遺伝子組み換えメダカ 

東京工業大学から持ち出された遺伝子組み換えメダカが流通、5名逮捕4名書類送検されたが…

遺伝子組み換え生物の違法な第一種使用で初の逮捕者

今年3月、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(通称カルタヘナ法)違反で、初めて逮捕者が出ました。

罪状は、遺伝子組み換えメダカを環境大臣の許可を受けずに第一種使用したこと。

第一種使用とは、遺伝子組換え生物等を環境中への拡散を防止しないで行う使用のことです。実験室などの拡散防止措置のとられた閉鎖された空間ではなく、野外や一般の建築物など、開放された場所で飼育したり使用したりすることを指します。

今回の事件では、ミナミメダカにイソギンチャクモドキ珊瑚由来の遺伝子など複数の遺伝子を組み込んだ生物が、一般の観賞魚と同じようなルートで売買され、運搬され、繁殖・飼育もされていました。この生物は、紫外線に当てると赤く光る性質を付与されています。

組み込まれていた遺伝子は、loxP 遺伝子(バクテリオファージ P1 由来)、蛍光タンパク質 DsRed 遺伝子(イソギンチャクモドキ珊瑚由来)、蛍光タンパク質 GFP 遺伝子(オワンクラゲ由来)、転写調節配列(SV40 ウイルス由来)の4つ

これまで、主に大学等でカルタヘナ法違反は多数ありましたし、違法な遺伝子組み換え観賞魚販売もあったのですが、ようやく司法が動きました。

メダカ販売店経営者など5名が逮捕され、4名が書類送検されました。逮捕者を含め、およそ50名の飼育者に拡散していたというのですから、驚きです。

さらに驚愕したのは、メダカ20匹ほどを用水路に逃がした逮捕者もいたことです。あり得ないことです。そもそも、遺伝子組み換えでないメダカであっても、野外に放すことはご法度です。にもかかわらず、明らかにふつうの性質ではない魚を野外に放して平気とは、いったいどういう感覚なのでしょうか。

放流の意図まではわかりませんが、通常は野外で生き残ってほしいから行う行為でしょう。遺伝子組み換えされた魚が野外で拡散されてもいいと考えるような人間が生物の飼育を行っていることに戦慄します。

警視庁では、DNA鑑定を駆使して今回の逮捕に至ったと報じられており(「「カルタヘナ法」違反で初の逮捕 光るメダカ販売の疑い」2023年3月9日 FNNプライムオンライン)、執念を持って捜査に当たってくれたと感じますが、それだけ重大な犯罪だということになります。

しかしながら、正直なところ、捜査の網から漏れ、いまもこっそり飼っている人間がかなりいるのではないかという疑いは持ってしまいます。

平野部の細流、池沼、水田などに生息する、いわゆる「メダカ」。2012年に兵庫県以北の日本海側などに分布するキタノメダカと分けられた。生息域は、青森県東部から紀伊半島にかけての太平洋側、中国・四国地方、九州地方、沖縄本島と広い。環境汚染、生息地破壊などから数を減らし、環境省レッドデータブックでは絶滅危惧II類(VU)。

環境省公表

環境省

環境省のホームページです。環境省の政策、報道発表、審議会、所管法令、環境白書、各種手続などの情報を掲載しています。…

流出元は東京工業大学! 実験動物由来だった

こうした飼育マニアの感性では、この生物が紫外線に当てると赤く光ることが美しいらしいのですが、驚いたのは、この事件、流出元は東京工業大学でした。

2009年に大学院生が遺伝子を組み替えたメダカの卵およそ30個を3回に分けて研究室から持ち出したうえ、同級生の母親に「人にあげてはダメ」と言い、渡していたとのこと。(「『人にあげてはダメ』“光るメダカ”の卵30個を同級生母に渡す 東工大元大学院生が違法性認識か」2023年3月9日 TBS NEWS DIG Powered by JNN)

この大学院生の在学期間は2009年4月から2010年3月までと文部科学省から公表されていますから、遺伝子組み換えメダカを流出させたあとも大学にしばらくは残っていたことになります。そのことにも驚きます。

実験動物は適正に管理されていると動物実験者側は常に言いますが、どこが適正に管理できているのでしょうか。発覚したという意味では前代未聞の事件ですが、同様のことが起きていないとは限りません。

この遺伝子組み換えメダカを持ち出した元大学院生(練馬区、会社員、35歳)は、書類送検されましたが、時効のため処罰は望めません。

流出させた東京工業大学は、文部科学省から厳重注意を受けただけで、実質、何のペナルティもありません。研究費もこれまで通りもらえますし、痛くも痒くもありません。「教育する」と言っておけば済むのです。

文部科学省公表

東京工業大学公表

東京工業大学

本日、文部科学省から標記の件に関して文書による厳重注意を受けましたので、お知らせします。当該遺伝子組換えメダカが飼育され…

そして、大学の報告書を見ると、あいかわらず有毒性がないとか病原性がないとか、そんなことばかり書いています。(他の大学等も、カルタヘナ法違反をすると、だいたい似たようなことを書きます)

遺伝子組み換え動物の流出の最大の問題点は、生物多様性の破壊に繋がる可能性があることです。法律の意図するところを大学は理解しているのでしょうか。カルタヘナ法のそもそもの趣旨がわかっていないし、論点をすり替え、自らの罪が軽いかのように印象付けようとしています。

