新屋島水族館

韓国は野生動物のアニマルカフェ禁止へ。動物園・水族館では人が動物に乗る行為も禁止。動物の流通はホワイトリスト制へ

韓国では、昨年「動物園及び水族館の管理に関する法律」(動物園水族館法)と「野生生物保護及び管理に関する法律」(野生生物法)の改正が成立し、動物園・水族館以外での野生動物の展示が禁止されるなど、画期的な規制が実現しています。

2027年12月まで猶予期間がありますが、アニマルカフェなどでの野生動物の利用はできなくなります。野生動物のふれあい花盛りの日本では考えられない、画期的な法改正です。飼育できなくなった野生動物は政府が引き取る予定とも報じられています。

また、以前ご紹介した「第一次水族館管理総合計画」にすでに盛り込まれていたことですが、動物に乗る行為が禁止されると報道にあったので、韓国語のできる方にお願いし、韓国の団体に詳細を確認してもらいました。回答は以下の通りでした。

動物園・水族館が保有していたり、レンタル、委託している動物と、そこで増えた動物に対し、虐待や背に乗る行為が禁止される。つまり、種は問わない。種の範囲は、どんな動物でもで、動物園・水族館の所有動物に限る。
日本でもイルカショーでイルカの背に乗ったり、ゾウライドをさせたり、ふれあいでリクガメの背に子どもを乗せたりしています。こうしたことが、韓国では禁止されます。日本でも虐待行為として止めさせていかなければなりません。
また、イルカは新規保有禁止となります。韓国では既に実質的に海外から輸入はできなくなっていましたが、現在飼育されている21頭を最後に、鯨類の飼育・展示は終了することになります。
さらに画期的なのは、動物の流通に関してもホワイトリスト制(売買してよい動物種を指定し、それ以外は扱いを不可とする制度)が導入されることです。EUも既にいくつかの国が飼育をホワイトリスト制にしており、EU全体もそれに追随する方向にありますが(後日ブログに記事アップ予定)、同様の動きが韓国でも実現しています。
野生動物を売買し利用することに批判が起きず、企業等の意識も低いところにとどまっている日本は、いつの間にか規制も追い越され、水をあけられてしまったように感じます。日本でも声をあげ、社会を変えていきましょう!

改正の詳細は、韓国の環境部(日本の環境省にあたる)の公表事項からの下記の抜粋をご参照ください。また次ページに、改正成立直前の京郷新聞の記事の翻訳(抜粋)も掲載しました。

翻訳等にご協力くださった皆さま、ありがとうございました。


〔ニュース・お知らせ〕

動物園水族館法など5つの環境法案が国会で可決(抜粋)

登録日:2022-11-24

▷ 国民が体感できる環境政策の基盤づくりに寄与することを期待

□ (動物園水族館法) 動物園・水族館の許可制への転換(現登録制)、展示動物福祉向上など
□ (野生生物法) 動物園・水族館以外の施設での野生動物の展示禁止、指定管理野生動物の定義新設及びホワイトリスト指定など輸入・流通管理強化

環境部(長官ハン・ファジン)は「動物園及び水族館の管理に関する法律」(以下、動物園水族館法)、「野生生物保護及び管理に関する法律」(以下、野生生物法)など5つの環境法案*が11月24日、国会本会議で可決されたと発表した。
* 残りの3つの法律は水の再利用促進及び支援に関する法律、土壌環境保全法、自然公園法

この日国会を通過した法律案は国会から政府に移送された後、国務会議議決などを経て早ければ公布直後、長くて公布後3年後から施行される。

まず、「動物園水族館法」では動物園・水族館を△既存の登録制から許可制に転換し、△展示動物の福祉を向上させる多様な管理制度を強化した。

これまで動物園・水族館は登録規模*さえ満たせば設立が可能な登録制で運営され、安全事故対応および疾病予防のための管理が不足し、展示動物の劣悪な生息環境を放置しているという批判があった。
* [動物園]野生動物又は家畜を10種又は50個体以上保有及び展示(家畜のみ展示する施設を除く)
*[水族館]海洋・淡水生物を容量が300m3以上または床面積が200m2以上の水槽に展示

