動物実験が終わると、使われた動物は、どんなに健康であっても殺されるのが普通です。必ずしも外科処置をされたり健康を害したりするわけではないにも関わらず、です。
しかし海外では、「動物実験では必ず動物が殺される」という悪いイメージを払拭するためにも、一般家庭等に譲渡できる動物は譲渡しようと動物実験関係者が推奨することがあります。大学等の研究機関でも、譲渡プログラムの規定を持っていたりします。
動物擁護の運動側でも、殺される必要のない実験動物に家庭を見つけようと、実験施設から動物を譲り受け活動している団体も出てきています。
また、アメリカでは特に最近、一般家庭等に譲渡できる実験動物は譲渡していくということが、州法のレベルで進められるようになってきました。
こうした流れを受け、2017年、アメリカ実験動物医学協会(American College of Laboratory Animal Medicine:ACLAM)が実験動物の一般譲渡に関する立場を表明した文書を公表したと聞きましたので、翻訳でご紹介します。下記のページをぜひお読みください。
ACLAMは、実験動物医学に関する専門的な知見や経験を持つ専門獣医師の認定を行っている団体であり、動物実験を行う側の専門家の団体です。(日本で言うなら、実験動物医学会のようなところです)
そういった団体が、一般家庭等への実験動物の譲渡について全面的に支持を表明していることをぜひ知ってください。
●日本の事例:マーシャル社が実験用ビーグルの里親探しプログラムを開始
実験動物の一般家庭等への譲渡は、日本でもときどき行われることがありますが、公式に堂々と行われる例はあまりないかもしれません。
そのような中、詳細は明らかにされてはいませんが、実験動物生産会社の世界的大手の日本法人「マーシャル・バイオリソーシス・ジャパン株式会社」が実験用ビーグルの里親探しプログラムを開始しており、国内の企業としては画期的なことではないかと感じています。
マーシャル社は実験用ビーグルの販売を行っているので、販売先の製薬会社等が実験に使った後に、同社の里親探しプログラムに参加、協力していることになります。そういった会社が出てきていることも驚きです。
とはいえ、実験に使った犬を一般家庭に譲渡するというのは、動物実験そのものをなくすものではないと反発する向きもあるでしょう。
しかし、一般家庭にもらわれていくということを意識すれば、本来は、生産や実験利用の段階から人慣れをさせたり、トイレも含めたトレーニングをしたりするのが理想です。こういった「ふつうの飼い方」が意識されるようになっていけば、動物実験の現場での犬の扱いについて意識を変えるかもしれません。
またそのことは、犬をそもそも実験に使うことについての考え方も変えていくかもしれません。
……というのは期待をしすぎかもしれませんが、今までの命の使い捨てから少しでも脱するという意味では注目しています。