OIE陸生動物コード7.8章「研究及び教育における動物の使用」和訳

2010年、国際獣疫事務局(OIE、世界動物保健機関)の陸生動物衛生規約 (the Terrestrial Animal Health Code) に実験動物の福祉に関する章が盛り込まれました。

しかし、農林水産省の仮訳は総会で採択される前のものなので、最終的に若干の修正があった部分が反映されていません。

当会として、この内容の全てを支持するわけではないのですが、日本で実験動物福祉に寄与する仕組みとして公的に採用されていない事柄が多々あるため、誤字や訳の不統一、より適切な訳があると思われる部分などを見え消しで修正してアップしました。

最終的にOIEのコードが後退してしまうところなどがよくわかると思います。

下線部が追加、取り消し線が削除です。

特に、
・Testingとinspectionが共に「検査」と訳されているため、区別のためにtestingを「試験」、inspectionを「査察」としています。
・Ethical reviewを「倫理審査」に統一しています。


【仮訳】 (PEACE修正版)
第 7.8X.章 研究及び教育における動物の使用

序論

この章の目的は、OIEメンバーに対し、生きた動物を研究及び教育に用いる際の、法的あるいはその他の形式による規制を行うに当たってのアドバイス及び支援を提供することである。「研究」の語が用いられる場合は常に、基礎及び応用研究、試験、生物学的材料の製造を含み、「教育」は、教育及び訓練を含む。動物の使用に関する監督システムはそれぞれの国で実施されるべきである。システムは、実際上は、文化、経済、宗教及び社会的要因に応じて各国で異なる。しかし、OIEは、加盟国課見え国が規制の枠組を構築するに当たって、OIEメンバーが各国の状況に応じて、本章に示す基本的な要素全て取り組むことを推奨する。この枠組みは、国、地域及び施設レベルでの規制の組み合わせにより実施されるものであってもよく、公共セクターと民間セクターの責任は明確化されるべきである。

OIEは、研究及び教育における動物の使用が果たす重要な役割を認識している。OIEの「アニマルウェルフェアに関する指針」には、このような使用が人間及び動物の幸せに大きな貢献をしていること、また3つのR(第 7.8X.3.条参照)の重要性について強調して記載されている。ほとんどの科学者及び市民は、以下のことに同意している。

  • 動物は必要な場合及び倫理上正当な場合にのみ使用する(これにより、動物を用いた不必要な研究の重複を避ける)。
  • 生きた動物を使用しない代替策がない場合にのみ使用する。
  • 科学的あるいは教育的な目的を達成するために最小限の数の動物を使用すべき。
  • このような動物の使用ではできる限り痛み及び/あるいは苦悩を小さくすべき。

さらに、動物の苦しみはこのような痛み及び苦悩とは分けて考えられ、動物にもたらされると考えられる継続的な危害と共に考慮されなくてはいけない。

OIEは、動物に対して人道的な取り扱いが必要であること及び良いアニマルウェルフェアなしには科学の質も良いものにならないことを強調する。これらの推奨事項に正しい配慮を払うことは動物の使用への関係者すべての責任である。OIEは、指針に詳述されているアニマルウェルフェアに対するアプローチを順守しつつ、動物のためのアウトカムに基づく基準の重要性を強調する。

OIEは、動物を使用した研究において獣医師が果たす重要な役割を認識している。獣医師特有の訓練及び技術を考慮すると、獣医師は科学者及び動物ケアの技術者を含むチームの重要なメンバーである。このチームによるアプローチは、動物を取り扱うすべての者がアニマルウェルフェアに対する倫理上の責任を有するという考え方に基づくものである。このアプローチは、動物の使用により良質な科学的及び教育的な結果が得られること及び使用された動物に対する最適なアニマルウェルフェアを保障するものである。

OIEは、研究及び教育における生きた動物の使用は合法的な活動であり、それゆえ、国内および国際的な動物の輸送は人間および動物の健康の進歩を維持するために不可欠であると認識している。 そのような輸送は法的な方法で行われ、動物の安全を確保し、人道的な原則を適用する必要がある。

OIEは、施設、申請されたプロジェクト及び使用された種によって適切なやり方で、動物の使用に関する記録を施設にて保持することを推奨する。意思決定の補助及びよい科学及びウェルフェアの向上のために、主要な出来事は記録すべき。これらの記録のサマリーは、国レベルで収集され、担当者あるいは動物の安全を脅かすことあるいは機密情報を漏らすことなく、透明性を確保するために公表されることもある。

第 7.8X.1 条 定義

バイオコンテインメント(Biocontainment)
 アレルゲンを含む生物由来物資の不慮の放出を防ぐ制度及び手続き

バイオエクスクリュージョン(Bioexclusion)
 動物に感染し、その動物あるいは研究の適性に悪影響を与える外来性の生物の非意図的な移動を防ぐこと

バイオセキュリティ(Biosecurity)
 感染した動物あるいは人間が症状を呈する又は生物医学的な研究に動物が適さないようになる外来性の微生物感染を最小限にするあるいは排除するためのリスク評価及びリスク管理の継続的な工程

