2019年改正動物愛護法:特定動物の愛玩飼養が禁止され、交雑種が新たに対象になります

2019年動物愛護法改正解説

特定動物の飼養及び保管の禁止(第二十五条の二)~許可の取消し(二十九条)

 ※下線が改正部分。条ズレによる改正部分は省略。

(特定動物の飼養及び保管の禁止)

第二十五条の二 人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれがある動物として政令で定める動物(その動物が交雑することにより生じた動物を含む。以下「特定動物」という。)は、飼養又は保管をしてはならない。ただし、次条第一項の許可(第二十八条第一項の規定による変更の許可があつたときは、その変更後のもの)を受けてその許可に係る飼養又は保管をする場合、診療施設(獣医療法(平成四年法律第四十六号)第二条第二項に規定する診療施設をいう。)において獣医師が診療のために特定動物の飼養又は保管をする場合その他の環境省令で定める場合は、この限りでない。

(特定動物の飼養又は保管の許可)
第二十六条 動物園その他これに類する施設における展示その他の環境省令で定める目的で特定動物の飼養又は保管を行おうとする者は、環境省令で定めるところにより、特定動物の種類ごとに、特定動物の飼養又は保管のための施設(以下この節において「特定飼養施設」という。)の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。

(許可の基準)
第二十七条 都道府県知事は、前条第一項の許可の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
一 飼養又は保管の目的が前条第一項に規定する目的に適合するものであること。
(略)

(許可の取消し)
第二十九条 都道府県知事は、特定動物飼養者が次の各号のいずれかに該当するときは、その許可を取り消すことができる。
(略)
一の二 飼養又は保管の目的が第二十六条第一項に規定する目的に適合するものでなくなつたとき。
(略)

附則

第四条 この法律の施行の際現に旧法第二十六条第一項の許可(同条第二項第三号の目的が第一条による改正後の法第二十六条第一項に規定する目的(以下この条において「特定目的」という。)であるものを除く。)を受けて行われている特定動物(旧法第二十六条第一項に規定する特定動物をいう。次項において同じ。)の飼養又は保管については、旧法第三章第五節の規定(これらの規定に係る罰則を含む。)は、この法律の施行後も、なおその効力を有する。

2 この法律の施行の際現に旧法第二十六条第一項の許可を受けている者は、特定目的で特定動物の飼養又は保管をする場合に限り、この法律の施行の日に第一条による改正後の法第二十六条第一項の許可を受けたものとみなす。

3 この法律の施行前にされた旧法第二十六条第二項の申請(同項第三号の目的が特定目的であるものに限る。)は、第一条による改正後の法第二十六条第二項の許可の申請とみなす。

特定動物とは、いわゆる危険な動物です。改正前の法律では、ライオンやクマ、毒ヘビ、大型の猛禽など、特定動物として指定されている650種ほどの動物について、飼育設備の条件をクリアして許可を得れば、誰でも「ペット」として飼育することができました。

しかし私たち3団体は、特定動物は本来、みな野生動物であり(家畜種は特定動物に指定されていません)、愛玩飼養では十分な飼養環境を与えられず極めて不適切な状況に陥りやすいうえ、災害時に同行避難させることも非常に困難であるとして、愛玩目的での飼育禁止を求めて活動を継続しました。

当初、獲得目標をとても高いところに置いたかもしれないと思っていましたが、無許可飼育の摘発もしばしば起きており、ペットショップや個人飼育での死亡事故も起きていること、また常識としてライオン等を個人で飼えるのはおかしいということを多くの議員が理解してくださり、最終的に改正が実現しました。

画期的なことです。

条文上も、飼育自体が原則禁止となり、展示や環境省令で定める目的で飼育する場合のみ、飼養・保管許可が出ることになりました。飼育目的については、さらに決議の中で、「娯楽、触れ合い等を目的とした飼養・保管を規制する措置も含めた規制の在り方を検討すること」ともされました(下記参照)。

