キユーピーに公開質問状 ミヤポーとの取引は過去にしていたが終了した

2021年、PETAアジアが、キユーピー株式会社に卵を出荷している株式会社ミヤポーの養鶏場での悲惨な鶏たちの扱いについて実態を暴露しました。

PETAの記事の日本語版は、翻訳家の井上太一さんのブログで読むことができます。鶏たちは羽を広げることすらできない小さな檻に閉じ込められ、病気や負傷を抱えるだけではなく、暴力的な扱いも受けています。作業員が鶏をつかみ、翼を強引にねじって鶏舎の2階から落とす、不要な鶏たちはビニール袋に詰め込まれ窒息するに任されているなど、作業効率の前に鶏たちの命はモノとなってしまっている実態が暴かれています。

ペンと非暴力

食品大手キューピーの動物虐待が、動物擁護団体PETAのアジア支部によって公開されました。日本ハムの記事に続き、報告の全文…

キユーピー株主総会での取引していないという回答は本当なのか?

この養鶏場の様子は、海外の類似の動画よりもずっと悲惨だと感じました。そのことをキユーピーの株主総会の質問時に、経営陣にぶつけたことがあります。その際、この養鶏場とは取引していないとの回答があったのですが、実際に取引があった証拠は確認できていたため、今年6月に井上太一さんと連名で質問書を送りました。

そうしたところ回答があり、2020年1月末をもってミヤポーからの調達を終了していたことがわかりました。これはPETAの公表前なので、劣悪な状況が関係したのかどうかはわかりませんが、動画撮影当時に、実際に取引があったことは確認できました。

また、「調達指針に準じない飼養がされている実態を把握した場合は、取引先と協議の上、改善を要望させていただきます」との回答を得たことは心強く思いましたが、参照とされている指針ではバタリー養鶏が許されてしまっており、根本的な問題の解決にはなっていないことを改めて感じました。

なお、当該養鶏場の状況は、井上さんの新刊『動物たちの収容所群島』(あけび書房)に、より克明に取り上げられています。バタリーケージを使用する方式の養鶏では、多かれ少なかれ状況は同じです。

写真

『動物たちの収容所群島』(井上太一著、あけび書房)の本文の写真が白黒なので、許可を得てこちらでカラー版で公開しました。詳しい説明は、ぜひ本を手に取ってお読みください。第3章は、卵を生産する採卵養鶏場で働いた方の体験談の章です。[si[…]

キユーピーのプラントベース商品のラインナップ「GREEN KEWPIE」に大きく期待を寄せるとともに、私たちも鶏卵の手軽さに頼らない食事を取り入れ、広めていきましょう。

質問書の内容とキユーピーからの回答の全文は下記の通りです。

キユーピーへの公開質問

 

2023年6月15日

キユーピー株式会社
取締役会長           中島周様
代表取締役 社長執行役員  髙宮満様

PEACE 命の搾取ではなく尊厳を 代表 東さちこ
翻訳家 井上太一

拝啓 時下益々ご清栄のことと存じ上げます。

私たちは人間と動物の健全な関係構築を求め、アニマルライツ活動に取り組む者です。食用・娯楽用・研究用などの動物利用に伴う諸問題を踏まえ、主として消費者の認識を高めるための社会啓蒙を進めてまいりました。

2021年、海外のアニマルライツ団体であるPETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)アジア支部により、貴社製品に鶏卵を供給するとされる農場(ミヤポー)での虐待的な動物の扱いが暴露されたことは記憶に新しいニュースです。この件につきましては昨年2月の株主総会でもPEACE代表・東のほうから個人的に質問させていただきましたが、口頭でお尋ねできなかった点も含め、いまいちど貴社の畜産事業に関し確認いたしたい点がありましたため、このたび、公開質問状を送らせていただきました。

つきましては、活動家だけでなく多数の消費者が動物の幸せを願い、思いやりある経営を企業に求めていることを踏まえ、以下の質問にご回答いただけましたら幸甚です。

1.昨年2月の株主総会によりますと、貴社はミヤポーとの取引を行なっていないとのことでしたが、PETAの告発を受けた農場の取引記録には貴社の名称があり、従業員の証言によってもその記録が裏付けられています。ミヤポーとの取引がないという株主総会でのご回答は、かつて取引を行なっていたが現在は行なっていないという意味でしょうか。それとも、ミヤポーとの取引は過去にも一切なかった(つまりミヤポーの取引記録や従業員の認識には相違がある)ということでしょうか。

2.上記株主総会では、アニマルウェルフェアの取り組みに関し、「持続可能な鶏卵の生産と調達の上で重要な課題と認識しており」、鶏卵については畜産技術協会の定める「アニマルウェルフェアの考え方に対応した採卵鶏の飼養管理指針」に則して生産されたものを調達している、とのご回答をいただきました。しかしながら、農林水産省の飼養管理指針は、アニマルウェルフェアの観点から特に問題とされるビークトリミングや誘導換羽の実施、バタリーケージの使用なども想定しており、現状追認的な内容となっている感が否めません。そこで貴社のアニマルウェルフェアについて、具体的にどのような取り組みを行なっているのか(取引先の農場における動物の取扱いや飼育環境に関する工夫)を教えていただければ幸いです。

