動物愛護法改正:京都大学iPS研究所 山中伸弥所長への質問状と回答

法律に3Rの理念だけで 20年間放置するつもりの日本! 不適正な者が守られる護送船団方式はいつまで続く?

2018年末に、超党派の殺処分ゼロ議連の動物愛護法改正骨子案が公表された際、「動物実験の3R」の理念について強化する内容が盛り込まれていたことを受け、実験動物関係者らが突如、改正阻止のロビー活動を開始した。

その際、用いられたのが、ノーベル賞受賞者である京都大学の山中伸弥教授も動物愛護法改正には反対であるとする真偽不明の情報である。そこで、法改正運動を共に行っていた、PEACE・JAVA・ARCの3団体では、直接山中伸弥教授に対し質問状を送り、回答を求めた。

結論として、法改正に反対との回答は得られなかった。質問および回答の全文を以下に掲載する。

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動物実験 ヌードマウス写真

質問状全文

平成31年3月15日

京都大学 iPS細胞研究所所長 山中伸弥様

「動物の愛護及び管理に関する法律」改正骨子案に対する
ご見解に関する公開質問状について

PEACE 命の搾取ではなく尊厳を 代表 東さちこ
認定NPO法人アニマルライツセンター 代表理事 岡田千尋
NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA) 理事長 長谷川裕一
事務局長 和崎聖子

冠省
私どもは動物実験における3Rの推進、畜産動物の取扱いの改善など動物福祉のための活動を行う市民団体です。「動物の愛護及び管理に関する法律」の次期改正のための取組みを連携して行っております。

さて、「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下、動物愛護法といいます)につきましては、超党派の国会議員による「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」を中心に、国会議員の皆様において改正に係るご検討を進められているところです。そして、昨年12月、同議員連盟が改正骨子案を公表しました。
この骨子案につきまして、吉田統彦衆議院議員(立憲民主党)が3月12日の衆議院厚生労働委員会で質疑を行いました。その中で下記のとおり、貴殿のご見解について触れられておりました。

平成31年3月12日 衆議院厚生労働委員会より
その中で、実際に、2012年のノーベル医学・生理学賞受賞者である山中伸弥教授は、今回の動物愛護法の改正草案をご覧になったそうです。
科学研究者が、前回改正の際の例えば参議院厚生労働委員会における附帯決議七の3Rの実効性強化などを、起草した部分などを始めとして、厳格に遵守をしてきた。ただ、そういうことが全く評価されていない。この草案がそのまま成立した場合、自身の今後の研究の遂行に大きくかかわる可能性があると危惧していらっしゃると仄聞をいたしております。

これを読む限り、貴殿は3Rを徹底することを否定しているかのように受け取れ、その場合、そのお考えは国際的な流れに反します。私どもは、科学研究者が3Rの取り組みを厳格に遵守なされてきたのであれば、この骨子案とおりの法改正に何ら支障は生じないはずであると考えます。

そのため、貴殿が本当にこのようにお考えなのかにわかには信じがたく、事実関係をお尋ねしたく、別紙の「『動物の愛護及び管理に関する法律』改正骨子案に対するご見解に関する公開質問状」のとおり質問いたします。

ご多忙のところ恐れ入りますが、3月22日までに別紙質問状の用紙に直接記入の上、ご返送くださいますよう、お願い申し上げます。

なお、期限までにご回答をいただけなかった場合は、貴殿が上記のご見解はご自身のお考えであると認められたと理解し、その旨公表いたしますことを申し添えます。また、この質問状を含めた関係資料につきましては、国内外の関係団体、関係省庁、マスメディア等に公開する場合があることを予めご承知おきください。

不一


「動物の愛護及び管理に関する法律」改正骨子案に対するご見解に関する公開質問状

【質問1】 平成31年3月12日 衆議院厚生労働委員会で吉田統彦衆議院議員が引用した貴殿のご発言とする内容は事実に相違ありませんか?
該当する項目に○をつけてください。

はい(相違ない)   いいえ(相違がある)

