イルカに負担、ショー廃止を―朝日新聞にインタビュー記事が掲載されました 

2月13日(日曜日)の朝日新聞に「(フォーラム)動物の幸せって? 反響編」が掲載されました。
朝日新聞のサイトで1月11日まで行われていたアニマルウェルフェア(動物福祉)に関するアンケート「動物の幸せを考えることはありますか」の結果をうけ、これまで畜産編ペット編が公開されていましたが、そこで取り上げられなかった話題が、この日取り上げられました。
PEACEからも代表の東が「イルカに負担、ショー廃止を」としてインタビューを受けましたので、ぜひお読みください。
朝日新聞デジタル

 「アニマルウェルフェア」(動物福祉)の観点から畜産とペットを考えた先月16日と23日の「動物の幸せって?」には多くのア…

インタビューを受けて

代表 東さちこ

約30年前、地元の水族館の小さなタンクで、1頭のイルカがもう1頭に追いかけられ、ときどき少し止まろうとするも追いついてくるので、また必死に逃げるように泳ぐ…という状況に遭遇しました。2頭がぐるぐると高速で円を描いて泳いでいました。いつまでたっても終わりません。ショープールではなく別の小さなタンクでのことでした。
あんな狭いところに嫌な相手と閉じ込められて、自分からは出ていくことができない…。逃げられない場所に閉じ込められる恐怖を感じ、こちらがパニックになりそうでした。この光景が頭から離れなくて、その後しばらく苦しめられました。あそこから出してあげられないという非力さでも苦しみました。
その後、アニマルライツの考え方に接し、活動にかかわるようになる中で、イルカにも相性があり一緒にできない相手がいること、ケンカでけがを負うことなども知りました。何より、イルカの飼育そのものが問題で、水族館が一般の人々に抱かせている幻想について考えるようになりました。この話は、神戸市の市議会での意見陳述でも話したのですが、今回の朝日新聞の取材でも、まず個人的なきっかけとして、このことをお話ししました。
水族館のプールは小さく、鯨類にとって、そもそも許容できる環境ではありません。記事の企画テーマは「アニマルウェルフェア(動物福祉)」でしたが、ではイルカの福祉のために何ができるか?と考えると、やはり飼育の廃止しかありません。なので、「イルカショーに行かないで」と訴えていますと答えました。
昨年、フランスでイルカショー禁止などを含む動物福祉法案が可決されてから、これが世界の潮流であることへの理解が広まっているように思います。
私たちの働きかけの結果、2015年に日本動物園水族館協会が追い込み猟からのイルカの入手を禁じたときも、かなりイルカショーについて報道されましたが、あの頃のマスコミは、水族館や太地町の漁業関係者寄りの態度がはっきりしており、私たちは自分たちでイベントを開くしかありませんでした。
今回、あの状況から、ようやくここまで来たか…という思いがしています。
今はもう生きていない、あの追われていたイルカに報いることのできる活動ができているかはわかりません。しかし、仲間もふえ、着実に日本も変わりつつあると実感します。 一緒に声を上げてくださったら、とてもうれしいです。

補足情報

紙面や反響を受けて、気になった点について補足したいと思います。

捕れなくなってきているハンドウイルカ

イルカを捕獲している漁業関係者のコメントも載っていましたが、動物福祉は、その種を絶やさなければいいとか、そういう問題ではありません。
ただ、未だ野生からの捕獲が続いていることで生態系への影響がないとは思えませんので、最新のグラフを掲載しておきたいと思います。ショーで主に使われているのはハンドウイルカですが、このハンドウイルカが和歌山県太地町のイルカ追い込み猟で捕れなくなってきていることは明白です。統計にもその傾向は出ていますし、現地で働いていた方からも聞いています。
(グラフは和歌山県イルカ追い込み猟ハンドウイルカのみ。突きん棒は含まない。Heal the Ocean Japan作成。)
イルカ追い込み猟によるハンドウイルカの捕獲数(和歌山県)
ハンドウイルカが捕れなくなってきていることに加えて、中国が爆買いしているので、日本の水族館が他の鯨種に手を広げている現状があります。(四国水族館がオープン時からマダライルカを使っている等)
また、全体にイルカが捕れなくなってきているからこそ、他の鯨種も捕れるように水産庁に働きかけているのが和歌山県です。水産庁も猟期内に数が捕れなくなってきているからだということは、認めています。
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人間こそイルカの天敵

