AWと乳用牛生産システムのOIEコード改正第2案に対して意見提出
2014年7月、「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」のOIEコード(世界動物保健機関の基準)第2案について日本から提出するコメントついて、日本の動物保護団体として、アニマルライツセンターと連名で以下2点を要望しました。提出に至った経緯等については、ブログをご覧ください。
その後の日本政府の対応についてはこちら。
意見書
1
OIE第2案、第7.x.5条 1. 飼養環境の設計に関する推奨事項 、f)について
第1案の際に、日本から提出されたコメントは
『帯電機器(例 カウトレーナー、帯電式の出入口)は、牛の快適性を阻害する問題の増加と関連があるため、(可能な限り、)使用すべきではない。(もし、使用する場合は、牛に対する苦痛やストレスを最小限にするよう実施しなければならない。) 』
とされており、カッコの中を追加するよう求めていますが、変更を求めず、OIEの第2原案を支持していただきたいです。
理由
乳牛の清潔さを保つことは重要ですが、その方法としてアニマルウェルフェアを阻害することが明らかなカウトレーナーの使用を容認する条文を入れるべきではないと考えます。
カウトレーナーは、乳牛をつないで飼育することを前提とした器具であり、つなぎ飼い自体が動物福祉の国際基準である5つの自由のうちの一つ「正常な行動ができる自由」を奪うものである以上、カウトレーナーは原案にあるとおり、「使用すべきではない」とすべきであると考えます。
わが国の「肉用牛生産の振興に関する法律」に基づき定められている「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」には、地域ブランドの確立、飼料自給、コスト削減といった観点から、放牧の推進が謳われており、すでにカウトレーナーを使用しないですむ酪農を日本は目指しているところです。
この「使用すべきでない」とするOIE原案は、日本の方針にも合致するものであると考えます。
2
OIE第2案、第7.x.5条 2. 飼育者の能力と動物の管理に関する推奨事項 、m)痛みを伴う処置 、i) 除角と断角について
第1案の際に、日本から提出されたコメントは
『乳牛の除角が必要な場合、生産者は獣医アドバイザーから、その牛の種類や生産方法に応じて、適切な手技(、麻酔や鎮痛剤の利用)及び時期に関する指導を求めなければならない。 』
とされており、カッコの中を削除するよう求めていますが、除角・断角について変更を求めず、OIEの第2原案を支持していただきたいです。
理由
麻酔や鎮静剤なしの除角・断角は、牛にストレスをあたえるものであり(※1)、わが国の乳牛の93.9%(※2)の農家で行われていることを鑑みると、「麻酔・鎮痛剤の使用は、除角については強く推奨され、断角については常に使用すべき」というOIE第2案を支持し、そのコードを積極的に参照して、アニマルウェルフェアの向上に努めるべきだと考えます。
※1 Taschke, A.C., Fölsch, D.W., (1997) Ethological, physiological and histological aspects of pain and stress in cattle when being dehorned, Tierärztliche Praxis (25), 19-27.
(実験概要)
101頭の子牛(3~4ヶ月齢)に対し、無麻酔下で焼ゴテによる除角を実施。 搾乳牛16頭に対し、ワイヤー鋸を用いて無麻酔下で除角した。
(実験結果)
除角中、すべての子牛は明確な痛みに対する反応を示し、唾液中コルチゾル濃度は除角後に有意に増加した。搾乳牛へ行った除角では、わずかな期間だけ乳量が減少した。
※2 2008年畜産技術協会調べ
その後の経過
2014年8月 日本がOIEに提出した第2案へのコメント
2014年8月に提出された第2案への日本のコメントは、
・舎飼での方向転換できないつなぎ飼いを認める
・カウトレーナーの使用を認める
というもので、私たちの意見は全く採用されませんでした。
2014年12月 OIEの第3案
2014年12月、第2案への各国からの意見を集約してだされたOIEの第3案は、日本からの意見に譲歩したものになっていました。
・舎飼での方向転換できないつなぎ飼いを認める
・カウトレーナーの使用を認める
という内容です。日本が国際的な規約を後退させてしまいました。
2015年5月 採択
その後OIEは加盟国に3回目の意見照会をおこない、2015年5月24~29日の第83回OIE総会で「アニマルウェルフェアと乳牛生産システム」が採択されました。
2015年7月 日本での報告
2015年7月1日、平成27年度第1回国際獣疫事務局(OIE)連絡協議会で採択に関する報告がありました。「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」コード和訳が配布されましたが、やはり、
・つながれている場合は方向転換できなくても良い
・カウトレーナーの使用は容認される
となっています。