文部科学省の動物実験基本指針の運用に関する質問主意書<全文>
※質問主意書及び答弁の全文を、質問→答弁の順に並び変えたものです。複数の質問の答弁がまとめられているため、質問の順番を入れ替えたところがあります。
文部科学省の動物実験基本指針の運用に関する質問主意書(質問及び答弁)
大学及び文部科学省の所管する研究機関等が行う動物実験に関しては、文部科学省が「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」(文部科学省告示第七十一号。以下「基本指針」という。)を定めている。しかし、あらゆる判断を各研究機関にゆだねる自主規制の形がとられているため、実験動物福祉への配慮に関する状況及び動物実験委員会の審査能力等について、研究実施機関のあいだでばらつきがあるのではないかとの声がある。動物実験委員会に関し、いわゆる質の担保が必要と考えられるが、その前提として国が基本指針の各項目について、どう運用することが適切と考えているのかが明らかになっていない問題もあると考えられる。基本指針の運用に際し、機関間で解釈や運用に大きなばらつきがあってはならず、最低限の質は担保されるべきとの観点から、以下質問する。なお、見解を問う質問について、見解が文書により明文化されている場合には、その文書名を併せて示されたい。
一について
お尋ねの「国としての詳細な見解を明文化した文書」の意味するところが必ずしも明らかではないが、研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(平成十八年文部科学省告示第七十一号。以下「基本指針」という。)の策定に当たり、文部科学省から日本学術会議に対し、基本指針を踏まえて各研究機関等において策定する機関内規程のモデルとなるガイドラインの作成を依頼し、平成十八年六月に同会議において「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」が取りまとめられている。
三 3Rの原則から考えて、動物実験計画書の審査ではまず、動物を用いることが妥当なのか、つまり、インビトロ試験や人由来材料を用いた研究等、動物を用いない方法で研究することはできないのかをまず審査するべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
四 動物を用いる研究に至ることが妥当なのかどうかを判断するために、動物実験計画書では先行研究やインビトロ試験の結果等、科学的根拠をまず示す必要があるのではないかと考えられるが、現状ではそうなっていない。この点について、国として方向性を示していないのか。
二から四までについて
各研究機関等において設置される動物実験委員会は、基本指針において、「研究機関等の長の諮問を受け、動物実験責任者が申請した動物実験計画が動物実験等に関する法令及び機関内規程に適合しているかどうかの審査を実施」することとされており、また、各研究機関等が動物実験計画を立案するに当たっては、基本指針において、「科学上の利用の目的を達することができる範囲において、できる限り実験動物を供する方法に代わり得るものを利用すること等により実験動物を適切に利用することに配慮すること」とされているところである。具体的な審査の方法等については、御指摘の「動物を用いない方法で研究することはできないのか」との観点を含め、各研究機関等において適切に判断されるべきものと考えている。
五について
基本指針において、「動物実験委員会は、研究機関等の長が次に掲げる者から任命した委員により構成することとし、その役割を十分に果たすのに適切なものとなるよう配慮すること」とされ、「次に掲げる者」としては、「動物実験等に関して優れた識見を有する者」等が掲げられているところであり、現在、国としてお尋ねのような「教育・訓練」は行っていない。
九 研究機関等の長もしくは動物実験委員会の委員長又は委員が自ら動物実験実施者もしくは責任者である場合や、研究に強く関与する立場である場合の動物実験計画書の審査について、どう扱うべきと国は考えているのか。中立公平な審査のためには、自らの動物実験計画を自ら審査し承認するようなことがあってはならないのではないか。この点について、これまで国は文書等にて見解を示しているか。
六及び九について
お尋ねの「報告」や「審査」については、各研究機関等において適切に判断されるべきものと考えている。
七について
「動物実験を実施する機関のみで動物実験委員会の審査が行われるのでは不十分なのではないか」との御指摘の趣旨が明らかではないが、お尋ねについては、各研究機関等において、御指摘の「共同研究」や「委託」の具体的な態様等に応じ、適切に判断されるべきものと考えている。
八について
お尋ねの趣旨が明らかではなく、一概にお答えすることは困難である。
十について
お尋ねの「情報公開」の内容については、基本指針において、「機関内規程、動物実験等に関する点検及び評価、当該研究機関等以外の者による検証の結果、実験動物の飼養及び保管の状況等」が例示されているところであるが、具体的には、各研究機関等において、動物実験等の実施状況等に応じ、適切に判断されるべきものと考えている。
十一について
お尋ねについては、各研究機関等において、御指摘の「違反者に対する処罰等」を含め、適切に対応がなされるべきものと考えている。