日本実験動物協会の実験動物総販売数調査:販売数は約20年間で3分の1に。でも何かがおかしい…

日本実験動物協会が令和4年度(2022年度)の実験動物総販売数調査の結果を公表しました。これは、同協会がアンケート調査をもとに3年ごとに公表しているものです。

18年前に比べ、販売数は3分の1に! でも何かがおかしい…

令和4年度アンケート調査の対象は、日本実験動物協会(日動協)と日本実験動物協同組合(実動協)の会員及び会員以外で実験動物を生産・販売していると思われる者、大学、公的法人で実験動物を生産、販売・供給していると思われる者の計 29 者とのことですが、これは、この調査が始まった37年前に比べると約3分の1に減っているとのことです。

また販売された動物の総数も、約935万匹だった18年前の調査(平成16年度(2004年度)調査)に比べると、約318万匹と、ちょうど3分の1程度に減っています。

調査年度平成16年度(2004年度) 令和4年度(2022年度)
販売数合計9,348,220
3,176,014

これは、動物を購入して行う毒性試験などが非動物試験に代替されてきたことを反映しているのではないかとうれしく思う一方、明らかにおかしな点もあります。

下記の表を見ていただければなのですが、「その他の動物種」のうち、魚類を含む項目である「哺乳類以外」の販売数が大幅に減っています。EUではラットの使用数が減る一方、魚類の使用が増え、マウスに次ぐ使用数となっています。日本でも魚類の使用は増えているのではないかと思いますが、その傾向がこのアンケート調査にはあらわれていません。単にサプライヤーが調査対象から漏れているのではないかという疑念を持ちます。

また、毎回言っていることですが、このアンケート調査には、畜産農家から購入されている家畜ブタやヤギの数が反映されていないと思われます。

霊長類についても、5000匹を超える輸入数と乖離があり、この点については、「ユーザーの直接輸入及び本調査先以外からの購入が多数あることに起因すると思われます」と分析されています。

また、最も注意しなければいけないのは、これはあくまで販売数であって、研究機関で自家繁殖して実験に使った数は含まれないことです。遺伝子操作実験の増加とともに、研究者が繁殖して使用する数は増えていると思われ、この販売数調査の傾向をもって、日本の実験動物の使用数が減っていると断定できるのかどうかはわかりません。

諸外国と違い、日本には使用数ベースの政府統計が存在しないため、正確なことは全くわからないというのが実情です。なぜ統計すらないかといえば、実験動物の福祉を担保するような具体的な仕組みが法律に全く組み込まれていないからです。

環境省が行う予定にしている「実験動物飼養施設における実験動物取扱状況調査」で販売数との乖離がどの程度あるかが初めて判明するのではないかと期待します。

 実験動物販売数推移 日本実験動物協会の年間販売数調査より 表

PDF版

2001年までの過去の調査結果

ちなみに、上記の表より過去にさかのぼると、2001年まで日本動物実験学会が使用数に関するアンケート調査を行っていました。この頃は、日本実験動物協会の販売数調査と日本動物実験学会の使用数調査の数を足したものを日本の実験動物の使用数の目安としていましたが、特に学会側のアンケートの回収率が悪く、実際の使用数は、この倍はあるのではないかと目されていました。

日本における実験動物の販売数・使用数の推移(1995-2001)

関連ページ

過去の公表についてのブログ記事です。

関連記事

熊本で開催された日本動物実験代替法学会について地元の新聞が報じました。こうやって、動物実験を他の方法に置き換えることへの認知度が上がっていくことを期待します。熊本日日新聞:動物実験「可能な限り減らす」 新薬開発に不可[…]

関連記事

動物実験では、多くの場合、動物実験用に繁殖された動物が使われます。そういった実験動物の生産を行っている業者や研究機関を対象にしたアンケートが3年に1回行われており、平成25(2013)年度のアンケート結果が、昨日、日本実験動物協会のサイトに[…]


関連記事

EUでは、欧州委員会に対し各加盟国が実験動物の使用数の報告をしなければならないことが、実験動物保護指令(EU Directive 2010/63)に定められてます。そして、その情報を集めたEU全体の統計が毎年公式に公表されています。[…]

関連記事

次期動物愛護法改正へ向けた検討が議員連盟で始まっています。今回は実験動物についても改正が必要だということを、ぜひ忘れないでください。2019年の動物愛護法改正の際、附則に下記のように実験動物の適正な取扱の推進に向けた検討等を行うことが盛[…]

実験用ラットイメージ写真

関連記事

最新の動向は活動報告ブログ<動物実験カテゴリ>をご覧ください動物実験について知ろう[caption id="attachment_21728" align="aligncenter" width="640[…]

 

アクションをお願いします

署名にご協力ください日本が最大の消費国 ジャコウネココーヒー「コピ・ルアク」の取り扱い中止を求めるアクション[sitecard subtitle=関連記事 url=https://animals-peace.net/action[…]

活動分野別コンテンツ

活動報告ブログ

最新情報をチェックしよう!
NO IMAGE

動物の搾取のない世界を目指して

PEACEの活動は、皆さまからのご寄付・年会費に支えられています。
安定した活動を継続するために、活動の趣旨にご賛同くださる皆さまからのご支援をお待ちしております。

CTR IMG