医療分野の研究開発に国の研究費を提供するAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)が、人を対象とした研究や動物実験に関与する研究者向けに、有力な医系国際誌が掲げる倫理規範を身につけるためのプログラムを作成したとして、「医系国際誌が規範とする研究の信頼性にかかる倫理教育プログラム」を公表しました。
サイトを見ると、これから順次公開部分もある感じですが、このプログラムの中の「領域:3)研究対象の保護へ向けた行動」に「b.実験動物愛護」の単元があり、「動物を用いた研究論文:国際学術誌の投稿規定とARRIVEガイドライン 」というファイルが掲載されています。
ARRIVEガイドライン自体は動物福祉そのものずばりについて求める規定ではなく、論文等で動物を用いた研究結果を公表する際に記載することが望ましい項目について定めたガイドラインですから、「実験動物愛護」という(すごい表現かも?!)を使うのであれば、これを扱うだけでは足りないはずです。
しかし、実際に公開されたファイルを見てみると、海外の主要な生命科学系の学術誌(Nature、Science、Cellなど)の動物実験に関する倫理規定の内容について日本語訳が掲載されているなど、ARRIVEガイドラインにとどまらない実用的な内容になっていると感じました。
「国際学術誌に投稿を考える際は、研究の立案時に、投稿先の雑誌の国のガイドラインに目を通すことをお勧めします」などと書かれているのも、これまでの類似のテキストとは異なる印象です。日本のこれまでの動物実験関係者の論調だと、日本は日本ルールがあるから(低いのはわかってるけど)それをやっておけばいいんだ、高いレベルに合わせるべきでない(日本人には日本の誇りがある)という感じでしたから。しかしこのAMEDのテキストは、さらに、自分の国のガイドラインと違いがあるときは「より厳格なほうを選択するべき」としていました。
ARRIVEガイドラインが作られるきっかけとなった論文の再現性の低さについても、「研究成果が再現できないと(中略)動物の貴重な命を無駄にしたことになります。動物福祉の精神に反するとそしられても反論できません」とまで書かれています。
欧米で「動物の権利」を求める運動の影響力が強いことなどにも触れられており、従来の日本の倫理テキストが「福祉をやっていると言っておけばいいんですよ」程度のニュアンスしかないことに比べれば、国際的な空気が反映されたものになっているのではないでしょうか。(「人間同様の権利」という表現は誤解を招くので避けてほしかったですが)
平易な日本語ですので、研究者以外の方も読んでわかりやすいと思います。