(クジラ目ハクジラ亜目イッカク科,学名:Delphinapterus leucas)
北極海、アラスカ、カナダ、ノルウェー、ロシアの極北、オホーツク海などに生息。
体長は4メートルから5.5メートル。白い体と短い口吻、頭部の丸いメロン体が特徴。背びれを持たない。他のクジラやイルカと違って頸椎が融合しておらず、自在に首を動かすことができる。このことがショーの動作でも強調される。
冷たい海域を泳ぐため、皮下脂肪は分厚い。複雑で多彩な鳴き声から「海のカナリア」とも呼ばれる。幼体は体がグレーがかっているが、大人になると白くなる。古い皮膚や、体表についた藻類のせいで黄色みを帯びることも。
口に溜めた海水を噴出させて砂の中に隠れている魚や甲殻類を驚かせ、飛び出したところを捕食する。口から吐き出した空気の輪でで遊ぶ行動(バブリング)が水族館で観察され、イルカショーに利用されている。
第二次世界大戦中、カナダのセントローレンス川のシロイルカは戦闘機の射撃訓練の的にされ、1960年代はスポーツ射撃の的にもされた。
湾や河口に集まり生息する習性から、産業廃棄物や水質汚染が生息数の減少や繁殖率の低下に深刻な影響を与えている。汚染は妊娠した母イルカから胎児へ、そして母乳を通して子どもに移行してしまう。
害獣としての駆除や狩猟による乱獲、ホエールウォッチングの執拗な追跡などが生息に打撃を与えてきており、絶滅が危ぶまれる。さらに水族館の需要による捕獲、搬送中や水族館での死亡と、シロイルカにとって人間の存在は常に脅威だ。
日本にも捕獲された野生のシロイルカがたくさん輸入されている
シロイルカは、北極海など寒い海域に生息する動物ですから、日本では捕獲できません。
CITES(ワシントン条約)付属書II掲載種であるため、輸入の記録を見てみたところ、国際取引規制開始後に日本に輸入された記録のある35頭のうち、カナダからの1頭(1988年輸入、鴨川シーワールドが捕獲したオスの「ナック」)を除き、すべてがロシアからの輸入です。
そして、1993年~2016年までの間にロシアから輸入された34頭のシロイルカのうち、由来に関する記録が記載されていない一部を除けば、全てが野生捕獲でした。
注:ただし、ロシアからの輸出の記録は29頭しかありません。輸出側の記録と輸入側の記録が全体的にちぐはぐで、他の動物ではここまで違うことはなく、疑問も残ります。また、2011年にアメリカから3頭、繁殖個体の輸出の記録がありますが、日本側に輸入の記録はなく、輸送途中で死亡した等の可能性があります。現在、鴨川シーワールドの「ナック」以外の輸入シロイルカは全てロシア産と言われていることもあり、アメリカの記録は上記の35頭にはカウントしていません。
今、日本でシロイルカを飼っているのは、名古屋港水族館、鴨川シーワールド、横浜・八景島シーパラダイス、島根県立しまね海洋館アクアスの4カ所だけですが、日本の飼育下生まれも複数おり、ロシアから輸入された野生生まれの半数近くは既に死亡したものと思われます。
2015年に、日本動物園水族館協会が追い込み猟からの野生イルカ導入を禁止する決定をし、現在、加盟園館にはそのルールが適用されていますが、翌2016年にはロシアから7頭、野生捕獲のシロイルカが輸入されています。
名古屋港水族館や鴨川シーワルドに入ったと見られ、確かに追い込み猟だけが禁止されたと考えれば違反ではないのでしょうが、野生から略奪しないという意味で考えれば、疑問です。
ロシアは今年、哺乳類捕食型のシャチを絶滅危惧種に指定し、捕獲禁止にしましたが、シロイルカについては指定を行っておらず、懸念は残ります。
ただ、一昨年から昨年にかけて、11頭のシャチと87頭のシロイルカが狭い生簀に囚われていた「イルカ監獄」事件で国際的に強い批判を受け、全頭、海にリリースしていることは注目に値します。
Netflixドキュメンタリー『自由を求めて』(Born to be Free)
Netflixを視聴されているかたは、ぜひドキュメンタリー『自由を求めて』(Born to be Free)を見てみてください。
オホーツク海で捕獲され、著しく狭く汚い水槽に囚われたままとなっていた18頭のシロイルカたちの問題を追ったドキュメンタリーです。
シロイルカを捕獲する猟の様子を撮影した貴重な映像も出てきます。猟は巻き網でした。
シロイルカは、幼いころは体色がグレーで、この時期に捕獲されます。つまり、母親や群れから無理やり引き離された子どもたちがショーに使われている。日本の追い込み猟でも同じです。(日本では、群れの他のイルカたちは食肉になりますが)
このドキュメンタリーが追う18頭のシロイルカたちを苦しめたのは、イルカが脳を半分ずつ休ませて寝る睡眠方法をとること(半球睡眠であること)を発見した科学者でした。お金のために、イルカたちを娯楽利用するようになっていたのです。
ドキュメンタリーでは、最後にシロイルカたちの行き先として日本も挙がっていました。
水族館で「かわいい、かわいい」とシロイルカのショーを楽しんでいる人たちは、目の前のイルカが(もしくはその親が)、網に捕まらなければ大自然の中にいたかもしれないとは思いもよらないのではないでしょうか。
大自然の中で、数多くのシロイルカたちが沿岸に集まっている映像を見ると、いかに人間が彼らから本来の生き方を奪っているか、実感します。