動物愛護管理法の運用に関する要望書

第一種動物取扱業

2015年12月9日、動物愛護法の運用に関するアンケートの結果に基づいて環境省に対し要望をしました。詳細は下記のリンクもご覧ください。


2015年12月9日

環境省自然環境局総務課
動物愛護管理室長 則久雅司様

動物愛護管理法の運用に関する要望書

 本年も、20日間16カ所に及ぶレニングラード国立舞台サーカス来日の件等、環境省には大変お世話になりました。そのほかにも、各地で開催されるふれあいイベント、展示即売会など、短期間の販売・展示に関し、動物福祉上の問題を感じているところですが、特に業の登録について、自治体間で対応がまちまちであることを実感しております。
この点につきまして、今秋、動物取扱業に関する業務を所管する自治体すべてのアンケート調査を行いましたので、結果をご報告するとともに、以下の点について要望いたします。

1. 第一種動物取扱業の登録に際しては、立入検査による現地確認を必須としてください

レニングラード国立舞台サーカスが20日間で全国16カ所を巡業した際、当日立入が終わるまで正式な登録とならないとした自治体と、事前に書類審査で正式登録となるとした自治体と、対応が大きく二手に分かれました。アンケート結果も同様に、立入検査で現地確認が済んでから正式に登録となるとしたものが48自治体(49.0%)、その他例外があるとしたのが46自治体(46.9%)であり、短期間の営業等に便宜が図られている実態がありました。しかし、短期間であるからといって業の登録について規制が軽減されることはないはずであり、必ず現地確認を行ってからの登録とするよう、全国の自治体に統一の対応を指導していただきたいと考えております。

広告への業の登録情報の記載義務がネックになっている実態もあるようですが、立入の結果によっては当日開催されない可能性もあるにもかかわらず、立入及び登録を受けていない段階で広告を打てること自体が問題です。

申請書類の審査だけで正式に登録となるとした自治体も4自治体(4.1%)ありますが、現地確認を行って書類が事実であるかを確認すべきであり、動物愛護管理法施行規則第三条第7号の「(施設を)設置する見込みがあること」との規定を撤廃していただきたく、要望いたします。

2. 第一種動物取扱業の登録に際し、土地・建物の権原を有することを証明する書類の提出を義務付けてください

本年、神社でのお祭り時の露店営業について、露店業者が第一種動物取扱業の登録を神社の住所で受けていることを神社が知らなかった事例がありました。その事例では、自治体は、土地・建物の権原を有することに関し、登録申請書の「9権原の有無」欄の記入のみで確認していました。つまりは、自主申告で「有」とすれば登録される実態があったことになりますが、今回のアンケート結果でも、書類の提出を不要としている自治体が約3分の1あり、同様の対応がされているものと思われます。

土地・建物について権限を有することは、商売を行うにあたって当然のことであり、不適切な動物の取扱いを防ぐ意味でも大きな意味を持ちますが、本当に権原を有するかどうかの確認が行われていないことは問題です。最低限、賃貸については書類の提出を必須とし、自己所有についても、提出もしくは現地での書類確認を必須とするよう、運用を全国で統一させることを要望いたします。

また、賃貸であって証明する書類が存在しない場合等に用いるための書式についても、現時点では約半数の自治体が独自に用意している現状があり、これについても国で統一の書式を用意していただきたいと考えております。

3. 第一種動物取扱業の登録に際し、既に他の事業所で動物取扱責任者となっている者が重複して責任者になることのないよう、確認を自治体に義務付けてください

アンケート結果では、複数の施設で重複して動物取扱責任者になることはできないし、他で責任者になっていないか確認しているとした自治体が67 (68.4%)あり、なることはできないが他で責任者になっていないか特に確認はしていないとした自治体が28(28.6%)ありました。

動物取扱責任者は業務の性質上、常勤である必要がありますし、複数の施設で兼務することは不可能と考えられますが、過去には劣悪施設において悪質な重複事例もあり、この点についても最低限本人への確認は必ず行うよう、運用を統一することを要望いたします。ごくわずかですが、重複OKとしている自治体もありました。

また、短期間の移動イベントであっても、本拠地に動物が残されている限り、動物取扱責任者は本拠地と別であるべきであり、この点についても統一を図っていただきたいと思います。

4. 2日間以上の営業となる展示・販売について、業の登録が必要とする見解を明確にしてください

現在、一定の時間(概ね24時間)を超える営業活動が発生している場合に業の登録が必要と示されている見解について、自治体間で解釈にばらつきがあります。アンケートでは「既に住所Aで第一種動物取扱業の登録を受けている業者が、住所Bで2日間~数日間の販売もしくは展示のイベントを行う。住所Bは貴自治体の管轄内である。イベントは営利目的である」といった例に関し登録が必要か必要でないかを聞きましたが、「登録は必ず必要」とした自治体は58(59.2%)、「登録しなくてよい例外がある」とした自治体は39(39.8%)でした。

