私立大の獣医学教育で実習に用いられている動物の数/代替法の採用の有無

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国立大学については実験計画書の開示請求ができますが、私立大学についてはできません。しかし、一般社団法人日本私立獣医科大学協会が公表している相互評価の報告書で、実習での動物利用の概要を知ることができました。相互評価のページに2018年6月に公表された資料から抜粋してご紹介します。

各大学の実習科目 ※臨床実習を除く

臨床実習を除いた実習科目の一覧は各大学以下の通り。
ただし、必ずしも動物の生体を用いるとは限らない。(細胞を用いるものや器具の扱いだけと思われる場合もある)
詳細はシラバスで確認できるが、使用する動物種等不明の場合もある。

酪農学園大学

シラバス

導入・基礎分野
 獣医解剖学実習
 獣医組織学実習
 獣医生化学実習
 獣医生理学実習
 獣医生理学実習
 獣医薬理学実習
 獣医核医学基礎実習
 実験動物学実習

病態分野
 獣医ウイルス病学実習
 獣医細菌病学実習
 獣医寄生虫病学実習
 獣医病理学実習
 獣医免疫学実習

応用分野
 食品衛生学実習
 環境衛生・毒性学実習
 人獣共通感染症学・獣医疫学実習
 獣医衛生学実習
 ハードヘルス学実習

北里大学

シラバス

導入・基礎分野
 獣医解剖学実習Ⅰ
 獣医解剖学実習Ⅱ
 獣医解剖学実習Ⅲ
 獣医生理学実習Ⅰ
 獣医生理学実習Ⅱ
 獣医生化学実習
 獣医薬理学実習Ⅰ
 獣医薬理学実習Ⅱ
 実験動物学実習

病態分野
 獣医病理学実習Ⅰ
 獣医病理学実習Ⅱ
 獣医臨床病理学実習
 獣医細菌学実習
 獣医ウイルス学実習
 獣医感染症学実習
 獣医寄生虫病学実習

応用分野
 獣医衛生学実習
 獣医公衆衛生学実習Ⅰ
 獣医公衆衛生学実習Ⅱ
 鳥類疾病学実習
 毒性学実習

日本獣医生命科学大学

シラバス

導入・基礎分野
 獣医解剖学実習
 獣医組織発生学実習Ⅰ
 獣医組織発生学実習Ⅱ
 獣医生理学実習
 獣医生化学実習
 獣医薬理学実習
 実験動物学実習

病態分野
 獣医病理学実習Ⅰ
 獣医病理学実習Ⅱ
 獣医微生物学実習Ⅰ
 獣医微生物学実習Ⅱ
 獣医寄生虫病学実習

応用分野
 動物衛生学実習Ⅰ(牧場実習含む)
 動物衛生学実習Ⅱ(牧場実習含む)
 動物衛生学実習Ⅲ(牧場実習含む)
 公衆衛生学実習Ⅰ(人獣共通感染症・環境衛生)
 公衆衛生学実習Ⅱ(食品衛生)
 毒性学実習

麻布大学

シラバス

導入・基礎分野
 獣医解剖学実習
 獣医組織学実習
 獣医生理学実習Ⅰ
 獣医生理学実習Ⅱ
 獣医生化学実習

病態分野
 獣医寄生虫学実習
 獣医薬理学実習
 獣医微生物学実習
 獣医病理学実習

生産分野

 牧場実習
 家畜伝染病学実習
 家畜衛生学実習
 獣医臨床繁殖学実習
 産業動物獣医総合臨床
 産業動物臨床実習

臨床分野
 獣医内科学実習
 獣医外科学実習
 獣医放射線学実習
 小動物臨床実習

環境分野
 実験動物学実習
 毒性学実習
 獣医公衆衛生学実習

日本大学

シラバス

導入・基礎分野
 獣医解剖学実習
 獣医組織学実習
 獣医生理学実習
 獣医生化学実習
 獣医薬理学実習
 実験動物学実習
 牧場実習

病態分野
 獣医微生物学実習
 獣医病理学実習
 獣医寄生虫病学実習
 魚病学実習
 動物感染症学実習

応用分野
 毒性学実習
 獣医公衆衛生学実習
 食品衛生学実習
 動物衛生学実習

動物の使用数

H18、H23、H28の推移が公表されている麻布大学、日本大学は、10年間で使用数ほぼ横ばい。
酪農学園大と北里については、一概に推移を比較できない印象か? 日本獣医生命大は1年分しか載っていない。