既に許可を受けている施設で改正前から飼育されている動物については、附則によって、飼育を継続できることが定められています。

また、交雑個体についても、危険性は変わらない上に交雑させたほうが体が大きくなるような場合すらあるにもかかわらず、規制対象外となっているのは問題であるし、交雑種の飼育が実質的な規制逃れとなっていると指摘してきたところ、これについても規制対象に含まれることになりました。

ほか、細かい要望もしていたのですが(改正の背景参照)、これらについては法律には入りませんでしたので、今後の政省令等改正で要望していくつもりです。

飼養・保管許可を受けることのできる飼養の目的については、施行規則によって定められました。

※愛玩飼養が禁止であることは、法律案要綱に明確に書かれています。

動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律案要綱
二 特定動物に関する規制の強化
1 特定動物の愛玩目的での飼養又は保管を禁止すること。(第二十五条の二関係)
2 特定動物が交雑して生じた動物を規制対象に追加すること。(第二十六条第一項関係)

※また、衆議院環境委員会において、西岡秀子議員(国民民主党)が質問をしており、法案提案者である小宮山泰子委員(国民民主党)が「愛玩目的の飼育は禁止という理解、そのとおりでございます」と答弁しています。

動物福祉:決議/附帯決議でウェルフェアについても言及されました!

衆参両院の決議/附帯決議には、以下のように書き込まれました。決議は、改正における国会の意思を表明するもので、法的拘束力はありませんが、法律の運用にあたり行政府が参考にすべきことを示すものです。ここにアニマルウェルフェアについても書き込まれましたので、特定動物の低福祉・不適切飼養が改善されていくことを期待しています。

七 特定動物の飼養・保管の許可については、人体への危害の防止、住民不安の解消、災害時の対策等の観点から、娯楽、触れ合い等を目的とした飼養・保管を規制する措置も含めた規制の在り方を検討すること。また、飼養施設の強度を担保し逸走防止策を図るだけではなく、移動檻での常時飼育などの不適切な扱いを防止し、特定動物のアニマルウェルフェアについても指導、監視できるよう検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。

交雑種規制:少なくとも親のどちらか片一方が特定動物なら特定動物となる

※2020年3月2日から、特定動物の交雑種の愛玩飼養について許可申請ができるようになる経過措置が施行されています。(5月31日まで)

第198回国会で松原仁衆議院議員から提出された「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律」に定める特定動物に関する質問主意書の質問の二に対する答弁により、交雑種については、親のいずれか片一方が特定動物であれば、改正後は規制の対象となることが確認されました。(改正時に公表された概要に特定動物同士とあったものは訂正されるとのこと)

質問の一は、ボアコンストリクターの指定外しを想定しての質問と思われますが、国はリストを変更することは考えていないと答弁しています。ボアコンストリクターについては、前回の法改正後に検討されたものの、指定を外さないことが決定された経緯があります。詳細はこちら

「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律」に定める特定動物に関する質問主意書

今国会において、「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、特定動物の飼養・保管に関する規制も強化される見込みとなった。
今般の法律等の改正によって、特定動物については、第二十五条の二において「人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれがある動物として政令で定める動物(その動物が交雑することにより生じた動物を含む。以下「特定動物」という。)は、飼養又は保管をしてはならない」とされ、「愛がん」(いわゆる「ペット」)目的での飼養・保管が禁止され、特定動物の交雑種に対する規制が導入されることによる規制の強化が見込まれている。
現行の「動物の愛護及び管理に関する法律」では、特定動物に該当する純血種のみが規制対象とされており、「愛がん」目的による飼養・保管も許可を得ることにより認められている。
そこで、次のとおり質問する。

