EUの実験動物のケージサイズ新基準
2010年に改訂されたEU実験動物保護指令の付属書の一部を翻訳しました。新しいケージサイズの遵守基準です。(家畜以降の後半は、今しばらくお待ちください)
※日本の動物実験施設も同様のサイズを採用しているとは、決して思わないでください。もっと小さいケージが主流です。
※第33条2項の日付とは、この付属書IIIに書かれたケアや施設に関する基準が加盟国において確実に適用されなければならない日付のことです。付属書IIIのセクションAは、一般的なケア・管理についての章です。
注:ケージや、ペン(家畜を区分けして飼う囲いや房、柵のこと)など、動物を囲って飼育する設備の広さ・高さを、飼育スペースの広さ・高さと訳しています。
科学的な目的のために使用される動物の保護に関する2010年9月22日の欧州議会及び理事会指令2010/63/EU
付属書III
セクションB:種ごとの具体的な規定に関する章
1. マウス、ラット、スナネズミ、ハムスター、モルモット
この表及びこれに続くマウス、ラット、スナネズミ、ハムスター、モルモットの表で示される「飼育スペースの高さ」とは、飼育スペースの床から天井までの垂直方向の距離を意味し、エンリッチメント材を加えない状態でこの高さを保つ床が最低でも50%を占めるものとする。
実験手順を設計する際には、動物の成長を見込んで(表1.1から1.5に記載されているように)実験中に十分なスペースが提供されるよう配慮されなければならない。
表1.1.
マウス
| 体重(g) | 飼育スペースの 最小限の広さ | 1匹ごとの | 飼育スペースの最小限の高さ | 第33条2の規定の日付 |
飼育中および | 20以下 | 330 | 60 | 12 | 2017年 |
20~25 | 330 | 70 | 12 | ||
25~30 | 330 | 80 | 12 | ||
30より上 | 330 | 100 | 12 | ||
繁殖中 |
| 330 雌雄ペア (非近交系/近交系) もしくは繁殖トリオ (近交系)。メス1匹と一腹の子が追加されるごとに、180 cm2追加しなければならない。 |
| 12 | |
ブリーダーでの系統保持(*) 飼育スペースの広さ950 cm 2 | 20未満 | 950 | 40 | 12 | |
飼育スペースの 広さ1 500 cm 2 | 20未満 | 1 500 | 30 | 12 |
|
(*) 離乳後のマウスは、離乳後に適切なエンリッチメントを伴う広い飼育スペースが与えられ、攻撃性の高まりや、疾病や死亡、常同行動その他の行動的欠陥、体重減少、その他の生理的・行動的ストレス反応のような、いかなる動物福祉の欠如も引き起こさないような飼育環境が得られるまでの短い期間であれば、このような高い飼育密度で飼育されてもかまわない。
表 1.2.
ラット
| 体重(g) | 飼育スペースの 最小限の広さ | 1匹ごとの (cm | 飼育スペースの最小限の高さ(cm) | 第33条2の規定の日付 |
飼育中および実験中(*) | 200以下 | 800 | 200 | 18 | 2017年 |
200~300 | 800 | 250 | 18 | ||
300~400 | 800 | 350 | 18 | ||
400~600 | 800 | 450 | 18 | ||
600より上 | 1 500 | 600 | 18 | ||
繁殖中 |
| 800 母親と一腹の子。成獣を1匹追加するごとに飼育スペースの広さを400 cm 2追加。 |
| 18 | |
ブリーダーでの系統保持(**) 飼育スペース の広さ | 50以下 | 1 500 | 100 | 18 | |
50~100 | 1 500 | 125 | 18 | ||
100~150 | 1 500 | 150 | 18 | ||
150~200 | 1 500 | 175 | 18 | ||
ブリーダーでの系統保持(**) 飼育スペースの広さ | 100以下 | 2 500 | 100 | 18 | |
100~150 | 2 500 | 125 | 18 | ||
150~200 | 2 500 | 150 | 18 |
(*) 長期間の研究において、研究の終了に向かうにつれて個別の動物に対するスペースの広さがここに示された上限を下回ってしまう場合、保たれている社会的構造が維持されることが最優先されなければならない。
(**) 離乳後のラットは、離乳後に適切なエンリッチメントを伴う広い飼育スペースが与えられ、攻撃性の高まりや、疾病や死亡、常同行動その他の行動的欠陥、体重減少、その他の生理的・行動的ストレス反応のような、いかなる動物福祉の欠如も引き起こさないような飼育環境が得られるまでの短い期間であれば、このような高い飼育密度で飼育されてもかまわない。
表1.3.