クローン動物(Cloned animal)
 体細胞核移植あるいは他の繁殖技術を用いて作成された、生きているあるいは死亡した他の動物の遺伝的なコピー

苦悩(Distress)
 ストレス要因に順応することができず、生理的あるいは行動的に明らかに異常な反応を呈している動物の状態。苦悩は急性あるいは慢性の状態を呈し、結果的に病的な状態になることもある。

絶滅危惧種(Endangered species)
 数が少ないあるいは環境の変化や捕食により絶滅の危機に瀕している生物の集団

環境エンリッチメント強化(Environmental enrichment)
 を与えることなしに種に典型的な行動を育成し、不適応な行動を減少させ、認知の刺激を提供する、飼養動物の環境における複雑性(おもちゃ、ケージ器具、餌探し狩猟採集の機会、社会的な住居など)の増加

安楽死(Euthanasia)
 意識が戻ることのない早急な意識の喪失及び最小限の痛みあるいは苦悩となる方法を使用した死の誘導

倫理審査的レビュー(Ethical review)
 動物の使用に対する妥当性及び正当性の考慮。以下を含む。

  • 潜在的な危害の評価及び較量、想定される利益、及びこれらの事項のバランス(下記の利害分析を参照)
  • 実験デザインの考慮
  • 3つのRの実施
  • 動物の飼養、ケア及び担当者の訓練などのその他の関連事項

倫理的な判断は広く一般に認められている社会の受け入れ方に影響を受ける。

絶滅危惧種(Endangered species)
 数が少ないあるいは環境の変化や捕食により絶滅の危機に瀕している生物の集団

利害分析(Harm-benefit analysis)
 申請されたプロジェクトによる動物への悪影響(害)をもたらす可能性と利益の較量を行う工程

人道的なエンドポイント最終点(Humane endpoint)
 痛み及び/あるいは苦悩を取り除くため治療を行う、痛みの伴う工程を停止する、研究における動物の使用をやめる、あるいは人道的に動物を処分するなどのアクションをとることにより、 実験動物の痛み及び/あるいは苦悩の回避、停止、最小化あるいは軽減を行ったある時点

利害分析(Harm-benefit analysis)
 提案されたプロジェクトによる動物への悪影響(害)をもたらす可能性と利益の較量を行う工程

実験動物(Laboratory animal)
 意図的に研究に使用される動物。 多くの場合これらの動物は、生理学的、代謝的、遺伝的に明らかな、または病原体のない状態を有するよう意図して繁殖される。

オペラント条件付け(Operant conditioning)
 特定の反応(棒を押すなど)とポジティブ(餌のご褒美など)又はネガティブ(弱い電気ショックなど)な特定の強化(reinforcement)の間で動物が起こす関連性。この関連性の結果、動物の特定の行動の発現が変化することもある(頻度や強さの増加や減少など)。

痛み(Pain)
 実際のあるいは潜在的な組織の損傷を伴う、不愉快な感覚的及び感情的な経験。防御行動を生じさせ、回避及び苦悩を学習し、社会的行動を含む種特有の行動の特徴が変化することもある。

申請提案されたプロジェクト(プロトコールとも呼ばれる)(Project proposal)
 研究あるいは実験、作業プログラムあるいはその他の活動に関する記述で、作業の目標、動物の使用の性格および倫理的な考慮事項を含む

痛み(Pain)
 実際のあるいは潜在的な組織の損傷を伴う、不愉快な感覚的及び感情的な経験。防御行動を生じさせ、回避及び苦悩を学習し、社会的行動を含む種特有の行動の特徴が変化することもある。

苦痛(Suffering)
 各種有害な刺激及び/あるいは重要で有益な刺激の欠如により動物が影響を受けた結果もたらされた不愉快な、望ましくない状態。良いウェルフェアの反対。

第 7.8X.2. 適用範囲

この章は、研究(試験検査を含む)及び高等教育にて繁殖、供給及び/あるいは使用された、陸生コードで規定された動物(はちを除く)に適用される。生物学的製剤の生産に使用された動物及び/あるいは科学的な目的で細胞、組織及び器官を採取するために人道的に処分された動物も含まれる。加盟国はこれらの基準の実施に際しては、種及び発育段階を考慮しなくてはならない。

第 7.8X.3. 3つのR

国際的に受け入れられた「3つのR」という理念は、以下より構成される。

  • 置き換え。脊椎動物の細胞、組織あるいは器官を使用する(相対的関連物質による置き換え)、あるいは脊椎動物を使用せず(完全置き換え)、科学的な目的を達成する方法の活用。
  • 削減。研究者が同程度の情報をより少ない動物を用いて得ることができる方法あるいは同じ数の動物を用いてより多くの情報を得る方法の活用。
  • 苦痛の軽減純化。痛み、苦痛、苦悩あるいは継続的な害を防止する、軽減するあるいは最小化する方法及び/あるいは使用する動物のウェルフェアを向上する方法の活用。苦痛の軽減純化には、より神経系が構造的及び機能的に複雑ではない種及びこれらが複雑でないため経験を明確に記憶しにくい種を適切に選択することを含む。飼育施設、移動、手順及び安楽死など、動物の生涯を通じて苦痛の軽減純化の機会は考慮されまた実行されるべき。

