エキゾチックアニマル展示即売会へ行ってきました 東京レプタイルズワールド2013
移動販売の禁止へ向けて
5月18、19日にエキゾチックアニマル展示即売会『東京レプタイルズワールド2013』が池袋で開催され、19日にPEACEメンバーで調査に行ってきました。
出展企業数は90を超え、来場者数は約17,500人。会場内は出店企業のブースと大勢の人で混雑し、会場入口では入場券を買うための行列ができていました。客層は若い人が多く、小さな子供を連れた家族も大勢いました。所狭しとヘビ、トカゲ、カメ、カエル、サル、モモンガ、フェレット、ミーアキャット、プレーリードッグ、猛禽、コウモリ、ヤマアラシなど多種多様な生き物が展示販売されていました。値段は数千円や数万円のものから数十万円、なかには数百万円を超えるものまで。大きさも数cmのものから100cmを超えるものまで様々。どこのブースも人が群がっていました。CITES(ワシントン条約)付属書IIはもちろん、付属書Iの動物も売られていました。
CITES付属書Iの動物について:由来表示と登録票の情報の食い違い例
ヘビ、トカゲ、カメ、カエルといった爬虫類や両生類は、プリンパック(注)と呼ばれるお惣菜パックやプラスチックケースに入れられ、山積みにされていました。皆、外に出ようともがいていましたが(動画1)、身動きが取れないほど狭い容器に入れられているものもいました。パックを手に取り品定めしている様子は、まるで夕飯の買い物をしているかのようで、とても生き物を販売している光景には見えませんでした。
サルやモモンガなどの哺乳類も数多く展示販売されていました。狭いオリに入れられ、ハゲていたり、毛づやが悪かったり、檻の中をぐるぐる回るなど異常行動をしている動物も多くいました(動画2)。動物園生まれの動物も売られています。
猛禽類は足を鎖で繋がれ、ヒナも展示販売されていました。オリに指を入れたり、動物に触る人も多く、大勢の人がひしめく騒がしい環境の中でジロジロ見られたり構われたりすることのストレスはどれほど大きいかは容易に想像できます。
会場には有料で猛禽、爬虫類、ヒヨコ、ウサギなどを触らせる『ふれあいコーナー』もありました(動画2)。ふれあいコーナーはより一層混雑し、何の生き物がいるのか見えないほどでした。嫌がる猛禽を大勢の人が代わる代わる撫で、ヒヨコをわしづかみにしている子供もいました。
私は3年連続で本展示即売会に来場していますが、年々、哺乳類や猛禽類の種類と数が増えていると感じました。昨年と一昨年は、動物愛護法で定められている動物取扱業登録証の掲示がほとんどありませんでしたが、今年は掲示がされていました。
しかし、動物取扱業者が遵守すべき細目で定められている販売個体の性成熟時の標準体重・標準体長等体の大きさに関わる情報や、生年月日、生産地等の情報の表示は3年ともほとんどされていません。爬虫類などの中には、何十年も生きたり、成長すると1mを超える大きさになるものもいます。そのような情報を知らずに購入し、飼いきれなくなり遺棄する人も大勢いることでしょう。購入時の署名をしている人たちも見かけましたが、動物愛護法の施行規則で定められている販売時の説明義務が十分に果たされているとは思えませんでした。
そのほか、細目を順守していないと思われる項目をこちらにまとめました。
本展示即売会で販売されている生き物のほとんどは、もともと日本には生息していない生き物で、輸入されたり国内で繁殖されています。本来の生息環境とはかけ離れた日本で狭いオリやケースに押し込まれて一生を送る。そんな生き物たちは幸せだと思いますか? 本来の生息地で自由に生き生きと暮らすほうが幸せだと思いませんか? 可愛いから、欲しいからという理由で野生生物の自由を奪い閉じ込めることは、あまりにも強欲で身勝手ではないでしょうか。彼らはオモチャではありません。生き物にとってどうあることが幸せなのかを想像する力や、生命ある生き物を尊重する気持ちを持っていただきたいと思います。
●ペットショップで働いていた経験から言えることこのような展示即売会を行うことは、多くの人に衝動買いをさせるきっかけとなります。皮肉なことに、一般的には、動物好きな人ほど実物を目の前にするとかわいくてほしくなってしまうという現実があります。
子犬や子猫もそうですが、とりわけなかなか見られないかわいいモモンガやきれいなフクロウ、珍しい色をしたトカゲなどを見るとその姿に魅了され、買う気はかなった人も安易に買ってしまうと思います。現に会場でも「この子の色きれいだよね!」「その値段なら余裕で買えるじゃん」などという会話が飛び交っていました。
そのようにして、きちんとした飼育知識もない人に衝動買いされた動物は、やがてもてあまされ世話もされず死んでしまったり捨てられることも少なくなく、捨てられて生き延びた場合でも環境や生態系の破壊という問題がおこります。
また、このように多種多様なエキゾチックアニマルをきちんと診療できる獣医さんもほとんどいません。それらのことからも、やはり野生動物をこのように安易に売買することは行うべきではありません。
小さいお子さんに小猿を見せて「かわいいでしょ。飼ってもらいな。」と無責任に言っている販売店もありました。
とにかく本当に買って帰るんだ、買えてしまうんだということが衝撃でした。
日本にいるはずではない哺乳類、生き物が日本で売られているのは、もちろん動物にとってストレスですし傲慢だと思います。マニアの方々は好きな生き物のありのままの姿を見たいのではなく、自分の理想のままにしたいだけじゃないかとすごく感じました。
販売員たちの話を聞いてたら「(ヘラクレスオオカブトの)角がなかったらゴミ」とか「全然売れない」と言っていて複雑な気持ちになりました。昨日は凄いものを見ることができました。こういう市場があるのだということを知ることができて勉強になりました。
ありがとうございました!
