堀井動物園の動物愛護法違反に対し厳正な裁定を求める嘆願書

特定動物の無許可飼育(動物愛護法違反)で書類送検された堀井動物園園長に対し厳しい判断を下すよう大津地方検察庁の担当検事宛に嘆願書を送付しました。送付先等詳細は、ブログをご覧ください。

また、追加で2回目の嘆願書も送りました。

※追記:この件に関しては、裁判に至り、有罪判決が出ました。経緯はこちらのページからたどることができます。


2018年5月15日

大津地方検察庁
担当検事 様 ※1

堀井動物園の動物愛護法違反に対し厳正な裁定を求める嘆願書

 動物保護団体のPEACEと申します。私どもが2017年10月23日付けで滋賀県公安委員会あてに苦情申立てをしました通り、堀井動物園(守山市岡町257)の園長、堀井嘉智氏は、「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下、動物愛護管理法)に定められた飼養・保管許可を得ずに特定動物であるハクトウワシとアビシニアコロブスを飼育していたことが、2015年9月に発覚しています。

 またその後、堀井動物園は、2016年11月に農林水産省動物検疫所(神奈川県横浜市磯子区原町11-1)から堀井動物園第二飼育場(野洲市吉川八丁島5270)まで同じく特定動物に指定されているキリンを輸送した際、3日前までに提出すれば特定動物の飼養・保管許可が免除される「特定動物管轄区域外飼養・保管通知書」を2自治体に通知しませんでした。これは、無許可飼育と同じく動物愛護管理法第26条第1項違反に該当し、罰則は動物愛護管理法第45条が適用されると環境省にも確認しております。

 これらの違反について本年3月13日に送検されています堀井嘉智氏は、これまでも様々な法律違反を繰り返してきており、コンプライアンスが求められる現代において、無罪放免とすることは動物取扱業(展示業)を営む本人のためにもなりません。ぜひとも厳しいご判断をくださいますよう本書状をもって嘆願致します。

ハクトウワシとアビシニアコロブスの無許可飼育について

 当会がこのことを知ったのは、2017年に滋賀県に対し情報公開請求を行った後ですが、滋賀県動物保護管理センターの通報にもかかわらず、守山警察署が全く動いていないことが、更に滋賀県警への情報公開請求で判明し、「これまで多くの法律違反を重ねてきた事業者をまた無罪放免したのか」という怒りから、公安委員会に苦情申し立てを行いました。

 特定動物に関しては、堀井動物園は2015年にニホンザルでも無許可飼育を行っています。立入検査の際に滋賀県の動物保護管理センターの職員が許可のないニホンザルが飼育されているのを発見しており、そのときは指導を受けた後に飼養・保管許可が出されてしまいました。しかし、このとき出すべき増減届が提出されておらず、2年経った2017年9月に特定動物飼養・保管数増減届出書が県に提出されています(添付資料① ほかにも同様の違反があり、写しを添付)。本来は30日以内に提出しなければならない書類です。県からはこの書類を提出するように指導してあったそうですが、無提出が確認されたのは、堀井動物園のライオンの飼育方法の問題がインターネット上で炎上し、様々な問題が指摘された2017年になってからでした。このことからも当人の遵法意識に疑問があります。

 私どもが堀井動物園に対し怒りを感じるのは、そもそも汚く狭小な環境に多種多数の動物を過密飼育し、適正な飼養ができていないこと、また移動動物園やふれあい施設で多くの動物たちをストレスにさらし、その扱いを見れば動物に関する知識が欠落しているのが明白であることが主な理由です。
 動物の死亡が多いことも不適切飼養の一つの指標ですが、実際に、このとき無許可飼育をしていたアビシニアコロブスは堀井動物園に移ると同時に死亡、ハクトウワシも非常に身体的に強く長生きで寒冷に強い鳥であるにもかかわらず、なぜか昨年12月に死亡しています。死亡原因を私どもが知ることはできませんが、暑い時期に死ぬならいざしらず、寒い時期に死ぬ鳥ではありません。不適切に狭い環境で飼育していたための衝突事故等ではないかと疑います。