第 7.8X.4 監督枠組

担当官庁の役割は、施設のコンプライアンスを検証するシステム(政府あるいは他)を実施することである。これは通常、認可システム(ライセンスあるいは施設、科学者及び/あるいはプロジェクトのライセンスあるいは登録)を含む。コンプライアンスは施設、地域及び/あるいは国レベルで評価されることもある。

監督の枠組には通常、動物の使用に対する倫理審査面の見直し並びに動物のケア及びウェルフェアに対する考慮が含まれる。これは一つの機関によって達成されるか、あるいは複数の機関に分散されるより達成される。異なる監督の枠組みには、アニマルウェルフェア行政官担当者、地域、国又は地方の委員会あるいは機関が関与することもある。監督の枠組みの全部あるいは一部は地方委員会(しばしば動物ケア及び使用委員会、動物倫理委員会、アニマルウェルフェア機関あるいは動物ケア委員会と称される。)を利用して行われることもある。施設が適切な権限、リソース及びサポートを確保するため、地方委員会が施設における上位の管理者に報告することは重要である。このような委員会は定期的に自身の方針、手続き及びパフォーマンスの点検を行うべきである。

地域、国あるいは地方の倫理審査点検機関あるいは委員会が、動物の使用に関する倫理審査面の点検を実施することもある。

こうした監督を行い、3つのRが確実に実施されるようにするためには、以下の専門家が最低限含まれている必要がある:

  1. 動物を用いた研究を行ったことがある科学者1名。その役割は、プロトコールが健全な科学に基づき計画及び実施されていることを確保すること。
  2. 研究に使用する動物を取り扱うに当たり必要な専門性を備えている獣医師1名。その役割は、動物のケア、使用及びウェルフェアについてアドバイスすること。
  3. 一般社会を代表する民間人1名。科学および動物のケアに関係しておらず、また、研究において動物を使用することにも関与していない者。

 使用される動物のウェルフェアのために中心的に関与している専門技術者は動物ケアスタッフであることから、動物ケアスタッフに更なる専門知識を求めることもある。その他、特に倫理審査面の点検に関連して、実施される研究に応じて統計学者、情報学者並びに倫理及びバイオセーフティの専門家などが参加することもある。教育施設では学生の代表が関与することも適切であろう。

監督責任には以下3つの主要な要素が含まれる:

1.申請提案されたプロジェクトの審査

プロジェクトの申請提案の目的は、研究、作業あるいは活動の質及び正当性の審査を行えるようにすることである。

プロジェクト又はその大幅な変更改正は、作業開始前に審査されそして承認されるべきである。申請提案の際には、一義的に責任を負う者を特定し、関連があれば、以下の要素に関する説明を含むべきである。

a) 科学的又は教育的目標。これには、この実験が人又は動物の健康又はウェルフェア、環境、あるいは生物学的知見の向上の点で、適切であるかどうかの検討も含む。

b) 専門技術的でない形で有益な情報を提供する概要。これにより、専門外の監督機関又は委員会のメンバーが全面的且つ公平に参加でき、提案されたプロジェクトの理解と、倫理審査を促進する。当該概要は、機密情報を保護した上で、一般に公表されることもある。

c) 種の選択並びに動物の導入元及び数が適正であることを含む実験設計。これには何らかの再利用が提案されていることも含む。

d) 実験手順

e) 取扱い及び拘束の方法、動物の訓練やオペラント条件付けのような苦痛の軽減純化の考慮

f) 痛み、不快感、苦悩、苦痛あるいは継続的な物理的又は生理的機能の損傷を回避又は最小化するための方法。これには、麻酔薬及び/あるいは鎮痛剤の使用及びその他の不快感を抑える方法例えば、温熱、柔らかな寝具及び給餌の補助などが含まれる。

g) 人道的なエンドポイント最終点及び最終処分の実施。これには安楽死の方法が含まれる。

h) 使用することとしている動物の一般的な健康、飼育及びケアに対する考慮。これには、環境の向上及び特別な飼育施設に関する要件が含まれる。

i) 3つのRの適用及び利害分析といった事項に対する倫理的な考慮。利益は最大で、痛み及び苦悩といった苦痛は最小であるべき。

j) 特別な健康及び安全リスクに関する指摘

k) 申請提案されたプロジェクトをサポートするために必要なリソース/設備(例えば、施設、機器、提案されたプロジェクトに記載されている手続きを実行できる能力があることが分かっている訓練されたスタッフ。)

l) プロジェクトの承認期間を通常定義すべきであり、プロジェクトの承認の更新を検討する際には、達成済みの進捗状況を審査すべきである。

申請提案されたプロジェクトの承認の決定に際して監督機関は重要な責任を負う。監督機関は、生きた動物を使用するそれぞれのプロジェクトについてのリスクに基づく評価を行い、アニマルウェルフェアへの関連知識及び科学的なメリットの向上、社会的な利益を考慮する。

