ロシア政府が180日間の鯨類輸出禁止を公表。恒久的措置はユーラシア経済連合で検討へ→【追記】鯨類の商業捕獲は禁止され、教育目的も捕獲禁止法案提出

昨年、ロシアが回遊型のシャチを絶滅危惧種に指定したことをこちらでご報告しました。これにより、シャチの水族館向けの捕獲・輸出については可能性がほぼなくなっていましたが、シロイルカについては、懸念が残っていました。

日本の水族館は、これまでロシアから、しばしば野生のシロイルカ(ベルーガ)を輸入してきていますから、これからも続くのではないかと非常に懸念していましたが、なんと今年の8月20日、ロシア連邦政府が、クジラ目の動物について180日間の輸出禁止措置をとったとの報道がありました! とりあえず半年間ではありますが、これは朗報です。

さらに、ロシア、ベラルーシ、カザフスタンなどで構成されているユーラシア経済連合(EAEU)でも同様の措置をとるよう提案するとのこと。また、恒久的禁止についてもEAEUで検討されるだろうとリリースには書かれています。期待!

ロシア連邦政府のサイトで公表されたリリースの全文翻訳は以下の通りです。(ロシア語から英語に訳したものを日本語にしていますので、その点についてはご了承ください)

政府決定の本文のほうに、公布の日から30日後に効力を発するとありますので、もうすぐ施行されます。


ロシア連邦政府リリース翻訳

政府は、ロシアからのクジラ、イルカ(*)の輸出を一時的に禁止する措置をとる

この制限は180日間有効である。

クジラ、イルカの輸出に対して禁止が行われた。この法令は、ミハイル・ミシュスティン首相によって署名された。
その主な目的は、他国で需要の高い海洋哺乳類の個体数を保護することにある。例えば、水族館やイルカ施設などの娯楽分野で積極的に利用されている。
経済開発省のこの法令は、ユーラシア経済連合(EAEU)の関税領域からの海洋哺乳類の輸出を一時的に禁止する提案をユーラシア経済委員会に提出し、検討することも指示している。また、ユーラシア経済連合関税領域外への鯨類輸出の恒久的禁止を確立することも、EAEUレベルで議論されるだろう。

2018年には、いわゆるクジラ監獄の話題が広く世間の反響を呼んだ。沿海地方のスレドニャヤ湾で、11頭のシャチと90頭のシロイルカが違法に飼育されていた。中国の水族館に販売する計画であった。ロシアのプーチン大統領の介入により、動物たちは解放された。今後このような事態となることを防ぐため、大統領は政府に立法の改善を指示したのである。その結果、「ロシア連邦の排他的経済水域に関する法律」および「漁業水生生物資源保護法」が改正され、商業漁業における海洋哺乳類の捕獲を禁止することとなった。加えて、教育・文化目的で海洋哺乳類を供給することを認める許可の取得要件を、さらに制限する決定が採択された。
今回の法令は、これまでにとられてきた措置を考慮しつつ包括的に問題に対処するために役立つだろう。

2021年8月16日付政府決定 第1335号

* “dolphin(イルカ)” と “porpoise(ネズミイルカ)”となっていますが、日本語では区別がないので、まとめて「イルカ」と訳しました。
2021年8月16日付政府決定(第1335号)の本文に、クジラ目(Cetacea)の哺乳類が対象であることが書かれています。(ユーラシア経済連合の貿易で使われている統一商品命名法のコード010612 00 の動物ということも書き添えてあります)
原文 

Правительство ввело временный запрет на вывоз китов, дельфинов и морских свиней за пределы России(2021年8月20日、http://government.ru/news/43043/)※英訳はこちらのページに移しました。

追記 商業目的の捕獲禁止施行、教育目的での捕獲禁止法案提出

その後、ロシア連邦は、イルカ、クジラ、シャチ、シロイルカ(ベルーガ)、ネズミイルカなどの鯨類の商業目的及び沿岸での捕獲の禁止を実現しました。2022年1月10日に発効しています。

また、2021年12月の報道によれば、文化および教育目的でも海洋哺乳類を捕獲することを禁止する法案が4月に下院(国家会議)に提出されていたが修正を求められ、12月に再提出。第3読会を通過したそうです。

ロシアの法律の成立には、下院の第一~第三読会を通過した後、下院での採決が必要で、その後、上院(連邦会議)での承認と大統領の署名が必要です。

2022年4月の報道12月の報道では法案は修正され、政府も肯定的な反応を示している状況のようです。

⇒成立しました。

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