例外があるとした自治体のうち、どのような事例を24時間を超えないと解釈しているかについても、「夜間動物を住所Aに連れ帰っている場合」「夜間動物を住所Aに連れ帰り、なおかつ施設が撤去される場合」「営業が合計24時間を超えない場合」「夜間動物を住所Aに連れ帰り、なおかつ営業が合計24時間を超えない場合」と、幾つかのパターンに解釈がわかれました。

しかし、「必ず必要」とした自治体は、営業が2日間にわたれば24時間を超えると解釈して登録を受けさせているものと考えられますし、環境省の解釈もこちらだと受け止めております。
このように対応が分かれる原因として、そもそも見解の文意が把握しづらく、明快でないことが挙げられると思います。移動展示業者等は複数の自治体で事業を展開しており、自治体によって対応が違うことは問題ですので、よりわかりやすい見解を新たに示していただき、全国の自治体で統一を図っていただきたく、要望いたします。

5. 土地・建物の権原を喪失した事業者に対しては、廃業させるか業の取消を行うこと

短期間のイベントの登録でも5年間の有効期限で運用されています。そもそも業の登録に必要な要件として定められている土地・建物の権原を喪失すれば、登録業者の条件は満たさないことになりますが、全国で権原を有していないにもかかわらず登録が続いている実例がおよそ56例との回答になりました。事例としてはわずかではありますが、放置もしくは便宜が図られているものと考えられます。
繰り返し短期イベントを行っている事業者に関しても、施設設備の状態や連れてくる動物に違いはあり、その都度営業の実態を把握する必要があります。なにより、土地・建物の権原を有さないにもかかわらず業の登録が続くことは不適切であり、廃業の指導もしくは業の取消を行うよう、運用を統一することを要望いたします。

6. 法令を遵守しない犬猫等販売業者に対し、罰則の適用等の対応を行ってください

2012年の法改正によって犬猫等を販売する事業者に対する義務事項がふえましたが、法令遵守のわかりやすい指標として、犬猫等健康安全計画の提出および犬猫等販売業者定期報告届出書の提出の状況についてアンケートをとりました。

その結果、犬猫等健康安全計画は全国で少なくとも181事業者が未提出であり、その約4分の1は廃業・休業もしくはその可能性が高いものと考えられました。犬猫等販売業者定期報告届出書については、5月30日提出締切の平成26年度分について聞きましたが、9月~11月の時点で、全国で少なくとも2,202事業者が未提出でした。

改正法施行から2年が経過し、経過措置終了からも時間が経っていることを考えれば、現時点で犬猫等健康安全計画を出さずに営業を続ける事業者は悪質と言って過言ではないと思います。命令・勧告や罰則の適用、もしくは犬猫の販売中止を命令する等、具体的な措置をとるよう、全国の自治体に通達していただくことを要望します。

犬猫等販売業者定期報告届出書についても、半年も経った時点で提出していないものに対しては過料に処す等の対応が必要ではないでしょうか。動物愛護法上の台帳の保管義務もそうですが、そもそも犬猫販売の売り上げについては税務申告もしているはずであり、販売の記録はあるはずです。報告ができない事業者は税務申告はどうしているのかという疑問すら感じます。

また、アンケートでは、犬猫等健康安全計画の遵守状況についてどういった形で確認しているかについても聞きました。立入が主な手段となるかとは思いますが、この頻度についても自治体間でばらつきが見られました。また、特に繁殖業者については犬猫等販売業者定期報告届出書が計画と齟齬がないか照合する必要があるかと思いますが、「犬猫等販売業者定期報告届出書の内容と照合する」とした自治体は30件(30.6%)にとどまりました。業者から見て提出する意義を感じられないことは問題だと思いますので、内容の確認についても自治体に促すべきだと思います。

7. 第一種動物取扱業の登録業者一覧の公開について

アンケートでは、第一種動物取扱業の登録業者一覧のインターネット公開についても質問しました。法律に閲覧と書かれている点からも、インターネット公開を必須とすることは現時点でできないかとは思いますが、爬虫類やエキゾチックアニマル系の販売業では、未だにホームページ等に動物取扱業の登録に関する情報が載っていない(もしくは不十分である)事例が多々見受けられます。合法な事業者かどうかを確認する手段として、情報公開請求は時間がかかってしまいますので、インターネット公開か、もしくは簡易な申請によって入手ができることが望ましいと考えます。これについても推進を検討していただきたくよろしくお願い申し上げます。

以上

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