6月22日、バイオインダストリー協会が開催した “未来へのバイオ技術”勉強会SDGsと未来食シリーズ6「代替食材の明日」を視聴しました。
以前は動物実験代替技術について少し取り上げる程度で、動物の犠牲を減らすことにはほとんど関心のなかったバイオ業界が、最近こうした動物性食品代替のフードテックに反応してきているのは、とても興味深い現象です。それだけ気候変動その他環境破壊の状況が厳しくなってきており、大手企業ほど調達に不安があるということなのだと思います。
残念ながら途中からになってしまったのですが、この日はキユーピー株式会社の研究開発本部グループR&D推進部兼カスタマーサクセス室の方のお話を聞くことができました。
タイトル:キユーピー「ほぼたま」のねらいと展望
植物性卵「ほぼたま」について
思ったより市場の反響が大きかった。今後しっかりと育成していきたい。
予想していたより大きな反響をいただいた。通常の商品の10倍以上の件数で様々な声を寄せていただいた。また、かなりメディアでとりあげていただいていた。SNSでの発信を行ってくださった方が多かった。
声としては、2種類の声があった。卵アレルギー患者の方が6割。生まれて初めてオムレツを食べましたといった内容。
もうひとつは、プラントベースフードとして、ベジタリアンの方から、ぜひ一般発売も検討していただけないでしょうか、気候変動を懸念して動物性食品を控えているといった意見が寄せられた。
事業としてもやっていくべきという印象を持った。多様な方々が、これからもふえていく。多様な食の選択肢を提供し、寄り添うパートナーになりたいと思っている。
GREEN KEWPIE(グリーンキユーピー)について
ほぼたまの手応えはあったが、卵だけでは食卓は成り立たない。商品を拡充していく必要があるだろう。子どもたちに対しても新しいお客様としてコミュニケーションしていく必要がある。
「GREEN」にはサステイナブルな食への挑戦という意味。「coming from field」のフィールドは、畑。新しいフィールドを切り開いていくという気持ちも込めた。
プラントベースフードである表示=食のサスティナビリティを掲げている。つまり、毎日取り入れられる食。気候変動や環境の変化があっても持続的に供給できる食。環境に負担をかけず、社会の持続可能を守れる食。
今と未来を考える
まだ卵が十分ありますし、なんでそんなものを食べなきゃいけないんだと言う人もいる。いろんな人がいるなかで、まずはほぼたまを食べてもらいたい。意外とおいしいじゃんとなったら、選ぶ意味を知るような情報提供を考えている。あとは楽しく続ける。メニュー提案や様々な方々と一緒に食事を囲む楽しさを伝えていきたい。
GREEN KEWPIEに特徴が4つある。食材選定などの柔軟性。おいしさ、調理性。食シーンを広くカバーする提案力。グローバルな展開力。
グループとしては海外シフトをしている。地域の食文化を知って融合していく提案力、新たな食の提案力、世界で目にするようにしていきたい。
ほぼたまもGREEN KEWPIEとして再出発する予定。
第3弾は24年春以降。調味料、調理品など新規の商品を準備中。
質疑応答
( )オレンジ文字は感想です。
Q 卵はゼロエミッションですか? 廃棄される部分は、ほぼないのでしょうか?
A 廃棄する部分はないように努力している。
Q アレルギー表示推奨品目に入っている「アーモンド」が入っていますが、アーモンドを材料として使う点をどのようにお考えでしょうか。
A 全てのアレルギーに対応するアレルギー対応食品ではない。今は使っている。今後使っていくかどうかは、要議論。お客様から声はいただく。
Q ほぼたまのアミノ酸価は、卵に匹敵するのでしょうか。
A (栄養面から)卵には匹敵しません。卵が高い。
Q 卵のコクを出すには、調味料を何か工夫されているのですか。
A 味付けみたいなことはあまりしていない。調味料の工夫ではなく、乳化技術を駆使してつくっている。(言えるのは)ここまでで。
Q 市販用は、子供向けと高齢者向けのどちらが多いですか。
A 比べたことはないが、どちらも変わらない比率で受け入れられていると思う。どういう価値を感じてそれを食べているかは理由が違うかもしれない。
Q 今後、大豆などの穀物の生産量は世界で増えるかもしれませんが、その大半は熱帯雨林等の森林を伐採して栽培されるものです。その大豆から得られるプラントベース食品が環境活動になるものでしょうか?
