに、中仕切りで区分できる構造に牛舎を改築することも提案されていたので、保定ではない方法にしてほしいものだと思いました。放飼場に出すという考え方でないことは残念です。

以下のように提言されていたことだけは救いでした。

牛を強く叩いたり、農具で叩いたりする行為については、牛に対して恐怖やストレスを与え、人間への警戒心や排除行動を助長することが懸念されることから、牛を叩く行為や大声で怒鳴る等の行為を禁止し、動物福祉に配慮した飼養管理の徹底を図ること。
青森県庁ホームページ

 令和3年12月27日に発生した青森県立三本木農業高等学校肉牛舎での農業実習中の事故について、実習中の事故を防止できなか…

ちなみに、この実習助手は不起訴となったことが今年2月に報道されました。

 

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