一 現行政令に定められる特定動物リストには、前回法改正時(平成二十四年度)に有識者からなる検討会において削除検討が答申されたにもかかわらず、環境省の判断により未だに掲載が継続され規制の対象となっているもの(種)がある。
今回の改正で、「愛がん」目的での飼養・保管が禁止された特定動物について、特定動物リスト掲載種を改めて見直し、真に「愛がん」目的による飼養・保管が危険極まりない種のみを厳選する必要があるのではないか。少なくとも有識者により削除検討が答申された危険性が低い動物種については特定動物リストから速やかに削除し、国民がペットを飼育する自由に対する過度な制限を回避するべきであると考えるが、政府の見解をお聞かせいただきたい。

一について

御指摘の「特定動物」については、動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第三十九号。以下「改正法」という。)第一条の規定による改正前の動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号。以下「法」という。)第二十六条第一項において、「人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれがある動物として政令で定める動物」として、その飼養又は保管に都道府県知事の許可を要すると定めていたところ、その規制を強化する観点から、その改正後の法第二十五条の二においては、特定動物の定義について、その基本的枠組みを維持しつつ、「人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれがある動物として政令で定める動物」が交雑することにより生じた動物についても特定動物の範囲に含めるとともに、特定動物の愛玩目的での飼養又は保管が禁止されることとなった。
このような特定動物に係る規制を強化する改正法の趣旨を踏まえ、政府としては、御指摘の「現行政令に定められる特定動物リスト」を変更することは考えていない。

二 現行法令では、特定動物同様もしくはそれ以上に危険性を孕むワニガメ(特定動物)とカミツキガメ(特定外来生物と規定され「特定動物」ではない)の交雑種や、別種のワニ(ワニは全てが特定動物に指定されている)から生じる交雑種が規制対象から外れている。
今般の法等改正では、特定動物が関わる交雑種も規制対象とされる見込みであるが、交雑種が意味するものは、「親個体のどちらか一方でも特定動物であれば、規制対象とする」との理解で相違ないか。

二について

改正法第一条の規定による改正後の法第二十五条の二において、「その動物が交雑することにより生じた動物」も特定動物に含まれると規定されたことにより、親個体のどちらか一方でも当該「その動物」であれば、規制対象となるものと理解している。

施行規則改正により飼養保管できる目的が決められました。

この改正に伴い施行規則が改正され、飼養・保管許可を受けることのできる飼養の目的について、下記のように定められました。

動物の愛護及び管理に関する法律施行規則

(特定動物の飼養又は保管を行う目的)
第十三条の二 法第二十六条第一項の環境省令で定める目的は、次に掲げるものとする。

一 動物園その他これに類する施設における展示

二 試験研究又は生物学的製剤、食品若しくは飲料の製造の用

三 生業の維持

四 次に掲げる要件に該当する特定動物の個体の飼養若しくは保管に係る許可の有効期間の満了又は当該許可に係る法第二十六条第二項第二号から第七号までに掲げる事項の変更(イに該当する特定動物の飼養又は保管の許可に係る都道府県知事が管轄する同一の区域内における同項第四号に掲げる事項の変更を除く。)の際現に当該許可を受けた者が飼養又は保管をしている当該個体に係る特定目的以外の目的
イ 動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第三十九号。以下「令和元年改正法」という。)附則第四条第一項の規定によりなおその効力を有ることとされた令和元年改正法第一条の規定による改正前の法第二十六条第一項の規定による許可に係る特定動物
ロ 動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令(令和元年政令第百五十二号)第三条第五項前段の規定による許可に係る特定動物

五 法第二十六条第一項の許可を受けて特定動物の飼養又は保管を行う者が死亡した場合であって、当該者が死亡した日から六十日を経過した後において相続人が行う当該個体の飼養又は保管六前各号に掲げるもののほか、動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害並びに生活環境の保全上の支障を防止することその他公益上の必要があると認められる目的

また、これまでは「飼養又は保管の許可を要しない場合」として動物病院や警察等11項目が定められていましたが、今回の改正で原則飼育禁止となったことから、ここの部分の表現が「飼養又は保管の禁止の適用除外」に変更になりました。

