猫カフェ経過措置延長に反対する意見を送りました
猫カフェの猫のストレスに関係する条件は営業終了時間だけではないとは思いますが、猫カフェだけに特例を設けることは業者規制の観点からも好ましいこととは思えません。夜10時まで営業を可とする経過措置が延長されることについてパブリックコメントが行われたため、以下の意見を送りました。
環境省:
動物の愛護及び管理に関する法律施行規則の一部を改正する省令案等 に関する意見の募集(パブリックコメント)について
2014年5月1日(木)締切
動物の愛護及び管理に関する法律施行規則の一部を改正する省令案について
意見:
<該当箇所>
添付資料「動物の愛護及び管理に関する法律施行規則の一部を改正する省令案等(概要) 」のうち、以下の部分
販売業者、貸出業者又は展示業者が、午後8時から午後10時までの間に、成猫(生後1年以上のねこのことをいう。)を、当該成猫が休息ができる設備に自由に移動できる状態で展示を行う場合においては、平成26年5月31日までの間、経過措置が設けられているところ。
この経過措置について、さらに2年間(平成28年5月31日まで)延長し、以下の省令等を改正する。
(以下は省略)
<意見内容>
平成28年5月31日までの経過措置の延長を行うべきではない。
<理由>
不特定多数の人間を客として招き入れる猫カフェという形態自体が、そもそも猫にとって好ましいものではありません。まして、夜間10時まで猫に労働をさせることは、一般的な飼育者の感覚からいって不適切としか感じられません。
猫は一般に広く飼養されている動物であり、業者に対し不適切な扱いを特例として認めることで、家庭での扱い方に悪影響が出る可能性についても考慮に含めていただきたいと思います。
また、「猫カフェの実態調査」では実態がはっきりしませんが、「猫のストレス状態調査」のサンプル一覧を見るに、やはり22時閉店の店のほうが全体に長時間猫を展示していることがわかります。閉店を20時までとすることで、全体の展示時間を短くするべきだと考えます。
さらに、「猫カフェの実態調査」によれば、調査時点で全体の約65%が20時閉店となっており、残りの3分の1に過ぎない店のために経過措置の延長を行うのは過剰な配慮ではないでしょうか。
今回行われた「猫のストレス状態調査」に関しても、以下に述べる理由で科学的に条件の整えられた調査と言えず、閉店時間によるストレスの違いの参考値にはならないと考えます。
経過措置の2年延長に反対します。
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<該当箇所>
「猫のストレス状態調査」
<意見>
尿中コルチゾール濃度に関し、「20 時閉店店舗の方が 22 時閉店店舗に比べて高い値である傾向がみられた」とされているが、この結果を閉店時間の参考値とするべきではない。
むしろ、店舗の広さなど、他の要素について規制を導入するために調査を行うべきことが示唆されていると考える。
<理由>
なぜなら、例えば客室面積だけを見ても、
20時閉店の店の客室面積の平均は28平方メートル、
22時閉店の店の客室面積の平均は99.4平方メートルと
約3.5倍もの開きがあります。
調査では猫や客の密度も不明ですが、客室面積は、猫の行動範囲や密度、客との距離のとり方などに直接関係すると思われ、ストレス値を比較する際には最低限条件をそろえるべき要素だと考えられます。
そのほか、客との接触度(カフェ内のルール)や、閉店時の飼養環境なども、猫カフェの猫のストレスには関係してくると思われますが、これらの条件をそろえた上での比較ではないため、今回の調査は科学的とは言えず、単純に閉店時間の比較の参考値として用いるべきではないと考えます。
また、実感として、20時閉店の店の中にある16平方メートルや、21平方メートルの店は狭すぎです。
さらにいえば、家庭で飼育されている猫との比較がありません。
今回の調査によって示唆されたことは、むしろ店舗の広さなど、他の要素によっても違いが生じうる可能性ではないでしょうか。閉店時間による違いを比較したい場合は、さらに厳密な設計が必要だと思われますが、そこまでのサンプルを集めるのは無理なのではないかとも感じます。
近年、動物愛護行政においても「科学的根拠」が重視される傾向を感じますが、日本ではもともと獣医疫学の考え方がほとんど浸透しておらず、今後の「科学的調査」でも、きちんと疫学調査としての設計が行われた上で調査が行われていくのか懸念を感じます。不確かな調査によって、政策をミスリードするような数値が出てこないよう、十分注意を払いながら進めることを要望いたします。
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<該当箇所>
現行の「動物の愛護及び管理に関する法律施行規則」
第三条 2項
九 犬又は猫の飼養施設は、他の場所から区分する等の夜間(午後八時から午前八時までの間をいう。以下同じ。)に当該施設に顧客、見学者等を立ち入らせないための措置が講じられていること(販売業、貸出業又は展示業(動物の展示を業として行うことをいう。以下同じ。)を営もうとする者であって夜間に営業しようとする者に限る。)。
<意見内容>
夜間展示禁止の対象を犬・猫だけに限定するのではなく、動物取扱業の対象となる全ての動物に対象を広げるべき。
<理由>
近年、「癒し」といった人間中心の理由によって、さまざまな動物と客を触れ合わせる飲食店等が出現しています。猫カフェ以外で増加してきているものに、ウサギカフェがありますが、そのほかにも、猛禽、小鳥、ヤギなどのカフェもあり、動物種は多様化しています。さらには、ペンギンの水槽を置いたバーなど、形態も広がっています。
犬や猫のカフェもストレスや不適切な扱いが懸念されるところですが、それでも、犬や猫は野生動物由来の動物に比べて人と暮らす歴史も長く、家畜化されてきている動物です。現在はそういった動物にだけ夜間展示規制があり、そのほかの、よりストレスを感じやすい種を含めた動物が規制の対象から外れていますが、これは考え方として逆になっているのではないでしょうか。
また、ペットショップでの販売も、犬や猫だけが規制強化され、ほかの動物たちはどれだけデリケートな種であっても夜間展示してよいというのは、法の主旨に照らして矛盾があります。幼齢の個体が多く売られている点でも、条件は犬や猫と同じなのにも関わらずです。
そもそも野生動物由来のエキゾチックペット等が販売されていることが問題ではありますが、現時点でできる最低限の規制についてはその他の動物についても犬や猫と同等のレベルに早急に引き上げることを要望いたします。
(一部、夜行性の動物の夜間展示を認めるべきだとの意見もありますが、その動物が本当に夜行性である場合、夜間は暗くするべきであり、照明をつけたままの展示・利用で「夜行性だから」は通用しないはずです。また、社会通念からいって深夜の営業を認めるべきではないのは他の動物と同じだと考えます。)
以上
参考:
(第41回中央環境審議会動物愛護部会 資料3「猫のストレス状態調査」より ※カラー部分はPEACEで追加。図はパブリックコメントには送っていません。)