2019年改正動物愛護法解説:関係機関との連携に畜産部局・公衆衛生部局等も追加

2019年動物愛護法改正解説

地方公共団体への情報提供等(第四十一条の四):
関係機関との連携に畜産部局・公衆衛生部局等も追加されました


(地方公共団体への情報提供等)
第四十一条の四 国は、動物の愛護及び管理に関する施策の適切かつ円滑な実施に資するよう、動物愛護担当職員の設置、動物愛護担当職員に対する動物の愛護及び管理に関する研修の実施、動物の愛護及び管理に関する業務を担当する地方公共団体の部局と都道府県警察の連携の強化、動物愛護推進員の委嘱及び資質の向上に資する研修の実施等に関し、地方公共団体に対する情報の提供、技術的な助言その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。下向き矢印 ※改正部分に下線。
(地方公共団体への情報提供等)
第四十一条の四 国は、動物の愛護及び管理に関する施策の適切かつ円滑な実施に資するよう、動物愛護管理担当職員の設置、動物愛護管理担当職員に対する動物の愛護及び管理に関する研修の実施、動物の愛護及び管理に関する業務を担当する地方公共団体の部局と畜産、公衆衛生又は福祉に関する業務を担当する地方公共団体の部局、都道府県警察及び民間団体との連携の強化、動物愛護推進員の委嘱及び資質の向上に資する研修の実施、地域における犬、猫等の動物の適切な管理等に関し、地方公共団体に対する情報の提供、技術的な助言その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

畜産動物については、農場やと畜場等において一般化してしまっている暴力行為をなくすことを目的として、3団体として次の3点を求めました。

  • 産業動物の章を新たに設ける。
  • 「産業動物の飼養及び保管に関する基準」を国際基準に沿ったものに改訂し、それを遵守義務とする。
  • 「地方公共団体への情報提供等」(第41条の4)の連携機関に「家畜保健衛生所、食肉衛生検査所及び畜産振興及び家畜衛生を担当する地方公共団体の部局」を加える。

実験動物と同様、畜産動物についても十分に議論されることがなく、まさに議論の時間がとられていないことが理由で新設条項についての骨子案への盛り込みが見送られたことは非常に遺憾でした。次の改正では必ず検討を行うべきですが、なんと附則の検討事項からも、最後の最後に落とされてしまいました。

しかし、畜産動物に関する私たちの要望の3点目の連携機関の追加については、無事、畜産、公衆衛生改正に関する業務を担当する地方公共団体の部局が追加されましたので、一定の達成が実現しました。今後、「動物愛護法は我々と関係がない」との態度が改まるような具体的な連携のあり方を構築することを求めていく必要があります。

ちなみに、畜産動物を扱う施設に対しては、家畜伝染病予防法により、毎年ある決まった日時点の飼養数頭・羽数等を含む情報について、届出が義務付けられています。移動動物園等、展示施設もこの書類を提出しています。家畜保健衛生所は、一定の範囲の家畜種については全飼養施設を把握しており、この届出に基づいた立入りを毎年行っています。

この届出情報について動物愛護部局と共有することは可能かと超党派議連の動物愛護法改正PTのヒアリングの場で質問したところ、農林水産省は可能と回答しました。

ちなみに、実験動物に関しては、このようにウェルフェア上の指導監視を行うために活用できそうな情報を把握している部局は存在しません。動物愛護法で畜産部局との連携が定められたことにより、実験動物については、動物愛護部局以外に動物福祉に関与できそうな部局が存在しないことが、より明確になりました。(実験動物については連携先は特にないため、要望していませんでした)

関係機関との連携の条文には、民間団体も追加されました。

改正後の動向

農林水産省が通知「アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の基本的な考え方について」を改訂しました。動物愛護法改正を受けて、内容が更新されました。詳細は下記のページをご覧ください。

条文の解釈について

国会会議録から、人間の福祉部局との連携について関係する部分を掲載します。また、施行通知も参照ください。

第198回国会 参議院環境委員会 第9号 令和元年6月11日

※審議が行われた議事録より該当箇所
(参議院の委員会ですが、法案提出者である衆議院の国会議員が答弁しています)

○武田良介君 時間が来ていますので、最後に、多頭飼育崩壊に関わって一問聞かせていただきたいと思うんですが、今回の法改正では、二十五条ですか、周辺の生活環境が損なわれている事態に対する措置ということも規定されておりますし、三十七条のところで、適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるようなおそれがあると認める場合の不妊の手術その他の措置をするように努めなければならないというような規定があるというふうに思います。