さらに、遺失物として特定動物を扱う場合、改正前は、警察しか適用除外に含まれていませんでしたが、今回、施行規則の改正により、国の職員も許可なく扱うことができるようになりました。遺失物法第三十五条第一号に「法令の規定によりその所持が禁止されている物(法令の規定による許可その他の処分により所持することができる物であって政令で定めるものを除く。)」については、国に所有権が帰属するという定めがあり、無許可で飼育されている特定動物も、拳銃などと同じように国に所有権が移るためです。

ここで言う、国の職員とは、環境省が全国に置く地方環境事務所の職員が想定されているとのことです。

動物の愛護及び管理に関する法律施行規則

(飼養又は保管の禁止の適用除外)
第十三条 法第二十五条の二の環境省令で定める場合は、次に掲げるものとする。
一~九(略)
十 国の職員が遺失物法(平成十八年法律第七十三号)の規定に基づく業務に伴って特定動物の飼養又は保管をする場合
十一・十二(略)

また、改正施行規則公布と同時に公表された「動物の愛護及び管理に関する法律施行規則の一部を改正する省令及び環境省関係告示の整備に関する告示について」には、概要として以下のように書かれています。

(6)特定動物の飼養及び保管の禁止の特例(第13条関係)

特定動物の愛玩目的等の飼養又は保管が禁止されたところ、非常災害時に対応する場合等公益上必要があるものについて禁止の特例として規定するとともに、国の職員が遺失物法に規定に基づく業務に伴って飼養又は保管を行う場合について規定する。

(7)特定動物の飼養又は保管の目的(第13条の2(新規)関係)

特定動物の飼養及び保管の禁止の特例となる「環境省令で定める目的」として、
・動物園その他これに類する施設における展示
・試験研究又は生物学的製剤、食品若しくは飲料の製造の用
・生業の維持
・改正法施行の際現に愛玩目的等で特定動物(交雑種含む)の飼養等を行う者について、許可の有効期間が満了したとき又は特定飼養施設の所在地変更等の事由が生じたときに、同様の目的で継続的に当該個体を飼養又は保管する場合
・特定動物の飼養又は保管を行う者が死亡した場合であって、相続人が継続して飼養又は保管を行う場合
・動物による生活環境の保全上の支障を防止すること等、その他公益上の必要があると認められる目的

施行通知

施行の直前、2020年5月28日付けで環境省から自治体に通知された「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の施行について」(施行通知)では、以下のように説明されています。(この通知は、地方自治法に基づく、国から自治体への「技術的な助言」に相当します)

9 特定動物の飼養又は保管に係る規制強化等(第25条の2から第33条まで関係)

法第25条の2において、人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれがある動物として政令で定める動物(その動物が交雑することにより生じた動物(以下「交雑種」という。)を含む。以下「特定動物」という。)について飼養又は保管が禁止され、特定動物が交雑することにより生じた交雑種も特定動物として規制対象に追加された。

ただし、法第26条第1項の環境省令で定める目的で特定動物の飼養又は保管を行う場合は、都道府県知事の許可を受けることにより飼養又は保管が可能とされた。この環境省令で定める目的は、施行規則第13条の2において公益上必要な場合等が規定されているが、従来認められてきた愛玩飼養等の目的の飼養又は保管は当該目的の対象外とされた。

さらに、飼養又は保管の禁止の適用除外事項として、施行規則第13条において、国の職員が遺失物法(平成18年法律第73号)の規定に基づく業務に伴って特定動物の飼養又は保管を行う場合が追加された。

なお、改正法により、愛玩飼養等の目的で特定動物を飼養又は保管することができなくなること、新たに交雑種が規制対象となることに伴い、改正法の施行の際現に改正法による改正前の法に規定する特定動物やその動物の交雑種を飼養又は保管している者に対する経過措置が必要となる。これについては、動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令等の一部施行(特定動物の飼養又は保管の許可に関する経過措置関係)について(令和2年5月1日環自総発第2005011号環境省自然環境局長通知)の内容を参照されたい。また、改正法の施行日以後の許可申請に関して、交雑種の範囲や法第26条第1項の環境省令で定める目的についての規定内容及びその解釈についても、同通知の内容を参照されたい。