※北里大学に数値について質問しました。回答はこちらをご覧ください。

代替法使用の有無

どの動物を何匹使用することの代替になっているのかが明確ではないが、以下の記載がある。

酪農学園大学


獣医解剖実習では臓器をプラスティネーションで加工して、立体的に観察できるようにしている。また、臨床繁殖学ではと畜場材料を使用して生殖器の触診実習を行っている。産業動物臨床学もと畜場材料での運動器の外科実習行っている。予防衛生学では集団の健康管理について実際に農場の動物を使用することなく写真、ビデオ等で代替している部分もある。犬の心肺蘇生実習ではマネキンを使用している。

北里大学


下記の模型を使用
「皮膚縫合パット(日本ライトサービス)」
「腸管縫合練習チューブ(Life & Tail)
「装着式採血静注練習キット(京都科学)」
「犬心肺蘇生練習マネキン(CPR DOG,NASCO)」

日本獣医生命科学大学


獣医学科4 年次の獣医外科学実習(I, II)において、以下の非生体模型を使用している。
1) 自発呼吸と人工呼吸時に生じる胸腔内圧の変化実習で胸腔・肺の模型を使用。
2) 心肺停止状態の動物への対応として犬ぬいぐるみを使用。
3) 整形外科の基本手技の実習にプラスチック製代替模型を使用。
4) 手術の基本手技の実習に食用鶏肉(市販品)とスポンジを使用

麻布大学


・ 採血前にレプリカモデルで練習後に生体の実習を行う。
・ 搾乳の実習で牛の搾乳用レプリカを使用して代替している。
・ タブレット端末(実習手技の動画・画像再生)、模擬動物(ぬいぐるみ)を、デモンストレーション動物の代替として用いる。
・ 牛、馬、豚の等身大レプリカを用いて、骨格、筋肉、臓器の解剖学的位置の理解、病態との関連を学修している。また、それぞれの動物で模擬的な採血や投薬、直腸検査なども体験できるので、生体を利用する前にレプリカとファントム臓器によって手技の確認と習熟を行っている。
・ 病理学実習における病理解剖実習は基本的に各種家畜について実施する事が理想であるが、斃死体の計画的入手が物理的に困難であるため、中動物である豚を代替として解剖している。豚の術式は犬猫と同様であり、これを実施する事により犬猫の病理解剖にも対応できるように説明をしている。

日本大学


獣医解剖学実習について、学部附属博物館展示標本(全身骨格、剥製)を教材として利用している。
獣医内科学実習においては、犬型縫いぐるみを使用した保定法の練習、食用鶏肉を使用した皮下および筋肉内注射法の練習、採血モデル、静脈内投与モデルを使用した注射の練習、消化管モデルを使用した消化器内視鏡検査および胃瘻チューブ設置の練習、臓器モデルを使用した超音波および腹腔鏡下による生検法の練習を実施している。
獣医外科学実習においては、まず、スライドおよびビデオで学習する。滅菌や消毒を学ぶ実習では手製の動物腹部の代替モデルを用いる。生体を用いた軟部組織外科実習を行う前に、皮膚縫合パッドを用いて縫合、結紮の実習を行う。また、腸管吻合術については腹部縫合腸管吻合シュミレーションモデル(AAASim、株式会社アレクソン社)を用いて練習することを行っている。

その他

  • 実験動物・実習倫理委員会等の活動状況も掲載されているが、動物実験計画の承認件数などまで載せているのは酪農学園大学のみで開示度に差がある。
  • 施設・設備の一覧にも動物関連施設の情報が載っているが、詳細を公表していないと思われる大学が多い。

詳細はPDFをご覧ください。

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