申請提案されたプロジェクトの承認後、承認されたプロジェクトの記載どおりに動物に関連した活動がなされることを確保するために、(プロジェクトを管理しているものから)独立した監督方法を行うことを考慮すべき。このプロセスはしばしば、承認後モニタリングと称される。そのようなモニタリングは、通常の飼育及び実験中の動物の観察;回診中の獣医師の観察;あるいは、地方委員会、アニマルウェルフェア担当官、コンプライアンス/資質担当官あるいは政府査察検査官といった監督機関による査察検査によって達成される。

2.施設査察検査

施設は少なくとも年1回定期的に査察検査されるべき。査察検査は以下の要素を含むべき。

a) ケージのラベル及び他の識別方法を含む動物及びその記録
b) 飼育実務
c) 施設の維持、清浄及びセキュリティー
d) ケージ及びその他機器のタイプ及び状態
e) ケージ及び室内レベルでの動物の環境条件
f) 手術、剖検及び動物実験を行う部屋といった処置を行う場所
g) 洗浄機器、飼料、寝床及び薬品保管場所などの付随的な場所
h) 労働安全衛生に関することへの関心

査察検査の頻度及び態様を決定する場合は、リスク管理の原則に従うべき。

3.倫理評価動物のケア及び使用に関するプログラムの点検

倫理評価動物のケア及び使用に関するプログラムは、施設が法令及び関連指針を遵守するに当たっての方針および慣行を反映するものである。これ当プログラムには、以下に対する考慮を含む;地方委員会の機能;スタッフの訓練及び資質;獣医学的ケア;緊急時対応計画を含む飼養及び運営上の条件;動物の導入元及び最終処遇;及び労働安全衛生。当該プログラムは定期的に見直されるべきである。当該プログラムの構成要素に対する要件は、担当官庁がコンプライアンスを確保すべく適切な行動がとれるよう、関連法令に含有れるべきである。

第 7.8X.5. 条 訓練及び資質の確保

動物のケア及び使用に関するプログラムの重要な構成要素は、倫理面の考慮も含め、使用する動物種を取り扱うにあたり、また実験手続きを実施するに当たり、動物を使って作業する者が適切に訓練され、適切な資質を有していることである。資質が培われたと実証されるまでの研修期間の監督を含め、適切な資質を確保するための(施設、地域的又は国家的)システムが整っているべきである。専門的及び准専門的な教育を受ける機会が関連スタッフに継続的に与えられるべきである。動物のケア及び使用に関するプログラムに対して包括的な責任を有する上級管理職は、スタッフの資質に関する事項に精通すべきである。

1) 科学スタッフ:

動物を使用する研究者は、動物のケアにおいてアニマルウェルフェアに関するすべての事項に直接、倫理的及び法的責任を有する。動物研究の専門性に応じて、研究開始前に、科学者(客員研究員を含む)の教育及び職場の経験を補うために、分野を絞った研修が行われるべきである。この研修には国及び/あるいは地方の規制枠組み及び施設の方針を含むこともある。実験動物に係る獣医師は、しばしばこの研修及び他の研修の講師としての人材となる。科学スタッフは、担当する研究に関連した実験手続き(例えば、手術、麻酔、サンプリング及び管理など)において能力を有することを示すべきである。

2) 獣医師:

動物に関連する研究に従事している獣医師が、研究で扱う動物種に関して、その正常な行動を含め、獣医学的知見及び経験を有していることは重要である。また、獣医師は、研究方法だけではなく、正常な行動や、行動欲求、ストレス応答、種の適合性などについて教育や経験を積むを理解すべきである。獣医法定機関によって発行される関連認可証、及び(もしあれば)適切な国又は地域的スキームが、獣医学的な訓練の参考として採用されるべきである。

3) 動物ケアスタッフ:

動物ケアスタッフは、その職責に沿った訓練を受けるべきである。また、その作業を実行するにあたり適性を有することが実証されるべき。

4) 学生:

学生は、生きた動物の使用数を効果的に減らす又は置き換えることができ、且つ学習目的に適合している場合には、動物を使用しない方法(ビデオ、コンピューターモデルなど)によって科学的且つ倫理的な原則を学ぶべきである。学生が生きた動物を扱う授業又は研究に参加する必要がある場合は、動物の使用の関連する実験手続きを理解し、資質を有することが実証されるまでの間、適切な監督下で動物を使用するべき。

5) 地方監督委員会の委員又は監督に携わるその他の者:

 関連する倫理的事項、規制上の要件及び制度上の責任を含め、研究及び教育における動物の使用に関する教育が継続的に行われるべきである。

 職員の訓練及び資質向上の一環として、研究に使用する動物に関連するリスクに関する、労働安全衛生の訓練が提供されるべきである。これには、人の感染症で研究に使用される動物にも感染し、研究の結果に影響を与える疾病や人獣共通感染症に対する考慮も含まれる。職員は、危害要因に2つのカテゴリーがあることを理解すべきである。一つは、動物施設における作業によるもので、もう一つは研究に関連するものである。特定の種、特定の手順及び動物由来アレルゲンに暴露される恐れのある職員を適切に保護する措置に応じ、特定の訓練が必要となることもある。毒性が不明な化学物質、生物製剤及び放射線源といった研究資材は、特別な危害要因となることもある。

