動物虐待についての考え方(情報まとめ)

動物虐待の罰則が強化されました

何が虐待に該当するかについて、これまでの国等の見解を集めたページです。通報や告発の際の参考にしてください。2019年の法律改正での罰則強化についてはこちらこちら
目次

環境省「動物虐待等に関する対応ガイドライン」

2022年3月29日、環境省が「動物虐待等に関する対応ガイドライン」を公表しました。

動物虐待等に関する対応ガイドライン

これは、動物虐待が疑われる事案や、動物が虐待を受けるおそれがある事態を地方自治体などが探知した際に、円滑な対応を行うための基礎知識や対応の流れ等をまとめたものですが、一般人も参考になります。これをもとに、自治体や警察等へ対応を求めることができるからです。

このガイドラインは、2019年の動物愛護法改正で罰則が強化されたこと、また獣医師の虐待の通報が義務化されたが「何が虐待かわからない」と獣医師会が主張し続けたことなどを受けて定められました。

虐待に関する見解は、これまで出されてきたものをまとめただけではありますが、動物虐待に対する獣医学的評価などの情報や、チェックシートなどは参考になります。

目次

  • はじめに
  • 動物虐待等に関する対応ガイドライン(概要)
  • ガイドラインの使い方
  • 第1章 動物虐待等に関する基本事項
    1.法の目的における動物虐待等に関する対応の位置付け
    2.対象となる動物
    3.虐待を受けるおそれがある事態とは
    4.動物虐待等事案とは
    5.動物虐待等に関するその他の罰則
  • 第2章 動物虐待等に関する対応
    1.対応の流れ
    2.関係主体の役割
    3.相談・通報
    4.虐待を受けるおそれがある事態への対応
    5.刑事告発等
    6.動物虐待等事案の対応
    7.ひな形
  • 参考 動物虐待に対する獣医学的評価
  • 巻末資料

環境省パンフレット「知っていますか?動物愛護管理法」

環境省パンフレット「知っていますか?動物愛護管理法」には、虐待の考え方として、下記の例示がしてある。下記の通知の表に加え、「動物を闘わせる」などが追加されている。

動物虐待の考え方 環境省パンフレットより

環境省通知

環境省通知「飼育改善指導が必要な例(虐待に該当する可能性、あるいは放置すれば虐待に該当する可能性があると考えられる例)について」

環境省から自治体に通知されているもの。下記「別紙」が、飼育改善指導が必要であり虐待に該当する可能性、あるいはそのままの状態で放置されれば虐待に該当する可能性があると考えられる事例として環境省がまとめたもの。全文PDF

環自総発第100205002号
平成22年2月5日

(別 紙)

I 動物の虐待の考え方

  • 殴る・蹴る・熱湯をかける・動物を闘わせる等、身体に外傷が生じる又は生じる恐れのある行為
  • 暴力を加え
  • 心理的抑圧、恐怖を与える
  • 酷使 など
  • 健康管理をしないで放置
  • 病気を放置
  • 世話をしないで放置 など
積極的(意図的)虐待ネグレクト
やってはいけない行為を行う・行わせるやらなければならない行為をやらない

※動物自身の心身の状態・置かれている環境の状態によって判断される。

II 飼育改善指導が必要な例(虐待に該当する可能性、あるいは放置すれば虐待に該当する可能性があると考えられる例)について

1.一般家庭

  • 餌が十分でなく栄養不良で骨が浮き上がって見えるほど痩せている(病気の場合は獣医師の治療を受けているか。高齢の場合はそれなりの世話が出来ているか。)。
  • 餌を数日入れ替えず、餌が腐っていたり、固まっていたりして、食べることができる状態ではない。
  • 器が汚く、水入れには藻がついている。あるいは、水入れがなく、いつでも新鮮な水を飲むことができない(獣医療上制限されているときを除く)。
  • 長毛種の犬猫が手入れをされず、生活に支障が出るほど毛玉に覆われている。
  • 爪が異常に伸びたまま放置されている。
  • 繋ぎっぱなしで散歩にも連れて行かず 犬の糞が犬の周りに何日分もたまり 糞尿の悪臭がする。
  • 外飼いで鎖につながれるなど行動が制限され、かつ寒暑風雨雪等の厳しい天候から身を守る場所が確保できない様な状況で飼育されている。
  • 狭いケージに閉じ込めっぱなしである。
  • 飼育環境が不衛生。常時、糞尿、抜けた毛、食餌、缶詰の空やゴミがまわりにちらかっており、アンモニア臭などの悪臭がする。
  • 病気や怪我をしているにもかかわらず、獣医師の治療を受けさせていない。
  • リードが短すぎて、身体を横たえることができない。
  • 首輪がきつすぎてノドが締めつけられている。
  • しつけ、訓練と称するなどし、動物に対し殴る、蹴る等の暴力を与えたり、故意に動物に怪我をさせたり する。
  • 事故等ではなく、人為的に与えられたと思われる傷が絶えない。

