養豚場内部映像に関連し、日本ハムに公開質問書~肝心な部分については回答なし

一昨年、グループ会社養豚場の衝撃的な内部映像がPETAから公表された日本ハムですが、今年4月1日、社長が交代しました。新社長には、前代表取締役副社長であった井川伸久氏が就任しました。

そして、なぜか同じ日、養豚場を経営するグループ会社も社名変更がありました。

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日本ハムはアニマルウェルフェアポリシーアニマルウェルフェアガイドラインを公表しましたが、その表現は抽象的です。動画で確認できる数々の行為が禁止されたのかどうか明確ではありません。

例えば、間引く子豚の殺し方も、結局「適切な方法で」と書かれているだけで、どのような方法をとるのか、明示されていません。撲殺が除外されているかどうかすら、明確ではありません。

また、国内全農場・処理場への環境品質カメラの設置を2023年度までとしていますが、設置したカメラをどう運用するのかは明らかではありません。外部からの監視や情報公開がされないのであれば隠されているのと同じです。

そこで、社長交代のタイミングで、翻訳家の井上太一さんと連名で日本ハムに公開質問書を出しました。

回答は文書にていただくことができましたが、具体的な回答は避けられており、肝心な点については回答はいただけませんでした。従業員の管理要領と作業手順書はつくられているようではあります(内容不明)。

詳細を知りたく回答後にサステナビリティ部に電話もしましたが、回答以上のことは答えられない、さらに質問があるのであれば文書で質問せよとのことで、既に質問したことに対して口頭で説明するということも一切拒否する態度でした。

企業メッセージである「たんぱく質を、もっと自由に」に植物性たんぱくへの大転換が含まれていることを願うばかりです。(回答にも答えていませんが、逆に動物性たんぱくによる収益を今後も続けるとも書いていないのです)

日本ハムへの質問書

2023年4月6日

日本ハム株式会社
代表取締役社長   井川 伸久 様

PEACE 命の搾取ではなく尊厳を 代表 東さちこ
翻訳家 井上太一

拝啓 時下益々ご清栄のことと存じ上げます。この度は社長ご就任、おめでとうございます。

早速ではございますが、私たちは人間と動物の健全な関係構築を求め、アニマルライツ活動に取り組む者です。食用・娯楽用・研究用などの動物利用に伴う諸問題を踏まえ、とりわけ消費者の認識を高めるための社会啓蒙を進めてまいりました。

2021年、海外のアニマルライツ団体であるPETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)アジア支部により、貴社傘下の農場における虐待的な動物の扱いが暴露されたことは記憶に新しいニュースです。

その後、貴社が迅速な対応としてアニマルウェルフェアの推進目標を発表したことにつきましては一定の前進と評価する声もありますが、動物の擁護に従事する者としての観点から、なお確認致したい点がありましたため、このたび、公開質問状を送らせていただきました。

つきましては、活動家だけでなく多数の消費者が動物の幸せを願い、企業に思いやりある経営を求めていることを踏まえ、以下の質問にご回答いただけましたら幸甚です。

1.貴社のアニマルウェルフェアガイドラインにあります「国内全農場・処理場への環境品質カメラの設置」は、アニマルウェルフェアに則る動物の扱いの遵守状況を監視するためのものと思われますが、外部の第三者によらない内部監視は機能しないのが一般的であり、どのように実効性を持たせるのかを知りたいと考えています。以下の点について教えてください。

(ア)環境品質カメラの監視は誰が行いますか。
(イ)動物福祉の観点から、従業員が何を行ってはいけないのか、または何をするべきなのか、指導の基準となるマニュアル等は作成されていますか。
(ウ)オンブズマン制度の導入など、適切な動物の扱いを外部から確認するための仕組みを導入する予定はあるでしょうか。
(エ)監視による指導等の状況について年次報告等により情報を公開するお考えはありますか。

2.妊娠ストールは動物に多大な苦痛を与える拘束装置であるとして、長年にわたりアニマルライツやアニマルウェルフェアの推進者による批判を受けてきました。貴社に対する直接的な抗議も続けられてきたことはご存知の通りです。PETAの告発を受け、すぐに撤廃を決定できるほどの改善を、なぜ告発がなされるまで行わなかったのでしょうか。

3.PETAの告発では、妊娠ストールの使用だけでなく、断尾や去勢、動物移送時の乱暴な扱い、残酷な子豚の殺し方が問題とされました。これらについての現在の方針及び改善状況、もしくは今後の改善計画について、それぞれ教えてください。

4.現在の生産量を想定すると、ただ現場の労働者に丁寧な動物の扱いを指導するだけでは本質的な解決にならないと思われます。限られた時間内に限られた人数で生産目標の達成を求められる労働者は、動物に配慮するだけの物理的余裕を持てないからです。この課題に企業としてどう対応していくのか、お考えを聞かせていただければ幸いです。

5.動物性食品の生産に伴う倫理問題はいまや広く知られ、国内でもビーガン人口が年々増加しています。ビーガンが求めるのは動物利用の改善ではなく全廃です。今後、貴社がビーガン商品の開発にとどまらず、ビーガン商品生産への完全なシフト、すなわち動物性食品部門からの脱却をめざす意向はあるでしょうか。ない場合、なぜ良質なビーガン商品をつくれる技術と予算がありながら、数々の問題をはらむ動物性食品の生産を続けたいのか、その理由も伺わせていただければありがたく存じます。

ご多忙のところ恐縮ですが、2023年4月末日までに、文書、メール、もしくは貴社ウェブサイトにてご回答いただきますようお願い申し上げます。ウェブサイトに掲載される場合は掲載場所をお知らせいただければと存じます。

なお、回答がなかった場合はその旨を公開させていただきますので、予めご了承ください。

敬具

日本ハム回答

2023年4月28日

PEACE命の搾取ではなく尊厳を
代表 東さちこ様

日本ハム株式会社
サステナビリティ部部長
滝敬一

ご質問状にてお問合せいただきましたアニマルウェルフェアについて、当社は「アニマルウェルフェアポリシー」および「アニマルウェルフェアガイドライン」を定め、取り組みを推進しています。

主な取り組みとしては、動物の取り扱い方法に関する管理要領を作成し、それに基づいて農場ごとの作業手順書を改定し、その手順に従い作業を実施しています。
また、アニマルウェルフェアに関する教育を行い従業員の意識向上を図っています。
加えて、2030年目標を設定し、環境品質カメラの設置、係留所への飲水設備の設置、妊娠ストールの廃止を順次実施しています。
今後も産官学連携会議などに参加することで情報収集を図ってまいります。

当社グループは企業理念である「食べる喜び」をお届けし続けるために、2030年のありたい姿として「Vision2030」を策定し、“たんぱく質を、もっと自由に。”を企業メッセージとして、変革のための挑戦を続けております。お客さまのさまざまなご要望にお応えし、生きる力となるたんぱく質を安定的にお届けすることで、食をもっと自由に楽しめる多様な食生活を創出し、「食べる喜び」をかたちにして提供し続けてまいります。

敬具

日本ハム意見先

お客様相談窓口
https://www.nipponham.co.jp/customer/

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