第 7.8X.6.条 獣医学的ケアに関する規定

適切な獣医学的ケアは、研究期間及びその前後における動物の健康及びウェルフェアを向上させる責任、並びに最良の事例に基づく助言及びガイダンスの提供を含む。獣医学的ケアには動物の身体面及び行動面の状態への配慮を含む。獣医師にはアニマルウェルフェアに関する判断をする権限及び責任がある。獣医師の助言及びケアは、いつでも受けられるようにすべきである。 獣医が詳しくない種が関与しているような例外的な状況では、適切な資格のある獣医以外の専門家がアドバイスを提供してもよい。

1) 臨床責任:

ワクチン、外部・内部寄生虫処理及びその他の疾病管理措置を含む予防医学プログラムは、特定の動物種及びソースに適した現行の好ましい獣医学に基づき開始されるべき。疾病サーベイランスは、獣医師の主要な責務であり、顕性又は副臨床的な疾病を引き起こす、寄生性、細菌性及びウイルス性因子に関する動物コロニーの定期モニタリングを含むべきである。獣医師は、動物疾病の診断又は傷害に応じて、必要であれば安楽死を含む適切な処置又は管理措置を講ずる権限を有するべきであり、また、適切なリソースへのアクセスも可能とすべきである。可能な場合、獣医師は実験目的に沿った措置を決定するために、状況について科学者と議論すべきである。獣医スタッフによって処方された規制薬品は、関係規則に従って管理されるべきである。

2) 検死:

予期せぬ疾病又は死については、獣医師は検死結果に基づいて助言すべきである。健康のモニタリングの一環として、検死計画の策定を検討すべきである。

3) 獣医医療記録:

死後の記録を含む獣医療記録は、研究及び教育に使用された動物の適切な獣医ケアに関するプログラムの主要要素と考えられる。獣医師は、獣医療記録プログラムにある実施基準を適用することよって、動物が最高水準のケアが受けられるような、専門的な判断を効果的に行うことができる。

4) 人獣共通感染リスク及び通知すべき疾病に関する助言:

いくつかの動物種の使用は、人獣共通感染症の伝染に係る重大なリスクがある(例:いくつかの非ヒト霊長類)。当該リスクを最小にする動物の導入元を決定するため、及び感染リスクを最小にするため動物施設で講じられる措置(個人用防護具、適切な消毒手順、飼育室における空気圧差など)に関して助言を受けるため、獣医師に相談すべきである。施設に持ち込まれる動物は、政府に通報すべき疾病を持ち込む可能性がある。獣医師がこれらの要件を認識し、遵守することは重要である。

5) 手術及び術後処置に関する助言:

適切な獣医ケアプログラムは、資格を有す獣医師によって施される手術及び術前・術後の手続きの見直し及び承認プロセスについて意見を述べることを含む。獣医師固有の責任には、術前手続き、無菌手術技術、手術を行うスタッフの資質及び術後処置の規定に関する助言を行うことを含む。獣医的監督には、手術及び術後合併症の出現パターンを検出し解決することを含むべき。

6) 鎮痛、麻酔及び安楽死に関する助言:

適切な獣医ケアには、麻酔、鎮痛の適切な使用及び安楽死の方法に関する助言を含む。

7) 人道的エンドポイント最終点に関する助言:

人道的エンドポイント最終点は、獣医師と相談し研究開始前に設定すべきである。また、獣医師は、研究の最中において適切な人道的エンドポイント最終点が守られるようにすることについても重要な役割を担う。獣医師が、苦痛および苦悩の除去が必要な場合に安楽死あるいはその他の措置を講ずる権限を有していることは重要である。ただし、承認されたプロジェクトにおいて、科学的目的及び倫理的評価に基づき、このような措置が認められていない場合は除く。

 理想的な人道的エンドポイント最終点は、研究目的を損なうことなく、痛み及び/あるいは苦痛が始まる前に研究を終わらせるために適用することができるものである。人道的エンドポイント最終点は、獣医師と相談の上、申請提案されたプロジェクトに記載されるべきであり、このため、研究開始前に設定されるべきである。エンドポイント最終点は、倫理審査的レビューの一部をなすべきである。エンドポイント最終点の基準は、研究過程を通じて評価しやすいものとすべきである。例外的な場合を除いて、エンドポイント最終点として(安楽死以外の)死亡を見込むことは、倫理的に許容できないと考えられる。

第 7.8X.7.条 動物の導入元

研究に使用される動物は、データを妥当性なものとすべく、質の高いものとすべき。

1)動物の調達:

動物は合法的に入手すべき。動物は、高品質の動物を生産あるいは確保している身元の確かな導入元から購入することが望ましい。

研究の目的のために育種された動物を入手できる場合は、それを使用すべき。科学的妥当性がある場合あるいは唯一入手可能で適切な導入元である場合を除き、意図する目的以外のために育種された動物は使用すべきでない。家畜、非伝統的な系統及び種、捕獲した野生動物、目的以外のために育種された動物が、研究の目的を達成するためにしばしば使用される。人間以外の捕獲された野生の霊長類の使用は一般的に推奨されない。