2.動物取扱業者等

  • ケージが狭く、動物の排泄物と食餌が混在した状態で放置されている。動物が排泄物の上に寝ている。
  • 常時水を置いていない。あるいは、水入れはあるが中に藻が付いていたりして不潔である。
  • 幼齢にもかかわらず、食餌を適切な回数与えず(例えば朝晩の2回のみ等 、また、それで問題ない)と説明している。
  • 糞尿が堆積していたり、食餌の残渣が散らかっていたりして、清掃が行き届かず、建物内、ケージから悪臭がする。
  • 動物の体が著しく汚れている。
  • 病気や怪我をしているにもかかわらず、獣医師の治療を受けさせていない。
  • 飼育環境が飼育している動物に適していない(温度・湿度の調整も含む 。例えば、 西日が当)たるなど建物内の温度が上昇した場合、あるいは、その逆で、冬季に低温 となった場合に対応しない。
  • 多頭飼育で、飼育環境が不衛生。常時、糞尿、抜けた毛、食餌、缶詰の空やゴミがまわりにちらかっており、悪臭がする。
  • ケージ内で動物を過密に飼育している。・店内の大音量の音楽、または過度の照明にさらされることにより動物が休息できない。
  • しつけ、訓練と称するなどし、動物に対し殴る、蹴る等の暴力を与えたり、故意に動物に怪我をさせたりする。
  • 体調不良、不健康な動物をふれあいや散歩体験等に使用する。
  • 出産後、十分な期間(離乳し母体が回復するまでの間)を経ずに、また繁殖させる。

警察庁からの照会に対する国の回答

平成元年の警察庁保安部防犯企画課長照会に対する内閣総理大臣官房管理室長の回答は以下の通り。(「動物の保護及び管理に関する法律」の時代は、法律の所管が環境省ではなく総理府でした)

【照会】
1 動物の保護及び管理に関する法律第(以下「動管法」という。)13条第1項に規定する虐待についての一般的見解。
2 動物の所有者又は占有者が次のような行為をした場合、動管法第13条第1項に規定する虐待に該当すると解してよいか。
(1)動物にエサや水を与えなかったことにより、それが起因して当該動物を死に至らしめた場合
(2)動物が疾病にかかり、いずれ病死するかも知れないことを承知で何ら治療行為を施さなかったことにより、それが起因して当該動物を死に至らしめた場合

【回答】
1について
動物の保護及び管理に関する法律第13条第1項に規定する虐待とは、同条第2項各号に掲げる保護動物に対して、一般的に、不必要に強度の苦痛を与えるなどの残酷な取扱をすることをいい、虐待に当たるか否かの具体的判断は、当該行為の目的、手段、態様等及び当該行為による苦痛の程度等を総合して、社会通念としての一般人の健全な常識により判断すべきものであると解する。

2について
上記照会事項1についての見解に沿って判断すべきものであり、動物にエサや水を与えない(1)のようなケースについては、動物の態様、エサや水を与えなかった理由等の点について、また、何ら治療行為等を施さないという(2)のような不作為のケースについては、一般に疾病にかかった動物について飼い主に治療義務があるとの社会通念が成立しているかどうか、治療等を施さない正当な理由があるかどうか等の点について、十分検討を加えた上で、虐待に当たるか否か判断すべきものと思料する。

平成25年改正法施行通知

施行通知「動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律の施行について」

2012年の法改正で新たに加わった部分について、環境省から施行通知で示された見解。畜産業の糞尿の堆積等も、あくまで「一般的な」場合のみであり、常軌を逸しているものについては虐待に相当すると解されることに注意。全文PDF

環自総発第1305101号
平成25年5月10日

14 罰則(第44条から第50条まで)

動物の殺傷に関する罰則について、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に、虐待及び遺棄に関する罰則について、50万円以下の罰金が100万円以下に引き上げられる等罰則が強化された。これは、依然として悪質な動物の虐待及び遺棄に関する事件が後を絶たないこと等が考慮されたものである。また、動物虐待罪について、その定義が不明確であったことから、みだりに、酷使又は愛護動物の健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束すること、自己が所有する愛護動物について疾病又は負傷した際に適切な保護を行わないこと、自己の管理する施設であって排せつ物が堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設内で飼養又は保管することを、具体的な虐待の事例として追加している。なお、我が国で一般的な畜産業における家畜の取扱いは、みだりに酷使すること及びみだりに排泄物の堆積した施設において飼養することによる虐待には該当しない。

環境省が個別に照会に対して回答している内容

環境省が自治体からの個別の照会に対して回答している事例の主なものの一覧。中央環境審議会動物愛護部会 動物愛護管理のあり方検討小委員会(第20回)資料1より
照会内容回答