改正の背景

PEACEでは、以下のような問題点を指摘する資料を作成し、国会議員へ改正を訴えました。

現行(改正前)の規制の問題点

  • 個人でも、いわゆる「ペット・愛玩」目的で飼養・保管許可が出る。
  • 飼育経験や知識は問われない。誰でも飼える。
  • 室内であれば一重扉での飼育でもOK。
  • 移動も許可を受けた檻・容器等で行う必要があるが、爬虫類業者間などでは、販売時に宅急便で送られることもある。
  • 特定動物の移動には通過する自治体すべてに通知書を提出する必要があるが、取引時に違反が多いと思われる。(堀井動物園のキリンやボアコンストリクターの事例等)
  • 交雑種が指定されておらず、規制逃れになっている。
    • シャムワニ×イリエワニ:交配によって体が大きくなるにもかかわらず規制対象外
    • オオカミ犬(オオカミ×犬):オオカミを犬と偽って輸入・販売する事業者・飼育者が規制逃れをしている問題がある(犬に近いオオカミ犬を特定動物とするのは反発もあると思われるが、農林水産省は動物検疫において犬と掛け合わせた雑種第一代のみ犬とみなしており、このルールに合わせればよいのではないかと思われる)
      • 事例)2015年7月 北海道遠軽町でオオカミ疑いのオオカミ犬を含む4匹の犬(オオカミ犬)に千葉県のブリーダーが襲われ、死亡。
    • 猛禽ではイヌワシの交雑種など
  • 哺乳類・鳥類・爬虫類以外は対象外となっている。サソリ・毒ぐもなど有毒生物が含まれていない。
    • 事例)2017年1月 滋賀県守山市の「めっちゃさわれる動物園」がショッピングモール内でダイオウサソリを逃がした

個人飼育における問題点

  • 規制は逸走防止に主眼が置かれており、狭く、動物福祉にかなわない環境で飼育されることになる。
  • 災害時に同行避難ができない。安全上の懸念が生じる。
  • 個人情報保護の観点から非公開の情報が多く、市民の安全が優先されない。
  • 窓から大蛇などが見えるだけでも苦情が入るのが実情。

※インターネット上に動画があり無許可飼育と推定されるが摘発できなかった事例などについても紹介。

動物取扱業における問題点

  • 現行法は業規制とリンクしていない。
    ⇒逸走・事故等の場合に、営業停止・登録取消ができるように制度を改めるべき
  • 人の生命・身体に危険が及ぶ可能性があるにもかかわらず、餌やりや接触、安易な展示・輸送が許されている。
    • 事例)クマへの餌やり体験(事故例あり)、ゾウ・ライオン・トラ・クマ等と一緒に写真を撮るサービス(母親からの早期引き離しの問題が指摘されている)、住宅展示場等の移動動物園での展示(簡易な移動檻での展示になる)、等
  • 現行の特定飼養施設の基準の細目第二条各項に「又は移動用施設のいずれかであること」とあり、移動用施設での常時飼育が許可されている。
    ⇒動物福祉の観点から許されない飼育状況であり、移動檻での常時飼育を不可とすべき。

    • 事例)ボリショイサーカスのクマの檻、木下サーカスのゾウ、ライオンの飼育設備
  • 現在は、飼育個体が死亡等でいなくなっても、許可はなくならないため、いつでも次の個体を入手可能。行政には入手後30日以内に届出ればよいため、問題のある事業者の場合であっても、数の増加の把握を自治体が事前にすることができない。どこから入手し、どこに譲られたのか等の履歴も把握されていない。安易な飼育開始を防止するには、飼育個体の把握とトレーサビリティの確立が必要。
    • ライオンによる人身事故を起こした「湘南動物プロダクション」では、10年以上ライオンの増減届の提出を怠っていたことが同時に発覚。自治体は数を把握していなかった。(2017年)
    • 滋賀の「めっちゃさわれる動物園」は3×4メートルの狭い強化ガラス檻でライオンを展示していた。頭を打ち付け出血した写真がインターネットで炎上(2017年)。ライオンをどこかへ移したが、どこへ行ったかわからなかった(現在は判明している)。そもそもどこの業者から入手したか不明である。