2)文書化:

衛生及びその他の獣医証明書、育種記録、遺伝的ステータス及び動物の識別といった動物の導入元に関する文書は動物に添付されるべき。

3)動物衛生ステータス:

動物の衛生ステータスは科学的な結論に大きな影響を及ぼす可能性がある。また、動物衛生ステータスに関連した労働安全に関する問題も生じる可能性がある。動物はその使用目的に合わせ適切な衛生プロファイルを有するべきである。動物の衛生ステータスは研究を開始する前に把握されるべき。

4)遺伝的に明確な動物:

研究に使用する動物の遺伝的プロファイルを把握していることにより、遺伝的浮動に起因する実験データの変動を減少し、結果の再現性を高めることができる。遺伝的に明確な動物は、研究上の疑問を明らかにするために用いられる。また、遺伝的に明確な動物は、高度で及び管理された育種によって作られるものであり、定期的に遺伝的モニタリングを行うことによってその妥当性が確認されるべきものである。詳細で正確なコロニー育種の記録に関する文書は保持されるべき。

5)遺伝子改変(遺伝子組み換え、遺伝子操作)された動物あるいはクローン動物:

遺伝子組み換えあるいはクローン動物は、人の手により核あるいはミトコンドリアゲノムの遺伝的操作が行われた動物あるいはその操作の結果を受け継いだ子孫である。遺伝子組み換えあるいはクローン動物を使用する場合は規制ガイダンスに基づくべき。このような動物及び自然発生あるいは人工的に誘発された有害な突然変異個体については、異常な形質特性に対応した特別な飼養及びウェルフェアが必要かどうかモニタリング及び対処を考慮すべき。バイオコンテインメントの要件、遺伝的及び表現型に関する情報及び個別識別に関する記録を保持し、動物の提供者から受領者に対してその情報が伝達されるべき。遺伝子組み換え株を保管し共有することは、これらの特注の動物の入手を促進する観点から推奨される。

6)捕獲された野生動物:

野生動物を使用する場合、捕獲技術は人道的なものであり、人間及び動物の健康、ウェルフェア並びに安全性に対して適切な配慮をすべき。実地調査は生息域をかく乱する可能性があり、従って、目的とする動物及び目的としない動物双方に対して悪影響を与える。そのようなかく乱の可能性は評価し最小限にすべきである。 罠、取り扱い、輸送、鎮静、麻酔、マーキング及びサンプリングといったストレス要因は蓄積する可能性があり、結果的に死亡する可能性も含め深刻な事態を引き起こすこともある。潜在的なストレス要因を評価すること及び苦悩を取り除くあるいは最小限にする管理計画を、提案されたプロジェクトの一部として策定すべきである。

7)絶滅危惧種:

絶滅危惧種は、その他の種では必要な結果を得ることができないと強く科学的に正当性が証明されている例外的な状況においてのみ使用されるべき。

8)輸送、輸入及び輸出:

動物は、物理的な動物の拘束及び汚染物質の排除に関する適切なケアを伴い、生理的及び行動上のニーズ及び病原体のステータスに適した条件の下輸送されるべきである。動物が輸送される時間は最小限にすべきである。 動物に対して責任を負う主要担当者が指定された、良く練られた輸送計画を立てることは重要である。また、発送元から受領する施設までの間において不必要な遅延を防ぐため、動物の輸送の際に関連する文書を添付することも重要である。

9)バイオセキュリティのリスク:

動物の健康を害するあるいは研究に適さない状態にする感染性微生物あるいは寄生虫による動物の汚染リスクを最小にするためには、動物の微生物的ステータスを明らかにし定期的に評価すべきである。動物の衛生ステータスを維持するために、適切なバイオコンテインメント及びバイオエクスクルージョン措置が講じられるべき。また、適切な場合は、特定の人あるいは環境内の片利共生生物への暴露を防止するための措置も講じられるべき。

第 7.8X.8.条 施設及び環境条件

 適切に計画、設計、建設され且つ適切に維持されている施設には、飼育室並びに施術、剖検、ケージ洗浄及び適切な保管などの支援活動のためのエリアを含むべきである。動物用施設は、関係建築基準に従って設計及び建設されるべきである。動物用施設の設計及び規模は、施設の研究活動の範囲、飼育する動物、施設の他の部分との位置関係及び地理的な位置による。屋内施設の場合、簡単に清掃及び消毒できる、浸透性のない無毒で耐久性のある資材が使用されるべき。動物は通常、その目的のために設計された施設で飼育される。動物を保護し逃亡を防ぐため、安全対策(例:施錠、フェンス、カメラなど)を講じるべきである。多くの種(例:げっ歯類)について、科学的な数値を混乱させ及びウェルフェアを脅かすおそれのある生理的変化を最小にするために、環境条件は管理可能なものであるべきである。

 考慮すべき重要な環境パラメーターには、換気、温度、湿度、照明及び騒音が含まれる。

1) 換気:

