実験動物の一般譲渡制度―ACLAM ポジションステートメント翻訳
2017年、アメリカ実験動物医学協会(ACLAM: American College of Laboratory Animal Medicine)が実験動物の一般譲渡に関する見解を表明した文書を公表したとのことで、翻訳でご紹介します。
ACLAMは、実験動物医学に関する専門的な知見や経験を持つ専門獣医師の認定を行っている団体であり、動物実験を行う側の専門家の団体です。
そういった団体が、一般家庭等への実験動物の譲渡について全面的に支持を表明していることをぜひ知ってください。
詳細は、ブログもご参照ください。
動物実験が終わると、使われた動物は、どんなに健康であっても殺されるのが普通です。必ずしも外科処置をされたり健康を害したりするわけではないにも関わらず、です。しかし海外では、「動物実験では必ず動物が殺される」という悪いイメージ[…]
実験動物の一般譲渡制度―ACLAM ポジションステートメント
2017年10月
Ⅰ.ポジションステートメント
ACLAM(アメリカ実験動物医学協会)は、研究に使用した健康な実験動物を、家庭動物として長期間飼養する、適切で親身な生活環境を提供しえる個人宅や農場へ譲渡する一般譲渡制度の構想を全面的に支持する。組織で考案され、管理された一般譲渡制度の指針の発展が強く求められる。実験動物の一般譲渡制度は、一般市民、実験動物の専門家、そして、研究団体全体に重要視されている。
Ⅱ.導入/背景
実験動物の健康と福祉に熟練している獣医学の専門家からなる組織団体として、ACLAMは、施設の一般譲渡制度の発展と管理において担当獣医師の参加が必要だと考える。多くの研究施設が、すでに一般譲渡制度と指針を整えている一方で、適用可能な規則の多くは、実験動物の個人的な譲渡のコンセプトに対応していない。合衆国農務省の連邦規則集第9編記録管理規則〈動物と牧畜〉、は各施設に、一般譲渡制度の選択を強く提案しており、OLAW(実験動物福祉局)もこの慣行を支持している。ACLAMからの付加的なガイダンスは有益といえる。
Ⅲ.一般譲渡制度の指針の考案と実験動物たちの譲渡への適性を決定する際の、検討要素
- 施設の一般譲渡制度の指針には、動物の譲渡に関するすべての適用しうる州法・地域法を考慮に入れなければならない。一般譲渡制度の指針作成のための法的な助言を得ることが勧められる。
- 外部の譲渡団体と連携をとる場合は、その団体の使命記述書、評判、動物の一般譲渡制度への関与歴、そして、犯罪歴を入念に審査した後でなければならない。経歴確認は強く勧められる。
- 里親への譲渡は、そのプログラムの管理責任もある担当獣医師、あるいは被使命人による同意を必要とする。各施設は、動物実験委員会(IACUC)や管理者などの、付加的なレベルの審査を、規定に準じて加えることを求めてよい。
- 施設は、その施設の研究範囲、法的考慮、バイオセキュリティの問題、そして家庭動物としてのその動物種の適性に基づいて、譲渡に適する動物種を決定しなくてはならない。
- 動物は、終生飼養される家庭動物として譲渡されなければならない。譲渡後に移譲されないようにすること。
- 各譲渡の目的は、動物が終生飼養されることと、そのための適切な居住スペースを里親が有していることを前提とし、譲渡先は、入念に調査・選定されなければならない。里親は、研究施設から彼らに譲渡された動物の終生飼養の責任を、後々の予防・救急治療をふくめ、書面で、快諾し、応じる必要がある。
- 適切な場合、施設への後々の負担の可能性を軽減するために、施設は、譲渡前にワクチンと不妊去勢手術を動物にほどこす必要がある。
- 施設は、動物の健康状態と行動が、譲渡候補に適しているか否かを決めなければならない。大手術や、実験的な調合薬の事前投与を施しても、必ずしも譲渡対象外となることはない。こうした決定は、里親に関する潜在的な安全上の懸念に加え、動物の現在の健康状態と、長期間の予後診断に基づくものでなければならない。里親に、動物の潜在的な健康への懸念を、審査の過程で必ず告げ、譲渡時に既往歴を提供する必要がある。
- 遺伝子組み換え動物は、必ずしも譲渡対象外となるわけではない。だが、適用されるガイドラインは、規制ガイドラインのコンプライアンスを確実にするために、検討され順守されなければならない。
原文:Adoption of Research Animals – ACLAM Position Statement
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