EU実験動物使用数統計~加盟国には毎年の報告義務

EUでは、欧州委員会に対し各加盟国が実験動物の使用数の報告をしなければならないことが、実験動物保護指令(EU Directive 2010/63)に定められてます。

そして、その情報を集めたEU全体の統計が毎年公式に公表されています。

かつては3年ごとに1回公表されていましたが、2010年、法的根拠となるEU指令が改正され、統計データの取り方も近代化されました。各国政府には公的な統計を年1回とることが義務付けられ(改正前は「できる限り定期的に」でした)、どういった統計をとるか、詳細な要件が2012年に付属書によって取り決められました。

このルールにのっとった新しい統計が2014年から各国ごとに公表されており、EUのサイトから全加盟国の公表ページへリンクがはられています。⇒新たに ALURES Statistical EU Database として公表されるようになりました。

EU全体分を取りまとめた報告書は、新たに2019年11月から公表されることになり、既に新しい形式で公表が開始されています。2017年までは3年ごとに1回の公表でしたが、2018年以降は1年ごとのデータの公表となっています。

EUは動物実験の透明性を高めようとしており、動物実験計画の概要を国ごとに公表する ALURES Non-Technical Summary EU Database とともに、実験動物の使用数等に関する統計の公開を重要視しています。

EUのサイトの関連ページ

目次

EU統計

2020年:使用数は800万匹を下回り、マウスの割合は50%以下に

概要をブログに掲載しました。この年の統計から、EUを脱退したイギリスの分が抜けています。

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欧州委員会が、EU加盟27か国およびノルウェーにおける科学目的での動物の使用に関する2020年の統計を発表しました。報告書本文 Commission Staff Working Document - Summary Rep[…]

2019年

2018年:加盟国全体では始めて900万匹を下回る

2018年統計から、EU加盟の28カ国に加えてノルウェーのデータも追加されました。

この年、上記29カ国では、研究・試験等で初めて使用された動物の総数は1060万匹でした。新しく加えられたノルウェーのデータを除くと、2017年からさらに5%減少し、EU28カ国で研究および試験に使用された動物の総数は、初めて900万匹を下回ることになりました。(下記表参照)

とても多いと感じる数字ですが、これは日本1国が1年間に使っている実験動物の数より少ないと考えられます。

EU statistical reports 2015年から2018年の間にEUで初めて研究、試験、製剤生産、教育目的で使用された動物の総数

EUの統計は遺伝子組み換え動物の統計もとっており、さらに遺伝子組み換え動物を維持するために犠牲となった匹数も統計がとられています。2018年は、およそ150万匹が犠牲となっていますが(下記表参照)、数がふえているのは、統計の取り方についての理解が進んだことが理由と考えられています。2017年から2018年にかけて増加しているのは、1加盟国から250,490件の増加が報告されたことが原因であり、ノルウェーがふえたことはあまり影響していません。

EU実験動物統計 遺伝子組み換え動物の作出と維持

動物種別にみると、以下の通りです。既にEUでは、ラットの使用数が魚類を下回っています。(日本ではマウスの次に多いのがラットです)

2018年EU動物種別使用数

また、目的別では、基礎研究がおよそ46%、トランスレーショナル及び応用研究が27%、規制のためが18%、生物学的製剤や抗体生産のためが5%、その他(教育・訓練を含む)が4%となっています。

その他、より詳細な情報は下記のレポート(英文)をご覧ください。

2018年統計レポート

2015~2017年:新しい方式での初統計

2019年に、2015年から2017年にかけての統計が公表されました。新しい指令が施行されてから初めての統計の公表です。

EUの実験動物使用数統計

EU統計レポート

2011年:古い方式の最後の公表年

2013年に2011年分の統計が公表されました。このときまで3年ごとに統計が公表されていましたが、その後しばらく、新しい方式の統計になるまで、期間が空いています。

実験動物使用数の2008年と2011年の比較


動物数
(匹)
EU27か国

2008

動物数
(匹)
EU27か国
2011

2008からの増減(匹)

種ごとの増減(%)

マウス

7122188

6999312

-122876

-1,73

ラット

2121727

1602969

-518758

-24,45

モルモット

220985

171584

-49401

-22,35

ハムスター

32739

25251

-7488

-22,87

その他のげっ歯類

39506

28465

-11041

-27,95

ウサギ

333213

358213

25000

7,50

ネコ

4088

3713

-375

-9,17

イヌ

21315

17896

-3419

-16,04

フェレット

3208

2540

-668

-20,82

その他の食肉目

2853

4982

2129

74,62

馬、ロバ

5976

6686

710

11,88

ブタ

92813

77280

-15533

-16,74

ヤギ

3840

2907

-933

-24,30

ヒツジ

30190

28892

-1298

-4,30

ウシ

33952

30914

-3038

-8,95

原猿類

1261

83

-1178

-93,42

新世界ザル

904

700

-204

-22,57

旧世界ザル

7404

5312

-2092

-28,25

大型類人猿

0

0

0

0,00

その他の哺乳類

5704

7888

2184

38,29

ウズラ

9626

5614

-4012

-41,68

その他の鳥類

754485

669451

-85034

-11,27

爬虫類

4101

3824

-277

-6,75

両生類

61789

29583

-32206

-52,12

魚類

1087155

1397462

310307

28,54

12001022

11481521

-519501

-4,33

使われた動物種の割合、動物実験の目的別の割合は以下の通り。

EU統計レポート

参考

  • アメリカの使用数統計についてはこちら
  • 日本には、こういった公式の統計は存在しません。施設に対して使用数の報告を求めるような制度も存在しません。業界団体による販売数統計は存在しますが、販売された動物のすべてをカバーしておらず、また研究機関での繁殖がかなりあると見られるため、実際の使用数よりかなり少なくなっています。以前は、学会が使用数をアンケートベースで公表していましたが、回答率も低く、参考になる数字ではありませんでした。現在は廃止されています。

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