A 原材料についても考えていかなければならないと考えている。原料調達も、伐採されてえられたものであってはならないと思う。
(質問者は、そうした大豆の多くは家畜飼料になっていることを知らないのだろうか、だからこそ動物性食品から植物性への転換が必要なのだが…と思ったが、キユーピーの回答が思ったより良かったので、安堵)
Q 大豆の供給についての将来展望をお聞かせ下さい。国内の大豆生産は少ないからです。7%程度だったと思います。
A 明確なお答えにはならないかと思うが、大豆に拘らずに商品設計をしていく。
Q 卵のリーディングカンパニーとして、貴社の卵生産者の方への思いを教えてください。(せっかく植物性商品の開発の話なのに、養鶏業擁護者が牽制か! 残念)
A これからも普通に頑張っていきたい。(いつまでもバタリーケージを続けないでほしい…)
Q 食育に触れた内容があったが、学校・施設給食への展開はお考えでしょうか? またアレルゲンフリーということですので、病院食などでも活躍しそうですが、この辺りはいかがでしょうか?
A 学校給食に採用いただいている例もある。コストの問題もあって常時使うことにはなっていない。卵を使っていないということもあって、特定の疾患を持つ方々に需要があるようだ。これからですが、考えていきたい。
Q 今後、植物性材料確保の目処はあるのでしょうか。
(気候変動や日本の経済力低下により家畜飼料、ひいては動物性原料の確保が難しくなっていくであろう情勢にあって、意味が分からない質問だが…)
A めどを立てていきたい。まだ小さい規模なので、大々的にやっていないので、植物性原料はまだこれからお力添えいただける方いましたらお願いします。
Q 新たな食品を世の中に浸透させるための最初のハードルである「美味しい食体験」をしてもらうために工夫されていることはあるでしょうか?
A プラントベースフードですので、特別用途食の展開ではなく、ニーズのある方に成分の情報を提供するなどは行っている。
Q 反対派はいますか。
A 反対派? 多分一般の方で? 賛否両論はあります。どういう点で反対かということは、お話は難しい。多様な価値観をお伝えしたいということをいうと反対のことを言う人もいる。さまざまな価値観を共有したいと思っているので反対派とは受け止めていない。
Q アニマルウェルフェアや飼料確保等の問題からも植物性にシフトする必要があると思います。卵の生産を減らすところまでが必要だと思います。これからも頑張ってください。(PEACEから意見を書き込みました)
A 一意見として受け止めさせていただきます。(なぜかここで笑いが。ひどいな…)
Q 機能性成分を与えて行ったりするという展開も面白いのではないかと思いますが、そのあたりはどうでしょうか。
A 私たちもそのように考えております。
Q (ほぼたまは)本物に比べると相違点もあると思うが、第2弾、3弾と改良を加えながらより近づけていくというお考えなのでしょうか。
A 開発の方向性としてそれもあるが、限界もあるかもしれないというのと、お客様のニーズがそこにいかないと考えているところもあり、見極めていきたい。
Q スーパーでは購入できますか?
A 今はできない。現在はアマゾンで購入することができます。
その他
次に話した築野食品工業株式会社の基礎研究部長の話は、ラットやマウスを使った動物実験の話で、驚いてしまいました。こめ油などの購入時には、こうした企業を避けるよう、気を付けたいものです。
主催はバイオインダストリー協会なので、動物実験を行う側の立場であることは間違いないですが、このセミナーの案内には、「環境問題や社会問題に配慮した商品を選んで買う『エシカル消費』、家畜にとってストレスの少ない飼育環境を目指す『アニマルウェルフェア=動物福祉』や、動物性の素材を使わない『アニマルフリー』への要望も背景にあると思われる」と書かれていたので、動物実験による研究発表がなされていたことは疑問です。
最後は、新潟薬科大学応用生命科学部学部長の高久洋暁教授による、酵母によるパーム油代替油脂の発酵生産についてでした。パーム油代替技術には期待するところですが、時間の都合でゆっくり聞けなかったので、動物実験の懸念等について質問することができませんでした。
キユーピーの植物性食品展開は多様性重視で評価できるものでしたが、動物を苦しめたくないというニーズについて、業界はもっと理解をしてほしいものだと思いました。
キユーピーからは、先日質問書に回答もいただいているので、追って公表します。
株主総会って?営利目的で動物を利用・犠牲にするような事業の経営は、多くが株式会社によってなされています。株式会社とは、株を売って資金を集め、その資金をもとに事業をおこなう形態の法人です。その中でも特に、大手の株式会社は、証券取引[…]