小屋へ供給される空気の量、質及びその拡散パターンは、動物の一次的囲いの換気に影響し、その小屋の環境の重要な決定要因である。空気交換率を決定する際に考慮すべき要素は、熱負荷の幅;関連する動物の種類、大きさ及び頭数;寝床の種類又はケージ交換の頻度;部屋の容量;及び二次的囲いから一次的囲いへの通気の効率を含む。空気圧差の管理は、バイオコンテイメント及びバイオエクスクルージョンにおける重要な手段である。

2) 温度及び湿度:

環境温度は、アニマルウェルフェアに計り知れない影響を及ぼす物理的要素である。一般的に、飼育室の温度は、監視及び管理されるべきである。再現可能で有効な科学データを得るためだけでなく、温度環境の大きな変化に合わせるために動物が繰り返し代謝的及び行動的な行為する必要に迫られないよう、日内変動の幅は適切に制限されるべきである。湿度もまた、動物の種類にとって必要であれば管理されることもある。

3) 照明:

明るさは、様々な動物の生理、形態及び行動に影響を及ぼす。一般的に、照明は飼育室内すべてを照らし、適正な飼育環境を作り、適切に動物を監視し、職員の安全な作業環境を作るものであるべき。また、アニマルウェルフェアのために適切な明るさを提供すべきである。明期と暗期を管理する必要がある場合もある。

4) 騒音:

人と動物の場所を分けることは、施設にいる動物の混乱を最小にする。犬、豚、山羊及び人以外の霊長類などの物音を立てる動物は、齧歯動物、ウサギ及び猫のような静かな動物のウェルフェアに悪影響を及ぼさない方法で収容されるべきである。騒音源の影響を軽減するため、飼育室と施術室は分離するよう配慮すべきである。多くの種は高周波音に対して敏感であることから、超音波の潜在的な発生源の位置について配慮すべきである。

第 7.8X.9.条 飼育

 適正飼育基準は、使用される動物の健康及びウェルフェアを向上させ、動物の研究における科学的な妥当性に貢献する。動物のケア及び収容施設は、最低限、公表されている動物ケア、収容施設および飼養に関するガイドライン及び規則に従うべきである。

 動物舎の環境及び飼育法は、動物の社会的行動及び年齢を含む正常な行動を考慮に入れるべきであり、動物に対するストレスを最小にすべきである。飼育手順を実施するにあたり、職員は、自分がアニマルウェルフェアに及ぼす影響の可能性をしっかりと認識すべきである。

1) 輸送:

第7.8.10条を参照のこと。輸送は一般的にストレスの多い経験である。このため、不適切な換気、極端な温度への暴露、給餌・給水の欠如、大幅な遅延等による不要なストレスを避けるために予防措置が講じられるべきである。輸送される動物は、遅れが生じることなく施設に到着すべきであり、検査後、清潔なケージに移され、必要に応じて餌及び水が与えられるべきである。社会生活を営む動物は、ペア又はグループで輸送され、到着地でもそれが維持されるべきである。

2) 馴化:

新たに受け入れた動物は、使用前に、生理的及び行動的に安定させるために一定の時間をとるべきである。安定に必要な期間は、輸送手段及び期間、動物の種類及び年齢、原産地並びに用途に応じて異なる。体調を崩した兆候を示した動物を隔離するための施設を備えておくべきである。

3) ケージ及びペン(房)

ケージやペンは容易に清掃できる素材で作られるべきである。また、動物が怪我をすることのないよう設計されるべきである。飼育スペースは、個々の収容状況及び動物のニーズ(例:出産前後のケア、肥満動物及び群又は単独の飼育)に対処するために、必要に応じて見直され、修正されるべき。提供される空間の質及び量双方が重要である。プロトコールによって禁止されておらず、過度のリスクが動物に生じない場合は、常に、社会生活を営む動物は単独ではなくペア又はグループで収容すべき。

4) エンリッチメント充実

動物を収容するに当たっては、適切な行動を最大にし、ストレスを誘発する行動を避ける又は最小にすることを目的とすべきである。これを達成するための一つの方法は、動物の組織的及び社会的環境を充実させることであり、物理的及び認知的な活動の機会を設けることである。このような規定は、動物又は人の健康及び安全を脅かさず、また、科学的目的を妨げないものであるべき。

5) 給餌:

各動物が生理的要求を満たすために餌を摂取できるような規定を置くにするべき。化学的、物理的、微生物的汚染、劣化又は廃棄を防ぐために、包装、輸送、貯蔵又は加工において予防措置が講じられるべきである。給餌に使用される器具は、定期的に洗浄し、必要に応じて消毒すべきである。

6) 水:

通常、汚染されていない飲料水を、常に飲むことができるようにすべきである。給水管や自動給水システムのような給水装置は、適切に維持され、清浄され、稼働させるため、毎日点検すべきである。

7) 寝床:

適切な寝床が提供されるべきである。また、その動物にとって必要適切であれば、営巣の材料を与えるべきである。寝床は、実験データ及びアニマルウェルフェアに影響を及ぼしうる制御可能な環境因子である。寝床は、乾燥しており、吸収性があり、埃っぽくなく、無毒であり且つ、感染因子、害虫や汚染化学物質が存在すべきでない。土の寝床は、動物を清潔且つ乾燥に保つために、必要な限り頻繁に交換されるべきである。

8) 衛生:

施設の適切な運営は、良好な衛生状態に負うところが大きい。職員が飼育室間を行き来することを含め、媒介物を通じた動物間の感染を広げないために、特別な措置が講じられるべきである。ケージ、ケージ付属品及びその他の機器を清掃し、洗浄し、必要に応じて消毒するための適切な方法及び施設が設けられるべきである。清浄及び組織に関する高度な基準もまた、施設内で維持されるべきである。

9) 識別:

動物の識別は、記録保持の重要な構成要素である。動物は、個々に又はグループごとに識別される。個々に識別されることが望ましい場合は、信頼でき且つ痛みの最も少ない方法で行われるべきである。

10) 取扱い:

動物を扱うスタッフは、動物に対して思いやりと礼節を持ち、取扱い及び拘束について適切な資質を備えているべきである。飼育及び施術に対する慣れは、動物及び職員双方のストレスが少なくなる。いくつかの種、例えばイヌ及び人以外の霊長類では、施術中に職員に協力をするよう訓練することは、動物、飼育スタッフ及び科学的プログラムにとって有益である。ある種類では、ヒトとの社会的接触が重要な事項である。しかしながら、いくつかのケースでは、このような接触は避けるべきである。これは、特に野生動物において当てはまる。動物、施術及び事業の期間に応じた馴化及び訓練を設定するように配慮がなされるべきである。

第 7.8.10.条 輸送

輸送は、動物にとって一般的にストレスの多い経験である。したがって、不適切な換気、極端な温度への暴露、飼料と水の不足、長時間の遅延などによる不必要なストレスを避けるため、あらゆる予防措置を講じる必要がある。一般的な推奨事項は第7.3章及び7.4章に記載されている。動物に対して実施中の、もしくは行う予定の実験のために福祉が損なわれている動物の輸送が正当化されることもある。そのような場合は、さらなるストレスを避けるために、あらゆる予防措置をとる必要がある。加えて、動物は生理的・行動的な必要性や、病原体のない状態に適した条件および容器で、動物の適切な物理的封じ込めや安全を確保するよう注意を払って、輸送されるべきである。遅れる可能性がある場合には、常に緊急時のための計画が実施され、緊急連絡先の名前が容器にはっきりと目立つように表示されるべきである。

1)動物の供給源および運搬の方法や条件は、第7.8.4章1c)に記載された計画申請の審査において考慮されるべきである。

  1. 送り主と受取り主は、動物の健康及び福祉への予想される影響を重視しつつ、輸送の手段、ルート、期間を調整すべきである。
  2. 輸送の遅れの可能性について予測し、回避すべきである。

2)国際輸送に必要な文書は、実験動物の国際的貿易に係る獣医学的証明に基づくものでなければならない(第5.13章参照)。

  1. 送り主から受け入れ機関への輸送のあいだの不必要な遅れを避けるために、輸送中には、完全で適切な、読みやすい文書を動物に添付することが保証されるべきである。
  2. 電子証明書を可能な限り実装する必要がある。

3)動物が最終的な目的地で容器から取り出されるまで、動物がその容器に入れられる時点から始まる明確な輸送計画を立てるべきである。すなわち、

  1. 輸送計画は、輸送時間ができる限り最短で、動物にとって最も快適になるように計画する必要がある。長距離輸送が関わっている場合、これは航空輸送、できれば直行便で達成されることが最もよい。
  2. 動物に責任を持つ担当者が決められているべきであり、予期しない状況で意思決定を行う権限を持つ。そのような人員は常に連絡が可能でなければならない。
  3. 輸送計画は、特定の種の生理および欲求に精通しており経験豊富な獣医師またはその他の能力ある人物による全般的な監督下にあるべきである。以下のような具体的が取組みが必要である。

i 遺伝的に改変された動物など、一部の動物には特別な要件が存在する。

ii 例えば、容器の設計や取扱いを通じて、バイオセーフティ及び生物学的防除の問題が生じる。

4)計画された輸送のあいだは、第7.3章および第7.4章に従い、またIATA(国際航空運送協会)の規制を考慮し、容器の設計や建設、温度、給餌、給水などの適切な環境を動物に提供する必要がある。少なくとも24時間の遅れに対応できるよう、適切な飼料、水、敷料の供給が行われるべきである。

5)計画された輸送のあいだ動物を扱う人員は、動物の基本的な欲求及び、最適な動物の積み下ろし方法について訓練されていなければならない。

6)輸送

  1. 動物の容器は施設に受け入れられるまでに回避可能な遅延があってはならず、検査を行ったのち、病原体のない状態に適合する条件下で容器から取り出されるべきである。
  2. 動物を清潔なケージまたはペンに移し、必要に応じて飼料と水を与えなければならない。

c. 社会的動物は、確立されたペアまたはグループが到着時まで維持された状態で輸送されるべきである。

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