3.PETAの告発では、淘汰対象となった鶏の乱暴な扱い等が農場において常態化していることが発覚しました。このように、アニマルウェルフェアの原則とされる「適切な動物の扱い」は、監視の目がないかぎり、労力を節約したいなどの都合によって軽視されてしまうのが一般的です。アニマルウェルフェアの遵守を確かなものとするための取り組み(監視カメラの設置、オンブズマン制度の導入など)は行なっているでしょうか。あるいはこれから行なう予定があるでしょうか。

4.上記株主総会では、「日本固有の環境」により、ケージフリー卵の安定的な調達は難しく、現地点ではケージフリー宣言をできないとのご回答をいただきました。現在の商品生産量を想定した場合、全ての卵製品をケージフリー卵で製造するのは困難であるということかと思われます。一方、貴社は卵不使用マヨネーズやHOBOTAMA(ほぼたま)などの良質な卵代替品を開発しています。エシカルな商品づくりへ向かう一つの段階として、ケージフリー卵でまかなえない分の卵製品を可及的すみやかに廃し、その生産に使われていたリソースを卵不使用の代替品生産に向ける構想は考えられるでしょうか。

5.上の質問に関連することとして、畜産物の生産にはアニマルウェルフェアの向上だけでは解決できない問題があります。鶏卵の生産であれば、雄雛の全羽殺処分や、廃鶏・淘汰鶏の殺処分などがそれにあたります。ケージフリー卵や放牧卵であっても、これらの問題は解消されません。その観点からすると、卵不使用の代替品はエシカル面でいかなる卵製品にも勝ると考えられます。また、現在国内ではビーガン人口が増加しており、動物不使用の食品を求める消費者の需要は年々高まっています。こうしたことを考え合わせた時、貴社が漸次的に卵製品をはじめとする動物性食品の生産を縮小し、動物不使用の代替品生産へと舵を切るとしたら、大きな意義があると思われます。中長期的な計画として、そのような方針転換を検討したいという意向はあるでしょうか。ない場合、良質な卵代替品を生産する技術と予算がありながら、あえて複数の倫理的問題をはらむ鶏卵を使い続けたいと思われる理由を伺わせていただければと存じます。

ご多忙のところ恐縮ですが、2023年6月末日までに、文書、メール、もしくは貴社ウェブサイトにてご回答くださいますようお願い申し上げます。ウェブサイトに掲載される場合は掲載場所をお知らせいただければ幸甚です。

なお、回答がなかった場合はその旨を公開させていただきますので、予めご了承ください。

敬具

キユーピー株式会社からの回答

PEACE命の搾取ではなく尊厳を代表 東さちこ様
翻訳家 井上太一様

拝啓 この度頂きました採卵鶏のアニマルウェルフェアに関するご質問に関しまして、以下の通り、当社グループとしての鶏卵調達の考え方、取り組みについて回答申し上げます。

当社グループは、採卵鶏のアニマルウェルフェアを持続可能な鶏卵の生産や調達における重要課題と認識しており、採卵鶏の飼養において、アニマルウェルフェアの基本原則である「5つの自由」に賛同し、その原則に沿った採卵鶏の飼養が重要であると考えます。
アニマルウェルフェアの考え方に対応した採卵鶏の飼養管理指針』の一般原則に記される「最も重視されるべきは、施設の構造や設備の状況ではなく、日々の家畜の観察や記録、家畜の丁寧な取扱い、良質な飼料や水の給与等の適正な飼養管理により、家畜が健康であることであり、そのことを関係者が十分認識して、その推進を図っていく」ことが大切であると考えます。
日本国内で当社グループが使用する鶏卵は、農林水産省が普及に努める『アニマルウェルフェアの考え方に対応した採卵鶏の飼養管理指針』に即して飼養されたものを調達しています。もしも弊社の調達指針に準じない飼養がされている実態を把握した場合は、取引先と協議の上、改善を要望させていただきます。
なお、ご質問にございましたミヤポー様という養鶏場からの鶏卵の調達ですが、過去にはございましたが、2020年1月末をもって調達を終了しております。
当社グループの鶏卵の調達に関する考え方と取り組みを、当社ホームページにも記載していますのでご覧いただければと思います。
(https://www.kewpie.com/sustainability/procurement/promotion/

また、当社ではプラントベースフードなど“ サステナブルな食” に展開するブランド「GREEN KEWPIE」を立ち上げ、第一弾として国内向けにプラントベースのドレッシングを3月に発売しました。「平飼い卵マヨネーズ」をはじめ、ますます多様化する様々なニー
ズに対して食の選択肢を提供しています。

アニマルウェルフェアについては、当社グループとしての考えをもって、着実にその取り組みを進めています。

以上、回答申し上げるとともにご理解頂ければと存じます。

敬具

2023年6月29日
キユーピー株式会社

#キューピー #マヨネーズ #鶏卵 #たまご #玉子 #卵

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