【質問2】 【質問1】のご回答が「いいえ」の場合、どのように相違があるのか具体的にご説明ください。

【質問3】 【質問1】のご回答が「はい」の場合、3Rの原則の理念を掲げ、遵守を推進する骨子案のとおり改正した場合、どのように研究の遂行に大きくかかわるのか、またそれはなぜなのか具体的にご説明ください。

以上

貴組織名 国立大学法人京都大学  部署名
ご回答者名            役職名
電話番号             記入日 平成31年3月 日

参考:該当部分抜粋

動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律案骨子(案)
犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟

第五 その他
二 動物の科学上の利用の減少に向けた取組の強化
動物を教育、試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供する場合には、科学上の利用の目的を達することができる範囲において、できる限り動物を供する方法に代わり得るものを利用し、及びできる限りその利用に供される動物の数を少なくすること等により動物を適切に利用しなければならないこと。

回答全文

2019 年3 月20 日 公開質問状への回答 動物実験は、新しい生命科学の開拓や治療法(創薬や再生医療)開発に必要不可欠であり、これまでも医学の発展に大きく貢献してきました。iPS細胞の開発やこの技術の応用研究においても動物実験を行なっています。 動物実験を実施する際には、3R が実効性あるものとなるように、研究者は教育訓練を受け、動物実験に関する法令や大学の規程を遵守しております。 iPS 細胞を用いることにより、ある程度の動物実験の件数の削減が可能になると期待できますが、ゼロにすることは不可能であると考えます。その理由は、新しい治療法の開発には、患者さんに対する臨床試験の前に、動物の生体内での細胞の動態を観察し、その治療法の安全性を確認することが必要だからです。 私たち研究者も動物実験をできる限り削減したいという思いを強く持っており、引き続き3R の原則を遵守することは当然のことであります。動物愛護法の改正にあたっては、動物実験の必要性を明確にした上で議論していただくことを要望します。 京都大学iPS 細胞研究所 所長 山中伸弥 (本件問い合わせ先) 京都大学iPS 細胞研究所 所長室

テキスト版:

2019 年3 月20 日
公開質問状への回答

動物実験は、新しい生命科学の開拓や治療法(創薬や再生医療)開発に必要不可欠であり、これまでも医学の発展に大きく貢献してきました。iPS細胞の開発やこの技術の応用研究においても動物実験を行なっています。動物実験を実施する際には、3R が実効性あるものとなるように、研究者は教育訓練を受け、動物実験に関する法令や大学の規程を遵守しております。
iPS 細胞を用いることにより、ある程度の動物実験の件数の削減が可能になると期待できますが、ゼロにすることは不可能であると考えます。その理由は、新しい治療法の開発には、患者さんに対する臨床試験の前に、動物の生体内での細胞の動態を観察し、その治療法の安全性を確認することが必要だからです。
私たち研究者も動物実験をできる限り削減したいという思いを強く持っており、引き続き3R の原則を遵守することは当然のことであります。動物愛護法の改正にあたっては、動物実験の必要性を明確にした上で議論していただくことを要望します。

京都大学iPS 細胞研究所
所長 山中伸弥
(本件問い合わせ先)京都大学iPS 細胞研究所
所長室

3R の原則を遵守するのが当然のことでであるならば、なぜ動物愛護法の強化に積極的に賛成しないのか? 日々、3Rを意識し研究活動を行っているのであれば、法律の理念が強化されようと、特段の問題はないはずである。この文言をもって、山中教授も動物愛護法改正に反対だと受け止める動物実験関係者の意識は、一般社会のそれと著しく乖離をしているのではないか。

動物愛護法の強化の狙いは動物実験を行わせないためのものだと意図的に曲解・ミスリードし、長らく法改正反対を固持する態度をとってきたのが日本の研究業界だ。世界の潮流が動物実験脱却であるのは間違いがないが、動物愛護法は、「動物を用いる場合にはどうするか」を定めた法律である。国際的な状況も理解できず、改革を嫌う老害はびこる現状では、今後ますます動物福祉後進国扱いが進むだけではなく、研究そのものが衰退していくのではないかと感じざるを得ない。

動物愛護管理法 改正 まで 活動 履歴 アクション 呼びかけ 国会ロビー

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