事件・事故

環境省統計:特定動物による人身事故件数

※環境省では、毎年発行している「動物愛護管理行政事務提要」で、動物による事故事例を報告しており、その中には毎年特定動物によるものも掲載されています。下記の表は、環境省が3年分の数字をまとめた表です。

環境省中央環境審議会動物愛護部会(第48回)「動物愛護管理をめぐる主な課題への対応について」より(平成25年4月~28年3月まで)

※以下、前回の法改正の時期以降の主な特定動物関連の事件・事故事例です

ペットショップ・愛玩飼養での死亡事故例

※愛玩飼養が許されているということは、ペットショップでの特定動物の取扱いも行われるということになる。

2012年 4月15日 茨城県牛久市
ペットショップで飼育されていたアミメニシキヘビにより、経営者の父親が死亡

2016年10月15日 長野県安曇野市
愛玩飼養のクマにより、1人死亡・1人軽傷

2018年12月 2日 茨城県取手市
愛玩飼養のクマにより、飼育のために雇われていたアルバイトが死亡

愛玩飼養での逸走例

2018年10月10日~19日 茨城県稲敷市 イヌワシが逃げ、戻る

愛玩飼養目的の無許可飼育事例

2014年2月20日書類送検(報道あり)
大阪市阿倍野区の会社員が自宅でボアコンストリクターやアメリカドクトカゲなど計25匹を無許可飼育。ヘビが逃げたことで発覚。販売した岡山のペットショップも後日、摘発

2015年8月3日書類送検(報道あり)
新潟県村上市の市議と親族の男性がツキノワグマを無許可飼育。

2015年11月19日発覚(自治体が刑事告発・報道なし)
福島県 ニホンザルの無許可飼育

2016年 1月28日発覚(自治体が刑事告発・報道なし)
熊本市 ワニガメ等の無許可飼育

2016年6月8日逮捕(報道あり)
埼玉県三郷市の配管工がボアコンストリクターとメガネカイマンを自宅で無許可飼育

2016年6月20日発覚(自治体が刑事告発・報道なし)
熊本市 ワニガメの無許可飼育

2016年9月9日書類送検(報道あり)
江戸川区のペットショップ店員がビルマニシキヘビやボアコンストリクター等6匹を自宅で無許可飼育

2019年 1月30日逮捕(報道あり)
大阪府 爬虫類ショップの店長がガボンアダーなどを自宅にて無許可飼育

第一種動物取扱業登録業者の重大事故例

  • 2012年、3回目の動物愛護法改正成立の直前に「秋田八幡平クマ牧場」での従業員死亡事故が発生。検討が間に合わず。
  • 4回目の法改正が検討されていた約2年間の間に、特に重大事故が続いており、環境省が通知を2回出している。(1回目2回目

2012年10月16日 富士サファリパーク  ゾウにより従業員死亡
2016年 8月16日 群馬サファリパーク  クマにより従業員死亡
2016年12月10日 富士サファリパーク  サイにより従業員重傷
2017年 1月23日 湘南動物プロダクション ライオンにより経営者ら2名重傷
2017年 2月27日 小諸市動物園     ライオンにより従業員重傷
2017年 3月12日 アドベンチャーワールド ゾウにより従業員死亡
2017年8月30日 群馬サファリパーク   ゾウにより研修生重傷
2018年10月 8日 平川動物公園      ホワイトタイガーにより従業員死亡