私はさらに、その飼い主に対する人間の福祉の観点からの支援ということも大切になるのではないかということを考えております。例えば、保健師の方とか精神保健福祉士の方、あるいは消防だとか環境汚染の問題の専門家の方だとか、こういった方と連携した形での支援、自治体の動物以外の部署も協働した支援が大切ではないかというふうに思っております。

今回の法改正で、多頭飼育崩壊に陥ってしまうようなそういう飼い主に対する支援、動物愛護の部署だけではない広く連携した支援というのは今回の法改正で拡充されるものなのでしょうか。

○衆議院議員(小宮山泰子君) 御指摘のとおり、飼い主が犬や猫を増やし過ぎて世話ができなくなるいわゆる多頭飼育崩壊が全国各地で問題となっております。この問題は、地域から孤立した単身高齢者など関わるケースが多いということも明らかになってきております。

対応に当たっては、社会福祉分野との連携は重要でありますし、今回の法改正では、動物の愛護及び管理に関する業務を担当する地方公共団体の部局と福祉に関する業務を担当する地方公共団体の部局による連携の強化について、国が情報の提供、技術的な助言等に努めるとしております。政府においては、情報の提供、技術的な助言等に努め、動物愛護担当者や福祉部局の連携が強化されるように心掛けることを望んでおります。

○武田良介君 先日の日経新聞にも、ペット多頭飼育崩壊を防げということで記事が掲載されておりました。ここでは例えば長野市の取組ということで紹介もありまして、長野市では、その多頭飼育している高齢者の自宅を訪問する際に、動物愛護の担当者のほかに、ケアマネジャーだとか、その福祉職の方が実際に同行されているということでありました。生活を立て直すためにどうすべきかという視点から説得するのが福祉職の方の役目であるということでありました。動物と福祉の部署の情報共有、早期対応を心掛けているということで紹介がされておりました。

こういう取組がまた引き続き大事になってくるというふうに思いますし、今回の法改正が動物愛護に更に資するように、不適正飼養や多頭飼育の問題を含めて資するようになることを願いまして、私からの質問を終わらせていただきたいと思います。

施行通知

施行の直前、2020年5月28日付けで環境省から自治体に通知された「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の施行について」(施行通知)では、以下のように説明されています。(この通知は、地方自治法に基づく、国から自治体への「技術的な助言」に相当します)

17 関係機関の連携強化(第41条の4関係)

国が地方公共団体に対して行う情報提供、技術的助言その他の必要な施策を講ずる努力義務の事項に、①畜産、公衆衛生又は福祉に関する業務を担当する地方公共団体の部局、民間団体との連携の強化に関する事項と②地域における犬、猫等の動物の適切な管理等に関する事項が追加された。動物の愛護及び管理に関する施策の対象は、広範かつ多岐にわたっており、施策の効果的な実施に当たっては、多様な関係機関・部局間の連携によって、それぞれの有する専門的な知識、技術、経験、関係者の情報や現場訪問の機会等を最大限活用し、動物の愛護及び管理とこれに関連する各種の社会課題の同時解決を図る視点が必要である。こういった観点から、これまでの都道府県警察との連携に加え、今般、①の規定は、産業動物の適正な取扱いの確保には畜産や公衆衛生を担当する部局との連携、多頭飼育問題への効果的な対応には社会福祉部局との連携、所有者不明の犬猫の取扱いや引き取った犬猫の譲渡の推進には民間団体との連携の強化が重要であることから設けられた。併せて、②の規定は、例えば、地域猫活動等の地域における動物の適切な管理に関する事例の共有等が必要であるため設けられた。

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2019年改正 動物愛護管理法 2020年 2021年 施行

2019年改正法の概要 目次

● 動物の所有者等が遵守すべき責務規定を明確化

● 第一種動物取扱業による適正飼養等の促進等

参考:2019年改正動物愛護法に入らなかったこと<動物取扱業>

● 第二種動物取扱業に帳簿の備付け義務

● 動物の適正飼養のための規制の強化

● 特定動物(危険動物)に関する規制の強化

● 動物虐待に対する罰則の引き上げ

● 都道府県等の措置等の拡充

● マイクロチップの装着等

● その他

● 附則

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