アメリカでは家庭飼育のアゴヒゲトカゲ類によるサルモネラ感染症のアウトブレイク発生中

米国疾病予防管理センター(CDC)は、現在アメリカで起きているサルモネラ感染症のアウトブレイクに、家庭で飼育されているアゴヒゲトカゲ類が関連していると警告しており、報道もされています。

Centers for Disease Control and Prevention

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今年1月以来9州で報告された15症例は、ほとんどが5歳未満の子どもでの発症とのこと。入院は4例で、死亡例はありませんが、まだ報告されていない事例がある可能性があります。なぜなら、患者がアウトブレイクの一部であるかどうかを判断するには通常 3 ~ 4 週間かかるからです。

また、実際の患者数は、報告された数よりもはるかに多い可能性があります。多くの人が治療を受けずに回復し、サルモネラ菌の検査を受けていないと考えられるからです。

ほとんどの人は治療なしで4〜7日後に回復しますが、5 歳未満の子供、65 歳以上の成人、免疫力が弱っている人など、一部の人々は治療や入院を必要とする重篤な症状となる可能性があります。

今回の集団発生は現在進行中ですが、聞き取り調査を受けた12人のうち、7人(58%)が病気になる前にアゴヒゲトカゲと接触したと報告したとのこと。ほとんどの人は、動物や飼育ケースに触れたり、餌を与えたり、膝や頭、肩に乗せたりするなど、アゴヒゲトカゲの世話をしているときに自宅で接触していました。しかし、少なくとも1人の子どもは直接触れておらず、家庭内の爬虫類との間接的な接触によって感染した可能性があります。たとえば、爬虫類が家の中で自由に歩き回った後など。

CDCは、アゴヒゲトカゲは、5 歳未満の子供、65 歳以上の成人、免疫力が弱っている人などのペットとしては推奨されないとしています。

ふれあい

2014年、2021年から2022年にかけても起きていた

アゴヒゲトカゲによるサルモネラ感染のアウトブレイクは2014年にも起きており、こちらの記事で紹介しました。

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先週、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、珍しいタイプのサルモネラ菌感染が全米で発生中であり、原因は飼育下のフトアゴヒゲトカゲとの接触によるものだとするレポートを公表しました。2012年2月21日から2014年4月21日までの[…]

その後、2021年から2022年かけても起きており(この時の調査は2023年3月3日で終了)、20州から合計32人が発症し、2種類のアウトブレイク株が特定されました。

このときは、患者の年齢は1歳未満から75歳までで、中央値は8歳でした。5歳未満の子供は合計15人(47%)、1歳未満の子供は11人でした。情報が入手できた25人のうち10人(40%)が入院し、死亡者は報告されませんでした。

病気になる前の週に接触した動物について聞き取り調査が行われた26人のうち、17人(65%)が発症前にペットのアゴヒゲトカゲと接触したと報告。接触は人々の自宅で最も頻繁に発生し、動物やその飼育設備に触れたり、餌を与えたり、膝や頭、肩に乗せたりしていました。

全ゲノムシーケンス(WGS)により、感染者のサンプルから採取した細菌は遺伝的に密接に関連していることが判明。これは、2種の株の感染拡大において、人々がおそらく同じ種類の動物から感染したことを意味します。

15人がペットショップやオンラインでアゴヒゲトカゲを購入したと報告しており、ショップは複数のブリーダーやサプライヤーからアゴヒゲトカゲを仕入れていましたが、両方の株の発生で共通するブリーダーやサプライヤーもいくつかあったとのこと。

日本では? 爬虫類由来の発症とわかるのは氷山の一角

日本ではサルモネラの集団発生として話題になることがあまりないですが、Xでさっと検索しただけでも、オオトカゲがぺろぺろと動かしていた舌が口に入ってサルモネラを発症、修学旅行を休んだであるとか、夫が飼ってるトカゲが原因でサルモネラ腸炎になった可能性が急上昇といった投稿がすぐ出てくるので、実際には爬虫類からの感染自体はけっこう起きているのではないかと思います。

症例として学会誌に掲載されているケースでは、生後2か月児の入院事例などもあり、本当に辛そうで可哀想です。

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2021年の『日本小児学会雑誌』に、「室内で飼育されているヘビが感染源と考えられた生後2か月児の爬虫類サルモネラ症」という論文が掲載されています。総合母子保健センター愛育病院小児科からの症例報告です。生後2か月の女児が嘔吐、発熱、活[…]

感染源が飼育動物だと判明している事例はこちらのページにリストアップしていますが、実際にはもっと多いと指摘する文献があります。

  • 感染し発症した場合、急性胃腸炎で開業医を受診しても、まず細菌検査は実施されない
  • 通常家族内発生で散発例であり、十分な調査も行われず、開業医の処置だけで済ませられている
  • サルモネラ菌は主に医療機関内の検査室あるいは検査機関で同定されるが、そうしたところで使われている同定キットや自動同定機検査ではサルモネラ属菌と判定することはできても血清型は不明であり、菌の由来が判明する例は極一部

などが理由です。

アメリカでは随分特定できているなと感じますが、それでも、あくまで由来が確定できたものが報告されていると考えるべきでしょう。
米国のデータでは、1 ~ 10 歳児のサルモネラ症の約 17 % がペットのカメからの感染と推測されており、年間にカメ関連サルモネラ症事例は 28 万人に達すると積算されている。そして、1975 年の甲羅 4インチ(約 10cm)未満のカメの米国内販売禁止措置により、1976 年には 10 万件の小児サルモネラ症の発症予防ができたとのことである。
出典:荒島康友,矢久保修嗣新世紀・「One Health」としてのZoonosis 〈第40回〉カメ、イヌ等からサルモネラ(胃腸炎)が感染する!?」(大塚薬報 2015 年 5 月号(No.705))

爬虫類にベタベタ触らせるイベントがあちこちで開かれ、アニマルカフェでも飲み物を出すテーブルに爬虫類が置かれたりしていますが、動物福祉の問題だけでなく、公衆衛生上も許されることなのか疑問です。

ふれあい、フトアゴヒゲトカゲ

ふれあい感染事例

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