人工知能(AI)に置き換わる動物実験

近年、何かと、もてはやされている人工知能(AI)。動物実験をなくしていく道のりにおいても、重要な役割を果たすと考えられています。

AIは創薬に何をもたらすか

新薬の候補物質を探索するのに、かつては、片っ端から動物で試して選択していくことが行われ、おびただしい数の動物の犠牲が払われました。現在は徐々に、候補物質の構造から効能をある程度予測したり、インビトロ試験(動物ではなく培養細胞などを使う試験法)を活用したりして、動物の使用を減らす方向にあります。

そして、その方向性を、より強めるのがAI技術です。

公益財団法人医療科学研究所が主催し、厚生労働省の後援で行われた産官学シンポジウム2019「AIは創薬に何をもたらすか-日本の強みをどう生かすか-」の講演では、厚生労働省の浅沼一成厚生科学課長(当時)が、このように述べました。

これらの研究開発が全部進みますと,従来手法のように動物実験で選ばれた創薬ターゲットを推定し,臨床研究で取り組んでいくという成功確率が低かった創薬から,AIを活用した患者情報からデータサイエンスで選ばれた創薬ターゲットを 推定し,臨床研究で取り組んでいく新手法に基づく成功確率が高い創薬に変わっていくことが期待できます(資料3-18)
下記の図を見れば一目瞭然ですが、動物実験を「不確実な創薬」と断じ、新手法として、AIによる創薬ターゲットの探索を示しています。動物実験による研究開発は、「ネズミ等の疾患モデルには有効だが、ヒト(臨床試験)での成功確率が低い」と、国にも認識されています。
動物実験は、人間では効くが動物では効かない薬を、開発の初期の時点で候補から除いてしまいます。ヒトの生物学を基礎とする、新しい方法論が必要なのです。

出典:「AIは創薬に何をもたらすか―日本の強みをどう生かすか―

AI-SHIPS(毒性関連ビッグデータを用いた人工知能による次世代型安全性予測手法)プロジェクト

安全性試験(毒性試験)分野でもAIの活用が期待されています。経済産業省は、動物実験の代替にAI技術を活かすプロジェクトに予算を出しています。

日本が有するこれまでの毒性試験データやAI技術を活用し、コンピューターモデル予測をしようとする日本初の試みとして、意義があるものです。こちらは、工業製品等に使われる化学物質の毒性に関するプロジェクトになります。

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