ヒトと動物のキメラ解禁パブリックコメント意見(1)
文部科学省研究振興局ライフサイエンス課
生命倫理・安全対策室 御中
「特定胚指針等の見直しに対する意見」
6月28日締め切りのパブリックコメントに以下の意見を提出いたします。
(1)~(4)中略
(1)団体名・氏名
(2)住所
(3)電話番号
(4)メールアドレス
(5)提出意見
a.意見対象箇所
・「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律施行規則」全て
・「特定胚の取扱いに関する指針」全て
b.意見内容
「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律施行規則」及び「特定胚の取扱いに関する指針」の改正に反対いたします。
動物性集合胚によって人と動物のキメラを誕生させることは、人の要素を持った動物という、そもそも自然の交配からは誕生しえない不自然な生命体を生み出す行為であり、極めて非倫理的であるだけでなく、人々に得も言われぬ不快感や恐怖を与え、また動物を苦しめるものです。
このような極度に不自然な生命操作によって動物に何が起きるのか、これまで文部科学省で行われてきた検討全般を通じ、おざなりな検討しかなされてきませんでした。胚の段階から人間の細胞が混じる上に、遺伝子操作を伴う胚盤胞補完法は、生きているだけで苦痛が生じる状態を生む可能性があるにもかかわらず、「どうなるかわからない」「何が起きるかわからない」ということを免罪符に事を進めようとする委員会の在り方は極めて不当です。何が起きるかわからないこそ、やってはならないと考えるべきです。
苦痛をブタが人間の顔になったらどうなのか等、極端な話ばかり例に出し、より現実的に起きうる可能性の高い苦痛について検討しない態度も極めて疑問です。異種を混ぜない体細胞クローンですら、過大子の頻度が高く難産やそれに伴う病気や死亡が多く、母体側にも水腫、腫大した臍帯、胎盤の発育異常等の問題が起きると報告されていますし、生後6か月までに呼吸不全、腎臓の発育異常、肝臓脂肪症(脂肪肝)で死亡する確率が高いと国がまとめています。より倫理的にあり得ない操作をする異種間キメラ作成で、動物が苦痛なく生まれてくることなどあり得るのでしょうか。
またそもそも、日本には諸外国のような動物実験そのものを規制するような(例えば罰則をともなうような明確な)法制度が存在しません。文部科学省の動物実験基本指針も遵守義務はなく、動物実験委員会の設置は任意です。文部科学省は、構成員最低3人と示しているだけで、計画書のどこをどのように審査するのか詳細な目安も示しておらず、動物実験委員会の力量は、施設によって極めてバラバラです。またそもそも同じ組織の人員による身内審査に実効性があるとは思えません。特に私大では一切情報公開がなされないため、まともな審査が行われているのかどうか、知る由もありません。このような状況を是正しようともせず、「動物愛護法があるから」などといった、実体を伴わない言い訳によって動物福祉を最終的に切り捨てた文部科学省の態度は極めて許しがたいものであり、糾弾されるべきです。
本件については、社会的合意が得られたとは到底考えにくく、施行規則・指針の改正に反対いたします。2017年の京都大学iPS細胞研究所・上廣倫理研究部門、澤井、藤田らの世論調査は、キメラ作成推進の意図を極めて鮮明に打ち出した、バイアスのかかった研究です。中立でない科学者が根拠を意図的に作ったような調査を国が参考にするのは、極めて不当です。その他の複数の世論調査では、賛成・反対がちょうど半々で拮抗しており、これらが実態に近いと考えられます。
私どもの会では、過去に一度署名の提出を行わせていただいておりますが、オンライン署名はその後も継続しておりましたので、パブリックコメントの添付資料として提出をさせていただきます。コメント欄をぜひお読みください。
よろしくお願い申し上げます。
以上
追記:施行規則・指針の内容について疑問点等を、この意見とは別途メールにてお送りいたしますので、そちらも併せて受理くださいますようよろしくお願いいたします。