接触事故では措置命令事例あり

2014年7月6日 須坂市動物園
クマへの餌やり体験で6歳の児童がクマに指をかまれ負傷。「第三者が容易に当該特定動物に接触しないよう措置を講じること」との措置命令が出る。

第一種動物取扱業登録業者の脱走例

2012年 4月20日 八幡平クマ牧場 死亡事故時にヒグマが逸走、射殺
2012年 1月15日 東山動植物園  ニホンザルが逃げ、住宅街で捕獲
2012年 7月19日 いしかわ動物園 オランウータンが作業通路に出る
2013年 5月14日 福知山市動物園 ニホンザルが逃げ、行方不明
2015年 5月 5日 東山動植物園  マレーグマが飼育場から出そうに
2015年10月 5日 沖縄こどもの国 ツキノワグマが園内で脱走、捕獲
2015年11月 7日 沖縄こどもの国 前月と同じツキノワグマが園内で脱走、捕獲
2016年 4月14日 八木山動物公園 チンパンジーが園外へ脱走、捕獲
2017年10月26日 釧路市動物園  クマタカが逃げ、捕獲
2018年 5月28日 円山動物園   チンパンジー2頭が飼育員用の通路等に脱走
2018年9月、10月、11月 富山市ファミリーパーク ニホンザル脱走が3回続いた
2019年 4月 4日 フェニックス動物園 チンパンジーが脱走、捕獲
2019年6月27~29日 沖縄こどもの国 ニホンザル(ヤクザル)14匹脱走、捕獲
2019年6月28日~7月7日 福知山動物園 ニホンザルが逃げ、捕獲

第一種動物取扱業登録業者の違反事例

2014年5月29日書類送検
ボアコンストリクターを無許可飼育者へ販売した岡山のペットショップが、許可飼育数違反(許可数を上回る数飼育した)として書類送検された。

2015年9月発覚
堀井動物園によるハクトウワシ、アビシニアコロブスの無許可飼育が発覚した。現在裁判中(⇒その後、有罪が確定しました)

2019年4月逮捕報道
有名爬虫類ショップ店長とフリーライターの男の2名が奄美大島での密猟や特定動物に関する違反等で逮捕された事件で、トカラハブ9匹を無許可で移動させていた。

関連記事

幽閉された動物たちによる対人事故商業的に野生動物などの動物と直接触れ合わせる行為は、動物福祉の観点から問題があるだけでなく、人にケガをさせたり、そこから病原体を感染させたりすることからも問題があります。このページでは、過去の動物触れ合い[…]

自治体条例について

特定動物の規制については、もともと全国の自治体に危険動物の条例が広がったことから国の法律改正に至った経緯があり、現在も自治体の条例に特色がみられます。

関連記事

動物の展示や触れ合いサービス等で起きた対人事故についてまとめたページがなかったので、新たに「幽閉された動物たちによる対人事故」のページをつくりました。関連するページは、ここからたどれるようにしていきます。[sitecard subt[…]

マゼランペンギンの歯

その他関連ページ

【埼玉県】クマを用いる獣猟競技会

➡改正動物愛護法に関するページに戻る
2019年改正 動物愛護管理法 2020年 2021年 施行

2019年改正法の概要 目次

● 動物の所有者等が遵守すべき責務規定を明確化

● 第一種動物取扱業による適正飼養等の促進等

参考:2019年改正動物愛護法に入らなかったこと<動物取扱業>

● 第二種動物取扱業に帳簿の備付け義務

● 動物の適正飼養のための規制の強化

● 特定動物(危険動物)に関する規制の強化

● 動物虐待に対する罰則の引き上げ

● 都道府県等の措置等の拡充

● マイクロチップの装着等

● その他

● 附則

活動分野別コンテンツ

活動報告ブログ

NO IMAGE

動物の搾取のない世界を目指して

PEACEの活動は、皆さまからのご寄付・年会費に支えられています。
安定した活動を継続するために、活動の趣旨にご賛同くださる皆さまからのご支援をお待ちしております。

CTR IMG