スナネズミ
| 体重(g) | 飼育スペースの 最小限の広さ | 1匹ごとの (cm | 飼育スペースの最小限の高さ(cm) | 第33条2の規定の日付 |
飼育中および実験中 | 40以下 | 1 200 | 150 | 18 | 2017年 |
40より上 | 1 200 | 250 | 18 | ||
繁殖中 |
| 1 200 子のいる雌雄ペアもしくは繁殖トリオ |
| 18 |
表 1.4.
ハムスター
| 体重(g) | 飼育スペースの 最小限の広さ | 1匹ごとの (cm 2 ) | 飼育スペースの最小限の高さ(cm) | 第33条2の規定の日付 |
飼育中および実験中 | 60以下 | 800 | 150 | 14 | 2017年 |
60~100 | 800 | 200 | 14 | ||
100より上 | 800 | 250 | 14 | ||
繁殖中 |
| 800 一腹の子のいる母親もしくは雌雄ペア |
| 14 | |
ブリーダーでの系統保持(*) | 60未満 | 1 500 | 100 | 14 |
(*) 離乳後のハムスターは、離乳後に適切なエンリッチメントを伴う広い飼育スペースが与えられ、攻撃性の高まりや、疾病や死亡、常同行動その他の行動的欠陥、体重減少、その他の生理的・行動的ストレス反応のような、いかなる動物福祉の欠如も引き起こさないような飼育環境が得られるまでの短い期間であれば、このような高い飼育密度で飼育されてもかまわない。
表 1.5.
モルモット
| 体重(g) | 飼育スペースの 最小限の広さ(cm 2 ) | 1匹ごとの (cm 2 ) | 飼育スペースの最小限の高さ(cm) | 第33条2の規定の日付 |
飼育中および実験中 | 200以下 | 1 800 | 200 | 23 | 2017年 |
200~300 | 1 800 | 350 | 23 | ||
300~450 | 1 800 | 500 | 23 | ||
450~700 | 2 500 | 700 | 23 | ||
700より上 | 2 500 | 900 | 23 | ||
繁殖中 |
| 2 500 繁殖用メスが1匹追加されるごとに1 000 cm 2 追加。 |
| 23
|
2. ウサギ
農業研究を行う期間中に、商業的な飼育場と同様の条件下で動物を飼育することが目的として要求される場合、動物の飼育は、少なくとも指令98/58/EC ( 1 )に定められた基準を遵守しなければならない。
飼育スペースには、上に上がることのできる場所をつくらなければならない。この場所は、動物が横たわったり、座ったり、もぐったりするための場所で、床面積の40%以上を占めなければならない。このような場所を使えない科学的もしくは獣医学的理由がある場合には、1匹あたりの飼育スペースを33%拡大するか、2匹につき60%拡大しなければならない。
10週齢以下のウサギにこの高い場所が与えられている場合、その場所の広さは少なくとも55 cm × 25 cmはなければならず、床からの高さは、動物たちがそれを使える高さでなければならない。
( 1 ) 農業目的で飼育される動物の保護に関する1998年7月20日の理事会指令98/58/EC (OJ L 221, 8.8.1998, p. 23)。
表2.1.
10週齢以上のウサギ
表2.1はケージとペンの両方に用いられる。3番目、4番目、5番目、6番目のウサギに与えられる追加の床面積は1匹あたり最小限3 000 cm 2で、6匹を超える場合は1匹追加されるごとに2 500 cm 2が追加されなければならない。
最終的な体重(kg)
| 1匹もしくは社会的にうまくいっている2匹のウサギのために最小限必要な | 最小限の高さ(cm) | 第33条2の |
3未満 | 3 500 | 45 | 2017年1月1日 |
3~5 | 4 200 | 45 | |
5より上 | 5 400 | 60 |
表2.2.
