水族館からラッコが消えても絶滅ではありません 野生ラッコに不幸をもたらすことを願う数々のマスコミ報道に辟易

ここ何年か、日本の水族館からラッコが消えてしまうという報道が、何度も繰り返されています。

繁殖後に育たなかったり、母乳が出なかったり、飼育下で生まれ育った雄が繁殖行動をとらない等の理由で繁殖維持が困難となり、ピーク時は122頭飼われていたものが、何頭にまで減ったという内容です。(現在は3頭です)

しかも、水族館からラッコがいなくなることが問題であるかのような報道ばかりがされていることが驚きです。情報源が水族館しかないからでしょう。中には、水族館からいなくなったら、日本からラッコが絶滅したことになるかのように報じるメディアまであります(下記画像が一例)。今、北海道に野生のラッコが棲みついていることもわかっているのにです。

もう何度も同じような意見をマスコミ宛に送っていますが、例えば2021年末(12月29日)、「ピーク時122頭→国内わずか4頭に…水族館のラッコが“絶滅の危機” 輸入も繁殖もできず模索続く」と報じた東海テレビの感覚では、「水族館にラッコがいること」が「日本にラッコがいること」なのだそうで、本当に感覚が狂っていました。

また、「水族館が(野生のラッコを)保護できることができたらいいのかな~」なんて思っている人が野生動物の研究に携わっていることも恐ろしいと感じました。産業と学問が結び付き、野生動物を搾取する構造が、日本では特に強く存在します。

日本の水族館は、いったいこれまでの総数として、何頭を消費し、死なせてきたのでしょうか。

▼記事の内容は水族館からラッコがいなくなる話であって、野生ラッコが絶滅の危機にあることには触れていない(アメリカの規制がなぜあるのか、その理由に触れていない)。水族館から消えることを「絶滅」と表現する誤りの最たる例。

 

ラッコをペットのように扱いたい人々

最近も、毎日新聞が「かわいい」を連呼する意味不明な連載をしています。最新記事も、マリンワールド海の中道の飼育員の「ラッコのおかれた状況を知ってほしい」という発言で閉めていましたが、「ラッコのおかれた状況」とはいったい何を指すのでしょうか。水族館であと3頭になっていることを知ってほしいと言っているに過ぎないと感じざるを得ません。

なぜなら、この連載は野生のラッコの危機的状況や生息国での保護活動に関する情報をほぼ報じず、毎回、あと3匹しかいない、残ったラッコも高齢だと書き、それが危機であるかのように煽っているからです。

ラッコはペットではなく大海原で生きるたくましい野生動物なのに、記事の内容は飼育員とどうだったとか、本来の生態と全く関係のないことばかり。水族館の言う「教育」がいかに間違ったものであるか、玩具から顔を出す「リロ」の写真などによって、痛感させられます。

水族館は野生動物を消費する施設。その目的は?

マスコミは、「保護」の名目で野生のラッコを捕獲収容したい水族館の手先であるかのような動きをずっとしています。

野生復帰を目指しているごくごく一部の絶滅危惧種や、保護された傷病動物の一部を除けば、動物園や水族館の飼育下に囚われれば最後、動物は二度と野生に戻ることはできません。生涯、超絶狭い施設に囚われ、退屈な時を過ごさなければなりません。食べ物はもちろん、繁殖相手も選べません。

特に水族館は、野生から獲ってきて、見せて、死なせて、終わりという、野生動物の消費傾向が強い施設です。

そもそもラッコは、最大で122匹いた時点から繁殖での維持は成功せず、今に至ります。いわば「失敗」したわけです。またやっても同じでしょうし、失敗しないと言えるだけの根拠は全く示されないのに、それでも新たに手に入れたがるのは、なぜなのでしょうか。しかも日本の動物園・水族館から消えた動物種など、ほかにいくらでもあるのに、なぜラッコはこれだけ騒ぎ続けるのか。

ラッコの見た目がかわいく、水族館にとって集客のドル箱だからだとしか思えません。

しかも、最近出てくる話では、野生復帰させることが困難になることがわかっている幼いラッコを狙って「保護」したいという目論見がちらついています。野生復帰させられないのに、保護する必要がどうしてあるのでしょうか。狙いは一つ、見世物にしたいからしか理由がありません。

