日本から、生きたイルカがどれくらい輸出されているか、最近の情報をアップしていなかったので、貿易統計の品目コードが変更になった2012年以降でデータをまとめました。(2014年にアップした過去記事はこちら)
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注意事項
下記の事情から、正確な輸出数を把握することは困難です。あくまで目安として見てください。
貿易統計では、「クジラ目、海牛目、鰭脚類」に1つのコードが割り当てられているため、クジラ目の正確な輸出数はわかりません。アザラシやセイウチの輸出も行われているからです。鰭脚類については、わかる範囲で表に記載していますが、これが全てではない可能性があります。
また、イルカは全種がCITES(ワシントン条約)の対象となっているため、種まで判明するCITESトレードデータベースの情報と対比させた表を作成したのですが、CITESでは輸出国側の報告数と輸入国側の統計数の食い違いが大きく、数についてはあまり参考になりません。実際の取引数は、貿易統計のほうが参考になるものと思われますが、貿易統計では、ロシアとの取引が非公表になっている可能性があります。(※財務省からの回答を追記しました)
貿易統計では、金額も公表されるため、1頭当たり単価も計算しましたが、一部鰭脚類が混じっているとわかっている部分については、計算していません。(単位は「千円」です)
わかること
- 輸出先は、圧倒的に中国が多い。2019年に、152頭も輸出している。中国のイルカショー産業を支えているのは日本。
- イルカ1頭あたりの平均単価が、2012年から2020年の間に、約400万円から650万円に高騰。
- 2017-2018年猟期から新たに捕獲枠が設定されたシワハイルカとカズハゴンドウも、2018年から早速輸出されてしまっていた。
- 輸出されているのは、ほぼ全てが、野生捕獲されたイルカ。
- ショーで主に使われているハンドウイルカが多くを占めるが、それ以外の種も輸出されている。
補足
かつては毎年輸出されていた韓国ですが、既にイルカの輸入は禁止されており、イルカを飼育する水族館を新しくつくることもできません。今後、日本からイルカが輸出されることはないはずです。
先日、韓国の「第一次水族館管理総合計画(2021~2025)」についてご紹介しました。[sitecard subtitle=関連記事 url=https://animals-peace.net/zoo/korea-aquariump[…]
追記:貿易統計に計上されないもの
ロシアへの輸出が計上されていない件について、財務省から以下の回答がありました。
ロシアへの輸出についても他の国への輸出と同様に貿易統計に計上されます。 お調べいただいた貨物が貿易統計で検索できない理由としましては、以下の貿易統計計上除外となる規定に合致した可能性がございます。(例えば、20万円以下の貨物、無償の救じゅつ品、寄贈品など)貿易統計計上除外となる詳細な条件に付きましては、以下のURLから、21-2(普通貿易統計計上除外貨物)をご確認くださいますようお願いいたします。 https://www.customs.go.jp/kaisei/zeikantsutatsu/kihon/TU-S59k1048.pdf |
リンク先の「外国貿易等に関する統計基本通達」を見ると、さまざまな除外品があることがわかりますが、イルカがどれに該当するかは、今ひとつ想像がつきません。(無償や展示会への出展のためということがありうるのかどうか?)
これとは別に、事業者からの申請により非公開が認められる場合があることが貿易統計のサイトに書かれているので、そのためかもしれません。
関連記事
2014年にも輸出数についての調査結果をアップしていました。
このページは2014年に公開した記事です。その後の統計については、こちらの新しい記事をご覧ください。[sitecard subtitle=関連記事 url=https://animals-peace.net/zoo/dolphin-ex[…]
昨年6月に、CITES(ワシントン条約)上の規制を受けているイルカの輸出について、経済産業省と水産庁に申し入れをし、その際、申請書類の情報公開請求の手続きをしました。その後、一たん書類が開示されたのですが、貿易統計の輸出実績と突き合[…]
新たに捕獲枠にくわえられた2種については下記の記事を参照ください。
報道がされていますが、イルカ2種(シワハイルカとカズハゴンドウ)に新たに捕獲枠が設けられ、合法的に獲ることができるようになってしまいました。この時代に、まさかの許可対象種拡大です。要望していたのは和歌山県と沖縄県。今年になっ[…]
▼巨済シーワールド問題とその後の韓国の鯨類飼育規制に関するまとめページ