 そもそも特定動物とは、動物愛護法において「人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれがある動物」とされている動物です。飼養・保管が法律による許可制となったのは、その動物によって人間が傷つけられたり、殺されたり、物が壊されたりする可能性が高く、飼養に規制が必要であるとの観点から市民の強い要望があり、2005年、条例による自治体ごとの規制から動物愛護管理法による全国一律の許可制へ移行されました。
 このような動物を、飼育に関する知識や十分な環境もないまま無許可で飼育するということはってはあってはなりません。

キリンの輸送について

 キリンの輸送時の違反については、最終的に2自治体(神奈川県、横浜市)に提出していなかったということになりましたが、私どもが通過自治体のいくつかに確認した際は、静岡県、三重県も出ていないと回答しており、岐阜県は出ていたが撤回になっていると回答していました。私どもは輸送ルートを把握できませんので、通過自治体を当時正確には知りませんでしたが、輸送が終わった事後に提出されて受理した自治体もあるのではないかと疑っております。

 本人が滋賀県動物保護管理センターに提出している顛末書によれば(添付書類②)、出発県には書類を出さなくてよいと勘違いしていたとのことですが、堀井氏は長年移動動物園を行ってきた事業者であり、また再三行政から指導を受けている身であり、今さら「知らなかった」は通用しません。
 特に、特定動物の移動に関しては、半年前の2015年4月にも静岡市内の販売業者からボアコンストリクターを購入し滋賀県まで移送する際、同様の違反を犯しており、この時に滋賀県の動物保護管理センターから指導票が切られています(別添資料③)。すなわち文書指導済みであり、「知らなかった」はありえません。
 また2014年にも、東京都内でのテレビ番組の撮影でワニを移動させた際、届が出ていなかったことがありました(別添資料④)。

 このように繰り返されていて知らないということはあり得ませんが、もし仮に知らなかったのだとすれば、頻繁に繰り返されている特定動物の輸送について、違反が常に繰り返されていたことになります。一体、違反は何回繰り返されていたのでしょうか。輸送時には、交通事故等含め、動物の逸走の可能性は高くなっており、この通告を行政に行わないということは市民の安全を何だと考えているのか、怒りを覚えます。
 更には、これらの法律違反により取り調べを受ける身でありながら、本年再びキリンを1頭購入し、同じく横浜市から野洲市まで輸送しており、反省の色が見られません。

移動動物園・ふれあい動物園であることについて

 堀井動物園は通常の動物園とは違い、動物を輸送して開催する移動動物園や、常設施設である「めっちゃさわれる動物園」での動物ふれあいが主たる事業となっています。つまり、来場者に直接動物を触らせたり、間近で見せたりすることを行っている事業者です。特定動物のほとんども、移動可能な檻やケージで飼養しています。チンパンジーやピューマですらです。さらにはこれらの動物を運搬し、市民に娯楽として見せるという移動動物園すら行っており、動物の入手時以外にも特定動物の移動は頻繁にあります。
 チンパンジーは非常に力が強く、感染症等も人間に近い動物であるにもかかわらず、先日は移動動物園での餌やりに使っていました。また何メートルもあるアミメニシキヘビを写真撮影の別料金をとって、来園者の首に巻いたり(中略※2)、また下にミシシッピアリゲーターがいる強化ガラスの上を来園者が歩くような展示もしています(中略※3)。

 事業そのものにおいて安全に関する認識が欠落していると言わざるを得ませんが、そのような事業者が、特定動物を無許可で飼育したり、法律に違反して動物を輸送していたりということ自体、あまりに非常識であり、来園者や近隣住民の安全について無感覚です。このような事業者がいること自体、市民にとっては脅威です。