メスと一腹の子
メスの体重(kg)
| 飼育スペースの最小限の広さ | 巣箱のための | 最小限の高さ(cm) | 第33条2の |
3未満 | 3 500 | 1 000 | 45 | 2017年1月1日 |
3~5 | 4 200 | 1 200 | 45 | |
5より上 | 5 400 | 1 400 | 60 |
表2.3.
10週齢以下のウサギ
表2.3は、ケージとペンの両方に用いられる。
週齢
| 飼育スペースの最小限の広さ(cm 2) | 1匹あたりの | 最小限の高さ(cm) | 第33条2の |
7 週までの離乳児 | 4 000 | 800 | 40 | 2017年1月1日 |
7~10週 | 4 000 | 1 200 | 40 |
表2.4.
ウサギ: 表2.1に示された寸法の飼育スペースに対し、高い場所の最も望ましい寸法
週齢
| 最終的な体重(kg) | 最適なサイズ
| 飼育スペースの床からの最適な高さ(cm) | 第33条2の |
10より上 | 3未満 | 55 × 25 | 25 | 2017年1月1日 |
3~5 | 55 × 30 | 25 | ||
5より上 | 60 × 35 | 30 |
3. ネコ
ネコは、一回に24時間以上、単独で飼育してはならない。他のネコに対して攻撃を繰り返すネコは、相性の良いネコが見つからない場合には、1匹で飼育しなければならない。すべてのペアもしくはグループにおける社会的ストレスは、少なくとも毎週、監視されなければならない。4週齢以下の子ネコがいるメス、もしくは出産まで2週間以内のメスは、単独で飼育してもよい。
表3.
ネコ
母親と一腹の子ネコに与えられる最小限のスペースは1匹のネコと同じでよいが、徐々に拡大し、4カ月齢までには、成ネコに必要とされるスペースを子ネコに与えられなければならない。
給餌スペースとトイレは、最小限0.5メートル離れていなければならず、入れ替えてもいけない。
| 床(*)(m 2) | 棚板(m 2) | 高さ(m) | 第33条2の |
成猫1匹あたりの最小値 | 1,5 | 0,5 | 2 | 2017年1月1日 |
1匹追加されるごとに必要な値 | 0,75 | 0,25 | — |
(*) 床面積には棚板(シェルフ)の面積は含まない。
4. イヌ
イヌは、可能な場所であれば外に出して走らせなければならない。イヌは1回に4時間以上単独で飼育してはならない。
内側につくる飼育スペースは、表4.1に記載されているイヌが使うことのできる最小限のスペースの少なくとも50%に相当しなければならない。
以下に示されるスペースの許容値はビーグルに必要とされるものを基準としており、セントバーナードやアイリッシュウルフハウンドのような大型の品種は、表4.1に記載されているような超過値を与えられなければならない。実験用ビーグル以外を繁殖する場合は、獣医スタッフと相談の上、許容スペースが決定されなければならない。
表 4.1.
イヌ
ペアかグループで飼育されているイヌの場合、引き離すことに科学的に必要な目的があるのであれば、この指令が定めるような実験が行われている間は、与えられている総スペース(20 kg 未満のイヌに対しては2 m 2、20 kg以上のイヌに対しては4 m 2)の半分の広さに拘束してもよい。イヌを拘束する時間は、1回に4時間を超えてはならない。
育児中の母イヌと一腹の子は、メス1匹に体重ごとに許されている広さと同じ広さを与えられなければならない。子イヌ用のペンは、母イヌが別の仕切りや子イヌから離れて上がることのできる高いスペースに動けるように設計されなければならない。
体重(kg) | 飼育スペースの最小限の広さ | 1~2匹の最小限の床面積 (m 2 ) | 1匹追加されるごとに最小限必要な広さ | 最小限の
| 第33条2の規定の日付 |
20以下 | 4 | 4 | 2 | 2 | 2017年 |
20より上 | 8 | 8 | 4 | 2 |
表4.2.
イヌ— 離乳後の飼育
イヌの体重(kg) | 最小限の飼育スペースの広さ(m 2) | 1匹あたりの最小限の床面積(m 2 ) | 最小限の | 第33条2の |
5以下 | 4 | 0,5 | 2 | 2017年1月1日 |
5 ~10 | 4 | 1,0 | 2 | |
10 ~15 | 4 | 1,5 | 2 | |
15~20 | 4 | 2 | 2 | |
20より上 | 8 | 4 | 2 |
5. フェレット
表5.