水族館に天敵がいないという考え方も疑問です。人間がイルカの「天敵」なのであり、水族館では、むしろこの天敵に捕まった状態です。
イルカは水族館用や食用のために、人間に捕獲・捕殺されています。それだけではなく、巨大な商業漁業に伴うトロール網、定置網、ゴーストネット(廃棄され海を漂う漁業網)などで死んだり傷ついたりしています。また、船舶もイルカの生活や身体を直接脅かしています。水質汚染や海のプラスチック汚染なども含めれば、イルカに対する人間の脅威度はとても高い。
これらのことを、水族館は伝えていません。特に水族館用の残りが食用に回っていることは、都合の悪い事実です。
水族館のプールでの飼育も、緩慢に殺しているようなものです。狭く正常な行動ができない環境、それによる異常行動、塩素の入った水、冷凍で水分や栄養を失ったエサ、それを補うためのサプリや薬剤、体に無理のかかる調教芸…
私たちは、飼育員が努力していないなどとは決して言っていませんが、どれだけ努力しても自然な状態に近づけることはできません。鯨類の飼育には限界があります。 鯨類だけではありませんが、大型の動物ほど、行動域を確保できない問題が大きく立ちはだかり、そこに社会性などの特性の問題も加わります。
福祉の担保が難しい動物については飼育を終わらせていこうというのが、アニマルウェルフェア/アニマルライツの潮流です。

欧米人のイルカ好き?―科学研究が変えたイルカのイメージ

記事への反響を見て思うことですが、日本では「イルカ保護なんて欧米人の考え方だから受け入れるべきではない」という考えがとても強いように思います。欧米をマネしてイルカショーを導入したにもかかわらずです。(お金を儲ける手段に限り、欧米流は許容されるようです)
確かに欧米人は鯨類の保護には熱心です。イルカを飼う水族館が存在しないか、日本よりはるかに少ないような国の人々が、イルカ、イルカと熱心に保護を訴えています。イルカを飼う施設が50カ所以上もある日本ではイルカを保護する気風が低調なので、イルカショーはイルカの保護の気持ちにつながらないと結論してよいのではないかと思います。
ところで、なぜ海外の人々は、こんなにイルカ、それも言語や脳機能などについて関心が高いのでしょうか。
これには、かつてイルカが、脳に電極を刺されたりLSDを投与されたり、今では信じられない動物実験に供されてきたことが大きく関係しています。いわゆる実験動物以外で、もっとも実験に使われてきた動物だと指摘する人もいるくらいです。
イルカの実験研究は1950年代に始まるので、既に忘れ去られようとしており、欧米人のイルカ信仰だとかなんだとかの話にすり替えられがちなのですが、脳神経学者のジョン・C・リリーが「イルカは音声で自分に話しかけている!」との天啓を得なければ、ここまでみんなイルカの知性や精神世界に関心を持たなかったのではないかと思います。イルカは、電極を刺すと暴れるサルとは全く違いました。
彼のイルカ研究は、人々のイルカ観を変えたはずですが、そうした実験を行っていたリリーが、研究で得た知見から導き出した結論は、イルカ・クジラ類の権利の保護でした。 彼の著作は日本語訳も何冊かあるのですが、クジラやイルカを食べている日本では(マスコミによるブロックがまずあるので)、そこまで社会に浸透しなかったのだろうと思います。
一方、欧米では、イルカが音声でコミュニケーションしている、クジラが歌を歌っているといった科学的知見が次々と人々に感銘を与えました。
ジョン・C・リリーはイルカが登場するドラマ「わんぱくフリッパー」の監修もつとめた研究者で、イルカにハマったために、少々科学者としては道を外れていきます。このドラマでイルカ調教師兼俳優だったリック・オバリーも、その後、イルカの保護活動に身を投じています。
イルカの利用に深く関わった人々が、イルカの保護側に回る現象は、とても興味深いです。
イルカはそれだけ「ほかの動物と違う」ことを感じさせる動物なのですが、日本では、その事実すらイルカの商業利用に利用されるばかりなのは、とても哀しいことです。

参考記事

水族館・イルカショーTOP

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