動物を頻繁に逃がす事業者であることについて

 堀井動物園は、判明しているだけでも以下の通り動物を頻繁に脱走させており、特定動物に関しても、いつ逃がすかわからない事業者です。

2017年 めっちゃさわれる動物園からショッピングモール内へサソリが脱走
2017年 野洲市の飼育場からヤマアラシ3匹が脱走
2013年 守山市の飼育場からヤマアラシ3匹が脱走(朝日新聞)
2010年 守山市の飼育場からカンガルーが脱走。栃木県内の動物園から連れて来たところで逃げた(朝日新聞)
2007年 長岡市の北陸道上り線で肺魚を落下させた(朝日新聞)
2001年 伊吹町の幼稚園で移動動物園中にラバ1頭脱走(中日新聞)
1998年 「移動動物園ピンチ 滋賀・守山の飼育場 異臭に住民苦情」との記事(中日新聞)に、ラクダの交通事故、カバの脱走騒ぎとの記述がある(事故・脱走時期不明)
1997年 京都市東山区の保育園で移動動物園中にラマ1頭が脱走(朝日新聞)

 また、移動が多いにもかかわらず、堀井動物園では、特定動物の個体識別措置も十分でないことが書類上見受けられます。動物愛護管理法の、いわゆる解説本である「動物愛護管理業務必携」(大成出版社)によれば、「飼養者がその動物の生態、習性等を十分理解し、適正かつ厳格な飼養管理を行うことが必要であり、逸走した場合や遺棄についての責任の所在の厳格化が求められて」おり、特定動物の個体識別措置についても平成17年の法改正で盛り込まれました。こういった法改正の主旨についても、認識が甘いと感じます。

その他の法律違反について

 堀井動物園は、これまでも「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(特定外来生物法)に違反して、エルク、アライグマを無許可飼育していたことがありました。(別添資料⑤
 また、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)に違反して警察に対し始末書を書かされたことが県の記録に残っています。(別添資料⑥
 さらに現在進行形ですが、キリンの輸送先である野洲市内の飼育場は、農地法及び「農業振興地域の整備に関する法律」(農振法)に違反した状態で土地を占拠し、利用しています。これらの違反については、野洲市農業委員会から立ち退くよう指導を受けている最中です。(別添資料⑦及び電話・面会での聞き取り)

 また、特定動物の規制に関する違反についても、標識の掲示義務違反や、許可施設外での飼育などの指導が繰り返されていることが情報公開文書からうかがえます。
 これらの経緯があり、堀井動物園の園長である堀井氏には遵法精神が欠けていると判断せざるを得ません。堀井氏は、個人の趣味で特定動物を飼育しているわけではなく、児童・市民等への教育や娯楽の提供をうたう事業を行っている個人事業主です。法律違反が罪に問われないまま事業を継続してよいものとは、到底思えません。

嘆願事項

「動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害並びに生活環境の保全上の支障を防止」することも動物愛護管理法の目的の一つです。また人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならないのが同法の基本原則です。「知らなかった」と言えば、動物愛護管理法違反は逃れられるというような前例となることのなきよう、本件違反の重大さを十分御斟酌いただき、住民の平和で安全な市民生活の維持、堀井氏の再犯防止、また追随する他の事業者による違反の抑止のために、厳正かつ適切なご決定を下してくださいますよう、何卒お願い申し上げます。

PEACE 命の搾取ではなく尊厳を
代表 東さちこ



※1 担当検事の個人名の公開を控えました。
※2※3 事実かどうか確認できないためウェブでの公開は現時点では控えます。検察庁であれば確認できると考えられるため、情報提供しました。

参考

●動物の愛護及び管理に関する法律 罰則

第四十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 第二十六条第一項の規定に違反して許可を受けないで特定動物を飼養し、又は保管した者

追記

12月28日、有罪判決が出ました。
裁判の経緯はこちらのページからたどれます。

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