フェレット
| 飼育スペースの最小限の広さ(cm 2) | 1匹あたりの | 最小限の高さ(cm)
| 第33条2の |
600g以下 | 4 500 | 1 500 | 50 | 2017年1月1日 |
600gより上 | 4 500 | 3 000 | 50 | |
成獣のオス | 6 000 | 6 000 | 50 | |
メスと一腹の子 | 5 400 | 5 400 | 50 |
6. ヒト以外の霊長類
若い霊長類は、種に応じ、6~12カ月齢になるまで母親と引き離してはならない。
飼育環境は、霊長類が日々の複雑な活動内容を実行できるようなものにしなければならない。飼育スペースは、霊長類にできる限り広い行動のレパートリーの発現を許すものであり、安全な感覚を与えるものであり、なおかつ、走ったり、歩いたり、登ったり、跳ねたりすることを許すような、適切な複雑さのある環境でなければならない。
表 6.1.
マーモセットとタマリン
| 1匹(*)か2匹と5カ月齢までの子に最小限必要な飼育スペースの広さ(m 2 ) | 5カ月齢以上の個体が1匹追加されるごとに最小限必要なスペースの容積(m 3 ) | 飼育スペースの
| 第33条2の |
マーモセット | 0,5 | 0,2 | 1,5 | 2017年1月1日 |
タマリン | 1,5 | 0,2 | 1,5 |
(*) 1匹で飼育されなければならないのは、例外的な状況においてのみである。
(**) 飼育スペースのトップは、床から少なくとも1.8mでなければならない。
マーモセットとタマリンに対しては、母親からの分離は8カ月齢前に行ってはならない。
表 6.2.
リスザル
1匹 (*)か 2匹に | 6カ月齢以上の個体が1匹追加されるごとに必要な最小限のスペースの容積 (m 3 ) | 飼育スペースの | 第33条2の |
2,0 | 0,5 | 1,8 | 2017年1月1日 |
(*) 1匹で飼育されなければならないのは、例外的な状況においてのみである。
リスザルに対しては、母親からの分離は6カ月齢前に行ってはならない。
表6.3.
マカクザルとベルベット
(*)
| 最小限の飼育スペースの広さ(m 2 ) | 飼育スペースの最小限の容積(m 3 ) | 1匹あたりの最小限の | 飼育スペースの最小限の高さ(m) | 第33条2の規定の日付 |
3歳より下(**) | 2,0 | 3,6 | 1,0 | 1,8 | 2017年 |
3歳から(***) | 2,0 | 3,6 | 1,8 | 1,8 | |
繁殖用飼育(****) |
|
| 3,5 | 2,0 |
(*) 1匹で飼育されなければならないのは、例外的な状況においてのみである。
(**) 最小の寸法の飼育スペースでは、3匹まで飼育してよい。
(***) 最小の寸法の飼育スペースでは、2匹まで飼育してよい。
(****) 繁殖コロニーでは、母ザルといる2歳までの子に対しては追加のスペースは必要とされない。
マカクザルとベルベットに対しては、母親からの分離は8カ月齢前に行ってはならない。
表6.4.
ヒヒ (*)
| 飼育スペースの最小限の広さ | 飼育スペースの最小限の容積 | 1匹あたりの最小限の | 飼育スペースの最小限の高さ(m)
| 第33条2の規定の日付 |
4歳より下 (**) | 4,0 | 7,2 | 3,0 | 1,8 | 2017年 |
4歳から(**) | 7,0 | 12,6 | 6,0 | 1,8 | |
繁殖のための飼育(***) |
|
| 12,0 | 2,0
|
(*) 1匹で飼育されなければならないのは、例外的な状況においてのみである。
(**) 最小の寸法の飼育スペースでは、2匹まで飼育してよい。
(***) 繁殖コロニーでは、母ザルといる2歳までの子に対しては追加のスペースは必要とされない。
ヒヒに対しては、母親からの分離は8カ月齢前に行ってはならない。
(以下、家畜以降の翻訳は今しばらくお待ちください)