「草稿ではない最終版」というものが本当に存在したのかどうか(国立国会図書館に納められているものが下書きだったというのは虚偽ではないのか)というところについては、やはりはっきりしないままの幕切れとなった印象ですが、会見では「ああいう論文がいつまでも残っているのは早稲田大学として本意でない」等の厳しい発言もありました。
小保方氏の博士論文は、大量のコピペがあっただけではなく、グラフや図の盗用が指摘されており、科学的結論についても疑問が呈されてきました。その真偽についてももちろん関心はありますが、動物保護団体として気になっていたのは、不正な結論へ導かれている可能性の高い論文のために再度動物実験がなされていないだろうかということでした。
会見では「再実験を求めるものではない」との発言はありましたが、早稲田大学が求めていなくても、どこかが許してしまえば本人の希望で実験で来てしまう可能性もあり、再実験が行われていないことを確かめるために質問書を11月4日付けで送付しました。
そもそも、TWInsのような形で共同大学院を名乗りながら実際には早稲田は倫理審査にも関与しなかったと思われること、会見の中で小保方氏が実験を行ったのはハーバードだけであるかのような印象を与える回答があったことから、実験が行われた場所(倫理審査が行われた場所と関係する)等についても確認したく、質問しました。
私立大学は情報公開請求もできませんし、質問するしか方法がありませんが、残念ながら早稲田大学の返事は、ほぼ回答になっていない内容です。
動物実験関係者は、情報公開に努めているようなことを言っていますが、これが現実です。
質問と回答の詳細は、下記のページをごらんください。
ちなみに、小保方氏の博士論文の一部は、下記のサイトで見ることができます。
博士論文の中でanimal careについて謝辞が述べられているのは外国人の名前だけで、ハーバード大のスタッフではないかと思われますが、実際には東京女子医大でもスフェア(のちのSTAP細胞)をつくっていたはずです。そしてそれを理研の若山氏のところへ持って行き、キメラマウス作成を依頼していました。
また、写真について質問したのは、博士論文の中に幾つかマウスの写真があるからです。
キメラマウスと書かれた写真のマウスはキメラに見えませんが、ほのかに黒い毛が入っているマウスを発見し、確認するとキメラだったということが早稲田大学の調査報告書には書かれています。それに該当する写真は、「ほのかに黒い毛」と見えるところは何かができており、皮膚が黒くなっているところとは位置がずれています。(ちなみに、理研の報告書「CDB自己点検の検証について」では2010年8月の記述として「東京女子医大から細胞持参で若山研究室に数回訪問。キメラ作製は失敗」と書かれていて、この成功について言及されていないのも不思議です。)
また、これは教えていただいたことですが、大量のマウス胎児と思われるものがバットの中に雑に入れられている実験台の写真もあります。数匹の母マウスから一度に取り出したものでしょうか、あまりにどっさりで無造作、なおかつ実験処置によってできたと思われる手前のシミもリアルです。不思議なのは、ここに入るべきは何らかの解析図版であろうと思われるのに、単なる作業中の写真が入っていることです。
作業中の様子がわかるのはありがたいことですが、これがどこで行われたものか、誰の指導のもとに行われたのか、疑問に思います。
質問書にも書きましたが、早稲田大学が小保方氏の研究内容に疑念を持たず、研究者としての資質を有さない人物を博士として世に送り出したことにより、根拠のない研究のために多くの動物が使用され、無駄に犠牲となりました。
しかし背景には、早稲田大学×東京女子医大という特殊な制度のもと、奇妙な研究をしているハーバード大の研究室への留学が重なったこともあったかとは思います。東京女子医大もハーバード大も沈黙を守ったままですが、これが科学に対する真摯な態度なのでしょうか。
博士論文取消だけではすっきり解決したようにも感じられず、自浄作用のない世界で動物たちがこれからも犠牲になっていくのは、何ともやるせないことです。