2019年改正動物愛護法解説:獣医師による通報の義務化
獣医師による通報(第四十一条の二):
通報が義務化されました
(獣医師による通報)
第四十一条の二 獣医師は、その業務を行うに当たり、みだりに殺されたと思われる動物の死体又はみだりに傷つけられ、若しくは虐待を受けたと思われる動物を発見したときは、都道府県知事その他の関係機関に通報するよう努めなければならない。
(獣医師による通報)
第四十一条の二 獣医師は、その業務を行うに当たり、みだりに殺されたと思われる動物の死体又はみだりに傷つけられ、若しくは虐待を受けたと思われる動物を発見したときは、遅滞なく、都道府県知事その他の関係機関に通報しなければならない。
獣医師による通報の規定は、実験動物や畜産動物にもかかる重要な条項ですが、現状機能しているように思えません。私たち3団体では、逐条案にて通報の義務化を求めてきましたが、これが実現しました。また、「遅滞なく」との文言も追加されました。
改正の検討中に、動物愛護センターを獣医師の通報先とする案が出てきましたが、センターに限定する案については反対しました。警察に通報すべき事案は、きちんと警察に通報され、立件されるべきです。また市民からの通報をセンター等行政機関がないがしろにすることはあってはなりません。これについては動物愛護センターの条項新設に関するページも参照ください。
動物殺傷・遺棄・虐待の罰則強化についてはこちらをご覧ください。
改正後の動向
改正後、動物愛護部会などの場で、獣医師らがしきりに、虐待の通報先がどこなのかわからないのではっきりしてほしい等、環境省に要求し始めています。獣医師による虐待の通報は、2012年の改正で既に入っており、努力義務でした。これまで獣医師らは、通報は、どこにしていたのでしょう? 努力義務ができても誰も守っていなかったから、今頃になって、このようなことを言い始めているのだと思います。
努力義務では、誰も法律を守らないということが、ハッキリしました。だからこそ義務化が必要なのです。
環境省は、2021年度中をめどに、虐待の定義についてガイドラインを定める予定です。
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施行通知
施行の直前、2020年5月28日付けで環境省から自治体に通知された「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の施行について」(施行通知)では、以下のように説明されています。(この通知は、地方自治法に基づく、国から自治体への「技術的な助言」に相当します)
16 獣医師による通報の義務化(第41条の2関係)
獣医師が、獣医療行為の一環として、動物のみだりな殺傷及び虐待を発見した場合の都道府県知事その他の関係機関への通報について、都道府県知事その他の関係機関がよりきめ細やかに情報を把握し虐待等の事案に的確に対応できるようにするため、改正法により、従来の努力義務が義務化されるとともに、通報の即時性の程度を明確にするために、「遅滞なく」と明記された。獣医師による義務の履行に的確に対応するためにも、都道府県知事その他の関係機関の通報窓口の獣医師への周知の徹底が必要である。なお、虐待等の判断に当たっては、飼育改善指導が必要な例(虐待に該当する可能性、あるいは放置すれば虐待に該当する可能性があると考えられる例)について(平成22年2月5日付け環自総発第100205002号環境省自然環境局総務課長通知)、動物の愛護及び管理に関する法律第44条第3項に基づく愛護動物の遺棄の考え方について(平成26年12月12日付け環自総発第1412121号環境省自然環境局総務課長通知)を参照されたい。
2019年改正法の概要 目次
● 第一種動物取扱業による適正飼養等の促進等
- 登録拒否事由の追加により欠格要件が強化されました
- 環境省令で定める遵守基準を具体的に明示する条項が入りました
(飼養施設の構造・規模、環境の管理、繁殖の方法等) - 販売場所が事業所に限定されます
- 生後56日(8週)を経過しない犬猫の販売規制が実現するも、例外措置が附則に
- 帳簿の備付けと報告の義務が犬猫等販売業から拡大
- 動物取扱責任者の条件が追加されました
- 勧告・命令違反の業者の公表と、期限についての条項が新設されました
- 廃業・登録取消後に立入検査や勧告等を行うことができる規定が新設されました
参考:2019年改正動物愛護法に入らなかったこと<動物取扱業>
● 動物の適正飼養のための規制の強化
● 都道府県等の措置等の拡充
- 動物愛護管理センターの業務を規定、自治体への財政上の措置も新設
- 動物愛護管理担当職員の配置は義務になり、市町村にも設置努力規定
- 動物愛護推進員は委嘱が努力義務に
- 所有者不明の犬猫の引取りを拒否できる場合等を規定
● その他