●「動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目」に反すると思われる点
ケージ等は、個々の動物が自然な姿勢で立ち上がる、横たわる、羽ばたく等の日常的な動作を容易に行うための十分な広さ及び空間を有するものとすること。(第三条一項) | ⇒ 明らかに守られていない。 |
ケージ等に、給餌及び給水のための器具を備えること。ただし、一時的に飼養又は保管をする等の特別な事情がある場合にあっては、この限りでない。(第四条一項) | ⇒ (但し書きが微妙だが)備えられていない。 |
ケージ等に、動物の生態及び習性並びに飼養期間に応じて、遊具、止まり木、砂場及び水浴び、休息等ができる設備を備えること。(第四条二項) | ⇒ そのようなディスプレイがされていたのは、ごく一部のみ。 |
ケージ等に入れる動物の種類及び数は、ケージ等の構造及び規模に見合ったものとすること。(第五条一項ハ) | ⇒ 適したケージとは言えない。明らかにたくさん入れられている動物がいた。 |
動物の生理、生態、習性等に適した温度、明るさ、換気、湿度等が確保され、及び騒音が防止されるよう、飼養又は保管をする環境(中略)の管理を行うこと。(第五条一項ト) | ⇒ 会場内はマイクで話す声などで大変うるさかった。適温の異なる動物が集められている。 |
顧客等が動物に接触する場合には、動物に過度なストレスがかかり、顧客等が危害を受け、又は動物若しくは顧客等が人と動物の共通感染症にかかることのないよう、顧客等に対して動物への接触方法について指導するとともに、動物に適度な休息を与えること。(第五条五項ロ) | ⇒ ふれあいコーナーが問題なのは当然だが、販売ブースでも積極的に触らせており、守られているとは言いがたい。 |
動物ごとに、次に掲げる情報を顧客から見やすい位置に文書(電磁的な記録を含む。)により表示すること。(第六条二項 詳細は略) | ⇒ ほとんどが記載が欠けている。種名も何も書かれていないケースも散見された。 |
スローロリス、キンクロライオンタマリン、ビルマホシガメ(ただし規制適用日は今年6月12日から)などが売られていました。その中で、1匹のスローロリスについて、掲示されている登録票(種の保存法上の登録があることを証明する「国際稀少野生動植物種登録票」)には規制適用日前に取得された個体だと書かれているにもかかわらず、値札の由来表示には「輸入日(生年月日) 2008年 タイ産」と書かれている個体がありました。スローロリスの規制適用日は、平成19年9月13日ですので、西暦で言えば2007年です。値札が正しければ、規制適用日以降に入ってきた個体ということになり、登録票の情報と食い違っていることになりますが、店側は「値札をうっかり間違えて書いた」と説明したとのこと。やはり登録票については、個体の写真を掲載する、毛や羽などDNA鑑定できるものを添付させる、返納義務を強化させる、消費者にも合法なものか調べられる仕組みをつくるなど、制度の根本的改善が必要だと改めて強く感じました。また、そもそも愛玩用の売買・繁殖ができること自体を疑問に思います。
●動画1 出たがっているトカゲ・ヘビ・カメ
●動画2 常同行動・ふれあいなど
●写真
注:爬虫類マニアの間ではプリンパックと呼ばれ、展示に適したものだと言われているようですが、爬虫類業者が扱っている商品の2、3のメーカーに確認したところ、やはり食品用に販売している(もしくは食品にも使える)として売っているもので、有害ではないが、生きものを入れることを想定して販売しているものではないとのことでした。
2017年のレポートを掲載していましたが、こちらのページに移しました。