食品安全委員会:犬の1年間試験の取扱いについて要望書
農薬の登録時に企業に対し求められている動物実験のうち、イヌを用いた1年間反復経口投与慢性毒性試験が削除になりますした(詳細はこちら)。
この試験は、日本と韓国を除く諸外国では農薬の登録要件から削除されていましたが、日本では食品安全委員会がADIの検討を行うためのデータとして使用しているたため、農水省は登録時に企業に対し試験を求めていました。
しかし食品安全委員会が2年間の委託調査研究を行い、ADI設定において一定の要件のもと削除可能であることが示されたため、2017年の秋から冬にかけて削除について農薬専門調査会幹事会で検討が行われました。
その2回目のとりまとめ文書に関する議論を聞いて、疑問を感じましたので、食品安全委員会に下記の要望書を送りました。また、この内容で食品安全委員会に要望した旨、農林水産省にも送付しました。
結果として、農水省は特に必要な場合の条件は付けず、単純に削除する案をパブリックコメントにかけていますました。
詳細は、こちらの報告をご覧ください。
2017年12月22日
食品安全委員会事務局
農薬専門調査会幹事会 御中
「イヌを用いた1年間反復経口投与慢性毒性試験の取扱いについて(案)」に関する要望
私どもは、現代社会の中で犠牲になる動物たちの問題を広く知らしめ、科学上の目的で犠牲となる動物たちの犠牲についてもできる限りなくしていくべく活動する市民グループです。
アメリカ、欧州連合、インド、ブラジル、カナダ、オーストラリア、中国で既に農薬規制上の試験要件から外されているイヌの1年間の慢性毒性試験について、我が国も見直しが図られていることを歓迎いたします。
しかし、昨日食品安全委員会で行われた第155回農薬専門調査会を傍聴したところ、幾つか懸念を感じた箇所がございました。最終文書がより明快となるよう、以下の点について要望いたします。
1) 農林水産省の定める「農薬の登録申請に係る試験成績について」において、1年間反復経口投与毒性試験成績として、げっ歯類1種(通常ラット1群当たり雌雄各20匹以上)と非げっ歯類1種(通常イヌ1群当たり雌雄各4匹以上)が挙げられていることに言及し、非げっ歯類について「ではどの動物でやるのか」とのご発言をした委員の方がいました。
私どもとしては、あくまで、ほかの動物への代替ではなく「非げっ歯類(イヌ)の削除」を求めるところです。
ほかの動物への代替ではなく、要件からの「非げっ歯類(イヌ)の削除」が妥当であるということを本とりまとめ文書内でも明確化していただき、リスク管理機関である農水省にもそのように通知していただきますようよろしくお願いいたします。
2) 本とりまとめ文書内の「2.食品健康影響評価におけるイヌ慢性毒性試験の取扱い」の「(1)基本的考え方」の末尾に「追加資料の提出を要求することもある」と書かれていることについて、委員間でやりとりがありました。事務局のご説明により、追加試験の試験結果のことではなく、あくまで既に提出されている試験結果に関する解釈・説明等のことであると受け止めましたが、一般人が読むと、イヌを用いた1年間反復経口投与慢性毒性試験の試験結果を追加で求めると読めてしまいます。
誤解のないよう、追加試験を求めるわけではないということがわかる表記にしていただきたく、よろしくお願い申し上げます。
3) 同じく「(2)イヌ慢性毒性試験が必要であると考えられる場合」として①~④が挙げられていますが、食品安全委員会に提出されている研究成果報告書(研究課題名「農薬の毒性評価における『毒性プロファイル』と『毒性発現量』の種差を考慮した毒性試験の新たな段階的評価手法の提言―イヌ慢性毒性試験とマウス発がん性試験の必要性について―」)においては、「イヌにおいて農薬の蓄積性が懸念される場合や薬物代謝(動態)が異なる場合については、ヒトへの外挿性の有無を考慮した上でイヌ長期試験の実施の要否について慎重に判断する必要があると結論された」とあります。
しかし、現在のとりまとめ案の体裁では、①~④であれば必ずイヌ慢性毒性試験が必要であるかのように読めてしまいます。また、これではまるで野菜や肉を食べる飼い犬の健康安全のために試験成績を求めているかのごとく感じてしまいます。
あくまで人でどうかということが主眼であるはずであり、次段落に「①~④の場合であっても、イヌ慢性毒性試験の要否については、ヒトへの外挿性も考慮した上で、慎重に判断する必要がある」のように下線部を追加することを要望いたします。
また、国際的にも動物福祉に関する考え方は向上の一途であり、海外では不要と判断される試験が日本では求められるという事態になることは避けて頂きたく、食品安全委員会におかれましても、極力動物試験の結果を求めない方向性であることをより明確に記載していただきたく、何卒よろしくお願い申し上げます。
以上、大変間際の要望になりますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。また食品安全委員会に伝えたのち、リスク管理機関である農林水産省へ伝えると伺いました。その点につきましても、くれぐれも速やかにお願いを申し上げます。