写真にあばらがはっきりと写っており「痩せている」状況が確認できる

餌及び水が与えられない状況が約10日間に及んでいる

飼い主は餌や水がなくなれば飼い犬の健康が維持できなくなることを認識していた

第44条第2項の虐待に該当

「水や餌が無くなっても誰かが与えてくれると考えていた」という申立ては極めて無責任

当該者が一時的にでも自宅に帰ることができなかった正当な理由があった場合は、虐待に該当しない

糞尿が檻の床面に付着している状況があるため、そこで寝起きする犬の体に糞尿が付着し、痒みを伴う

飼養されている犬64頭のうち、42頭が皮膚炎、40頭が外耳炎、33頭が結膜炎などの疾患がある

ネグレクト(健康管理をしないで放置、病気の放置、世話をしないで放置)であり、第44条第2項の虐待に該当

当該者が健康管理をしないで放置あるいは病気の放置等したことについて、正当な理由があった場合は、虐待に該当しない

足を怪我していること、皮膚病に罹患していることを認識しながら、治療行為等の適切な措置を施さず放置

ネグレクトであり、第44条第2項の虐待に該当

当該者が病気を放置したことについて、当該者が以前と比べて、経済的に困窮し、かつ他の者の経済的援助を得ることが困難だったと認められる場合や、当該者又はその家族に健康上の問題が発生し、かつ他の者の協力を得ることが困難だったと認められる場合などの正当な理由があれば、虐待に該当しない

容易に出ることが出来ない箱の中に、水も無く放置後の自活が困難であると容易に予想される

飼い主は犬の健康状態が悪く保護を必要とすると認識していながら放置

第44条第3項の遺棄に該当

生活経済事犯に関する捜査上のポイント

「捜査研究」という警察・司法関係者向けの月刊誌に掲載された記事に書かれている内容。執筆者は生活経済事犯研究会となっており、警察官僚が書いたものと推察される。出典:2016年5月号「生活経済事犯に関する捜査上のポイント 第5回 各論⑤動物愛護、廃掃法」

1 愛護動物の殺傷

(1) 想定事例及び判断

 甲は、自己が飼養している飼い猫がいうことを聞かないとして、床に何回も叩きつけて殺害し、その死骸を箱に入れてマンションのゴミ置き場に捨てた。

本事例では、愛護動物である猫を殺していることから、愛護動物の殺傷違反が成立するものと認められる。

また、この他にも、猫の死骸を投棄した廃棄物の処理及び清掃に関する法律第16条(投棄禁止違反)が成立する可能性が高い(解説は省略)。

(2) 適用法令の概要

《条文略》

〇愛護動物(動物愛護法第44条第4項)

愛護動物とは、以下のいずれかに該当する動物をいう。

ア 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる(1号)

「人が占有している」ことが要件とされていないことから、これらに該当する動物であれば、愛護動物となる。例えば、飼養関係がなく市街地等に生息するいわゆる「野良犬・野良猫」も、愛護動物と解されている。

イ その他、人が占有している動物で、哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの(2号)

「占有している」とは、動物に対して事実上の支配関係があることをいい、飼い主が動物を飼養している場合はもちろん、動物を預かった場合や一時的に連れている場合も含まれる。

また、一時的に飼い主のところから逸走した場合であっても、その習性として飼い主のもとに帰ってくることを常としているものは、占有を離れたとはいえないと解されているが、他方で、例えば、野生動物を餌付けしている場合等は、人のところへ戻ってくる習性はないと考えられていることから、人の占有はないと解されている。

〇殺傷

愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけることで、行為者が積極的に殺傷行為を加え、死傷の結果を発生させた場合をいう。

〇虐待

愛護動物に対し、みだりに、給餌又は給水をやめること、酷使すること、健康や安全を保持することが困難な場所に拘束して衰弱させることなどの虐待することをいう。

「みだりに」とは、正当性がなく、かつ、不必要に苦痛を与えるような方法をいうが、具体的には、単にその行為の必要性や苦痛の有無のみではなく、目的の正当性、手段の正当性、周囲の状況等を総合して社会通念により判断することになる。

〇遺棄

愛護動物を現在の場所から他の危険な場所に移し(移置)又は飼養義務がある者が他所に留置して立ち去り(置き去り)して、場所的に離隔することにより、当該動物の生命・身体を現実の危険にさらすことをいう。

(3) 立証すべき事項

《略》

(4) 捜査上の留意事項

《略》

〇愛護動物以外の動物の殺傷等

からす等の愛護動物に該当しない動物の殺傷事案については、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律第8条違反(鳥獣の捕獲等禁止違反。罰則同法第83条第12項1号:1年以下の懲役又は100慢円以下の罰金)等の適用を検討する。

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