<動物園・水族館許可制への転換>

これに対し動物園・水族館を許可制に転換し△保有動物種別生息環境、△専門人材、△保有動物の疾病・安全管理計画、△休・閉園時保有動物管理計画などに関する要件を備え管轄市道知事に許可を受けなければ運営ができないようにした。
* 既存法に基づき、既に登録されている動物園は、法公布後6年以内(2028年12月まで)に改正法に基づく許可基準を備えて許可を受けなければならない

許可基準遵守可否を専門的に検査するために検査官制度も導入した。検査官は動物生態および福祉に専門性を持った業界従事者を環境部および海洋水産部長官が委嘱し民間の専門性を活用する予定だ。

<展示動物福祉向上>

展示動物体験プログラムは行動エンリッチメント、獣医学的訓練(正の強化訓練)*などと連携して国民が野生動物について学べる機会を提供する肯定的な役割を果たしているが、一部無分別な餌やり**など不適切な体験行為によって動物福祉が阻害される副作用があり、これを制限する法的根拠も用意した。これに対し下位法令で禁止される具体的な体験行為を規定する予定だ。
* 動物の健康診断に必要で、口を開けたり腕を差し出したりする行動を誘導するため、餌など肯定的な対価で訓練する姿を観覧客に見せながら説明するもの
** 単一の餌を制限なく支給し、動物に代謝障害、栄養不均衡などの健康被害をもたらし、餌やり体験のために長期間飢えるなど動物福祉を阻害するもの

また、動物園・水族館は展示によって死亡したり、病気が発生したりする危険性が高い種を新規に保有することが禁止される。

下位法令でクジラ類を新規保有禁止種と定める予定であり、これにより国内水族館に残っている鯨類21個体(2022年11月基準)を最後に国内で展示用鯨類の新規展示ができなくなる。

「野生生物法」では△動物園・水族館以外の施設での野生動物の展示を禁止し、△野生動物管理体系を強化した。

<動物園・水族館外での野生動物の展示禁止>

動物園・水族館ではない施設で、生きている野生動物を展示することは禁止される。ただし、一部危険でないか、人獣共通感染症伝播の恐れが少ない種、公益目的の施設は例外的に許容される。

動物園・水族館として登録せず野生動物を展示してきた既存事業者には5年間(2027年12月まで)の猶予期間を与えた。

<野生動物管理体系の強化>

現行法上、管理の死角地帯に置かれていた野生動物の輸入(搬入)・輸出(搬出)・流通全過程に対する管理を補完および強化できる制度的基盤を用意した。

これまでは絶滅危惧種の野生生物、外来株の生物、生態系撹乱生物などの法定管理野生動物に含まれていない野生動物*が多数あり、人獣共通感染症流入や、ハイエナのような危険な野生動物を個人が輸入して持ち込む行動を予防できる管理手段がないという問題があった。
* 野生動物(哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類)32,880種のうち現行法上管理体系がある野生動物は計13,210種であり、19,670種は管理対象に含まれていない

現行の法定管理野生動物に含まれていない野生動物を「指定管理野生動物」と新たに定義した。

このうち安全性が立証され、国内輸入・流通が可能な種(ホワイトリスト*)を指定し、野生動物による疾病・安全事故の発生を事前に遮断できるようにした。
* 病気・生態系への危害の懸念が低い種のみ輸入・流通ができるようにし、事前予防的特性を持つもので、欧州連合など先進国での導入は最近増加傾向にある。環境部令で規定する予定

また、野生動物流通(譲渡・譲受・保管・斃死)過程で変動が発生した場合、市長・郡守・区庁長に申告する申告制を新設し、野生動物対象営業*行為に対する許可制度および営業者遵守義務**事項を導入して国内に輸入・搬入され流通される野生動物に対する管理・監督能力を強化し、野生動物遺棄問題などから生態系・国民の安全を守ることができる基盤を設けた。
* 大統領令で定める規模以上に野生動物を取り扱う、輸入・生産・販売・委託管理業
** 健康管理、販売記録の作成・保管、野生動物保護・衛生教育履修、管理責任者選任など

原文 동물원수족관법 등 5개 환경법안 국회 통과 

新屋島水族館
日本の新屋島水族館のイルカショー。韓国ではイルカの背にトレーナーが乘る行為が激しく批判された。
過去記事

新たにつくられる水族館ではイルカを含む鯨類の飼育・展示・観覧は全面禁止。イルカに乗ったり触ったりする体験も禁止へ―韓国の海洋水産府が先月21日、このような内容を含む「第一次水族館管理総合計画(2021~2025)」を公表しま[…]

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