難しいイルカの人工繁殖

子育ての環境、海と水槽の落差

イルカは母親を中心とした群れ=家族で社会性を学びながら成長する。狭い水槽では他のイルカが子育ての邪魔になることもあり、飼育下は子育てには適さない。水族館でイルカの母親が子どもを内側にしてグルグルと泳ぐのは、水槽の壁に子どもがぶつからないよう、守るためだ。本来なら、壁のない海を泳ぐ動物なのに。また、赤ちゃんイルカがいると塩素濃度を低くするため藻が発生する。

子どものイルカが母イルカに寄り添って泳ぐのは、母親のまわりにできた水流に乗って泳ぐためだが、水族館では単にほほえましい姿ととらえられ、子育てを助けてくれる仲間もいない水槽で母子がポツンといるのは悲しい光景だ。

オスは繁殖のため、水族館のあいだで使いまわしにもされる(ブリーディングローン)。

しながわ水族館では藻が発生した水槽で親子の「バニラ」と「ミント」が飼育されていた

【追記】藻自体は度を越えなければ鯨類の健康に悪影響はないが、水たまりのように狭く、閉鎖的で、排泄物などが生態系に還元されないプールという環境では、塩素を投入することで大腸菌などを抑えているはずである。鯨類の身体(皮膚や目など)にダメージを与える塩素を入れなければならない時点で、飼育自体が、不自然かつ健全ではないものだということは補足しておきたい。

須磨海浜水族園のふれあいプールで単独飼育されていたオスの「ガル」。ブリーディングローンや閉園に伴う移動で、何度も国内を輸送された。

赤ちゃんの死亡率の高い人工繁殖

飼育下でのイルカの繁殖はとても難しく、水族館で産まれた赤ちゃんが1年以内に死ぬ確率は80%から90%と、とても高い。「可愛い赤ちゃんが産まれました」と宣伝に使われる一方で、悲劇が続く。繁殖でふやせず、大人のイルカも死ぬため、野生からの捕獲に頼っているのが日本の水族館の実態だ。日本動物園水族館協会加盟の水族館だけが、追い込み猟からのイルカ導入を止めた。


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