また、大学の報告書により、持ち出された遺伝子組み換えメダカは、自然科学研究機構基礎生物学研究所から第三者に譲渡さないことを条件に譲受されたものであることがわかりますが(大学が遺伝子組み換えしたかのような報道もありましたが、違います)、この研究所は、この事件への対応を公表していません。

本件について、基礎生物学研究所に対し、今後東京工業大学に対し生物等の提供を行わない等の対応をとらないのか問い合わせましたが、回答はありません。譲渡しの条件に違反したのですから、何らかのペナルティがあってしかるべきです。

そもそも大学には、飼育マニアや、それに近い関心を持って入ってくる学生がたくさんいます。入試の際にコンプライアンス意識や倫理観でふるい落とすことはされていないわけですから、見た目の表現型に変化を与えるような遺伝子組み換え生物を扱うことに関しては特に、警戒をするべきです。そうした生物を生み出さないことが最も重要ですが、安易に大学に譲渡しをしないことも必要な対策だと考えざるを得ません。

遺伝子組み換え生物の専門家は、警鐘を鳴らします。

東京大学 伊藤元己名誉教授
「ひどい場合には(日本のメダカを)絶滅させてしまうような可能性まである。魚や水質に大きな影響を与えて、自然・生態系を壊してしまう可能性がある」

「“カルタヘナ法”違反の疑い、遺伝子を組み換え作られた“光るメダカ”
無許可で飼育したなどの疑いで業者の男ら9人摘発」2023年3月9日 news23 より

アクアリウム展示即売会での販売で発覚

この事件はそもそも、2022年3月に台東区で開催されたアクアリウムの展示即売会で遺伝子組み換えの疑いがあるメダカが販売されていたとの情報提供があり、警視庁の生活環境課が捜査していたことから発覚したとのこと。

この展示会ですが、警視庁から環境省への情報提供書で被疑者Aとされる者が2022年3月13日に市川市内から台東区内に当該メダカを輸送しており、該当しそうなイベントは第28回アクアリウムバスしかありません。(出店者リスト

報道によれば、このピンクに光るメダカを“ロイヤルピングー”と名付け、2匹10万円で販売していたとか。(「「赤く光るメダカ」違法育成か 高値で売買…愛好家5人逮捕」2023年3月10日 FNNプライムオンライン )

「流通させちゃいけないものだから」「絶対に人にあげたりするな」などと伝え、違法性の認識はあったとみられるとも報道されており(「『絶対に人にあげるな』“光るメダカ”販売時に口止め 空前の“メダカブーム”の影で」2023年3月9日 テレビ朝日)、悪質です。

この事件では、販売ルートを正確にたどるために、動物愛護法の第一種動物取扱業の規制を観賞魚にまで拡大する必要を感じました。(もちろん犯罪性がわかっていれば正確に記録する可能性は低いかもしれないが、逆にその省令違反により業の取消しもしくは営業停止処分につなげることもできる)

また、用水路に捨てた者がいることを考えれば、そもそも遺棄罪の対象範囲を魚類にまで拡大しておく必要があるのではないでしょうか。日ごろからの生命尊重への意識の低さから、用水路に捨てればいいという考えに至ったことは想像に難くありません。

この事件の一番の被害者は、約1400匹押収された遺伝子組み換えされたメダカたち自身です。

そもそも自然を愛するなら、不自然に人工的に改変した生物を美しいと愛でることはないはずです。メダカブームが早急に沈静化することを願ってやみません。

東京地方検察庁に意見を

逮捕された5名は氏名公表となったため調べることができたのですが、起訴されていないことがわかりました。(2023年6月12日現在)

東京地方検察庁に、「自らの所有欲や金銭欲のために生態系破壊につながりかねない重大な罪を犯したことについて厳格な処分を求める。起訴されるべきだ」とぜひご意見をお送りください。

東京地方検察庁

ご意見・ご要望

〒100-8903
千代田区霞が関1丁目1番1号
東京地方検察庁 担当検事 宛

メールフォーム:https://www.kensatsu.go.jp/kensatsumail/feedback.php?id=006

 ※電話は広報につながるだけですので、メールか手紙でお願いいたします。

参考情報;逮捕者一覧

A~Eは警視庁からの情報提供書の表記。フルネーム記載は避けましたが、意見を送るときは下記を参考にしてください。

警視庁公表名前
()内は年齢
住所職業備考
A青木容疑者(60)千葉県市川市会社員展示即売会に遺伝子組み換えメダカを出品
B増田容疑者(67)埼玉県春日部市倉常自営業メダカ販売店経営者
C桜井容疑者(72)茨城県坂東市無職
D古川容疑者(68)千葉県山武郡九十九里町自営業遺伝子組み換えメダカ20匹を九十九里市の用水路に遺棄
E内山容疑者(68)千葉県大網白里市無職過去に同姓同名で第一種動物取扱業登録あり(現在はない)

 

 

アクションをお願いします

署名にご協力ください日本が最大の消費国 ジャコウネココーヒー「コピ・ルアク」の取り扱い中止を求めるアクション[sitecard subtitle=関連記事 url=https://animals-peace.net/action[…]

活動分野別コンテンツ

活動報告ブログ

遺伝子組み換えメダカ 
最新情報をチェックしよう!
NO IMAGE

動物の搾取のない世界を目指して

PEACEの活動は、皆さまからのご寄付・年会費に支えられています。
安定した活動を継続するために、活動の趣旨にご賛同くださる皆さまからのご支援をお待ちしております。

CTR IMG