ほとんどの野生動物について、弱っていようが組織的に救うことなどなく、自然に任せることが正しいことだとされているのに、どうしてラッコは収容したがるのでしょうか。野生動物にとって成獣になるまでに子どもが死んでいくことは普通のことです。漁業被害の懸念が今から言われている動物をふやす必要があるとも思えません。

しかも、野生で生きられないような弱いラッコを集めて繁殖していくことを考えているということは、体が弱い方向に育種改変していくということですから、生物学的にも、水族館の大義上も、正しいことだとは思えません。実際のところ、水族館の収容の目的は見世物にすることなので、それでいいと考えているとしか思えません。

それを「保護」などと言わないでほしい。

この件でメディアに何度も出てくる鳥羽水族館は、ラッコに芸のようなことをさせて、皆それを喜んで、本当に害しかないと思います。去年の環境省の爬虫類WGで鳥羽水族館所属の委員が動物福祉を軽視した発言をしたことは忘れません。

イルカもそうですが、マスコミは水族館が野生動物を捕獲・収容したがることに対し、もっと批判的な視点を養ってほしいです。

▼広大な海を奪い、小手先の芸で客を楽しませ、野生動物と人との関係性について間違った教育をする鳥羽水族館

「メイ」と「キラ」

東海テレビへ送った意見(2021年)

動物保護団体のPEACEと申します。
「ピーク時122頭→国内わずか4頭に…水族館のラッコが“絶滅の危機” 輸入も繁殖もできず模索続く」との報道を拝見しました。

たいへん驚いたのですが、貴社の報道姿勢は「水族館にラッコがいるべきだ」という価値観に基づいているように見受けられます。水族館にラッコがいる必要はなく、なぜこのような方向性でこの話題を取り上げるのか理解に苦しみます。

飼育してもふえない、野生動物を無為に消費するだけだとわかったのに、どうして野生からラッコを奪いたいのか。まるで消耗品の扱いのようです。水族館のために、弱ったり攻撃されて怪我をしたりしたラッコが出ることを願っている人がいるようで、不快です。

また、そもそも捕獲されることは、野生動物にとって恐怖であり、ストレスであることを忘れていらっしゃるようです。
ラッコは海に生きる動物で、水族館の小さな水槽に入れられていてよい動物ではありません。毎日体重の4分の1にあたるほどの、多くの海の生物を捕食しますが、飼育下では深く潜ったり探し回ったりといった活動はできず、人間に与えられた餌を食べるだけの惨めな状態です。

そのような不自然な光景を「かわいい」と見る人が多いことは、水族館が教育をできていないことの証です。水族館は客寄せのためにラッコを入れたいだけで、動物は本来どうあるべきかを教えるつもりがないことは明白です。

ラッコを野生から収奪したいと願う人たちがいることはラッコにとって不幸でしかありません。水族館からいなくなることは絶滅ではなく、本来の姿です。

そもそも人間が毛皮のために殺戮したことがラッコが数を減らした原因です。現在、北米では国や多くの保護団体がラッコの保護のために尽力していますし北海道でもNGOがラッコにストレスがかからないよう活動しています。何もしていない日本の水族館が営利目的で虎視眈々と捕獲を狙うのはあまりに浅ましく、図々しいです。

捕獲・監禁・見世物状態を「保護」という言葉にすり替え、野生から捕ってくることに問題がないかのような誤った認識を一般の人に持たせる報道は止めてください。当たり前のことですが、万が一保護されるようなことが起きた場合、回復後は野生復帰が第一選択肢です。

東海テレビは、ラッコを水族館に入れることを支持しないでください。

▼鳥羽水族館 こんな見世物芸をしていてアメリカからラッコを入手しようなどというのは無理な話では

▼須磨海浜水族園 この恐ろしく狭い施設は取り壊され、ラッコたちは鴨川シーワールドに移されたのち死亡した

「明日花」と「ラッキー」

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