日本学術会議にて「産業動物と食の観点からのOne healthシンポジウム」

5月25日、日本学術会議の3分科会が主催した「産業動物と食の観点からのOne healthシンポジウム」に行ってきました。主催は、日本学術会議 獣医学分科会、食の安全分科会、畜産学分科会で、共催は日本獣医学会、宮崎大学農学部中核人材育成事業でした。

プログラム
●GAPの概要紹介 武田泰明(認定NPO法人GAP総合研究所専務理事)
●大学におけるGAP取り組み事例 小林郁雄(宮崎大学農学部准教授)
●動物用抗菌剤の使用量と削減の取り組み 杉浦勝明(東京大学教授)
●アニマルウェルフェア関連 八木淳公(畜産技術協会)
●動物行政 山野淳一(農林水産省消費・安全局動物衛生課)
●畜産物の輸出戦略 大野高志(中央畜産会)

演題から見てもわかるとおり、明らかに動物福祉が関係ありそうだったので聞いてきたのですが、ウェルフェアについては、宮崎大学の放牧牧場の話がピークで、最後の和牛売りまくり戦略でドスーン!と落ちる感じといいますか、全体のギャップが激しいイベントに感じました。

オリンピックを前に、畜産業の持続可能性を考え、特にGAP(農業生産工程管理)などの認証評価制度を中心に話が進みましたが、GAPについては、日本のJGAPやグローバルGAPなどいくつかのGAPが存在し、それぞれに思想があるといった説明であり、畜産についてのJGAPのレベルの低さについては、特に問題としては語られなかった印象です(当たり前か)。

GAP認証食材を使ったレストランが銀座にオープンしたが、全ての食材をGAP認証食材で賄うのは無理で、特に乳製品が手に入らないと断言していたのは印象的でした。であればビーガンメニューで提供すればよいのでは?と思います。

宮崎大学農学部の放牧牧場はグローバルGAPを目指したそうで、実行の過程はとても参考になりましたが、基準書が英語といったハードルを越えられるのは大学ならではでしょうか。

抗生剤利用と耐性菌の問題について話をされた東大の先生は、なぜ抗生剤がこのようにたくさん畜産業で用いられるかというと、収益性を追求する現在の畜産のあり方そのものが家畜のウェルフェアを大きく阻害しているからだと、ズバリ説明されていました。育種のあり方から、限られた土地での過密飼育等まで、全てが動物の福祉をないがしろにしている。しかも、ほかの方法より抗生剤が好まれるのは、利便性、とくにワクチンなどの対策より安いことがあげられるとのことで、研究室若手の研究が近々公表されるとのことでした。

畜産技術協会からのウェルフェアの話は、法体系などの話が中心で、同協会がつくっている「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」についてだけではなく、動物愛護法についても触れていました。動物愛護法の動物虐待罪や所有者の責務などは畜産動物にもかかる問題なので、そのことをまず広めてくれているのはよいことかと思いましたが、動物福祉については「日本は別の形があってもよいのでは」という従来どおりの主張が先に立っており、がっくりです。

特に「5つの自由」のうち、「行動の自由」については日本ではやらなくていいのではないかと受け止められる発言があったことは非常に遺憾です。明らかに動物の苦痛を無視した都合優先であり、日本の先が思いやられる状況は変わりませんでした。

農水省の動物衛生課からの動物行政の話はHACCPについてのもので、特にウェルフェアについては出てきませんでしたが、衛生面での取り組みでも肉の評価が上がった、丁寧に飼うことになったからか?という話は出ていました。

最後の中央畜産会の話がとにかくガックリで、和牛を世界に売る、販売戦略についての話です。アニマルウェルフェアという言葉は一言、単語として出ただけで具体的な説明はなく、「いやいや、輸出戦略となればアニマルウェルフェアでは?」と思い質問したのですが、OIE(国際獣疫事務局)の福祉規約以上のウェルフェアはやる必要がないと考えるという回答でした。つまり、バタリー廃止や拘束飼育廃止といった、一段高いレベル(といいますか、世界的にアニマルウェルフェアと思われているレベル)はやらなくていいというのが畜産業界の見解です。もちろん国内消費についてそのレベルであることはわかっていますが、輸出についても同様というのは驚きました。

質疑応答では、「輸送とと畜について、日本でのアニマルウェルフェアの取り組みで目立ったものがないが、海外でウェルフェアというとき、これらの点が重視されると思う。JGAPとグローバルGAPとで違いがあるのでは?」と質問用紙に書いて出しましたが、と畜はカットされ、輸送のウェルフェアの取り組みは?という形に変えられてしまいました。回答は、今、畜産技術協会で指針をつくっているので、近々公開できると思うというものでした。

この輸送の指針については、既に同協会のサイトで公開されています。そして、と畜についてではありませんが、農場内で安楽死を行う場合の指針については公表がされました。輸送は比較的詳しいですが、農場内の安楽死については結局、具体性に欠ける内容になっています。

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