アメリカ:チンパンジーの医学侵襲実験は実質禁止へ
チンパンジーの医学侵襲実験は実質禁止へ
米国「種の保存法」の保護は飼育下個体群を含めるところまで拡大
アメリカでは、種の保存に関する法律の対象に飼育下のチンパンジーが含まれておらず、保護団体が規則を改めるよう求めていました。2015年6月、ようやくそれが実現し、実験用を含めたチンパンジーの利用も許可制となり、目的も制限されることになりました。これにより、医学目的の侵襲的な実験は実質禁止されることになります。(共同通信の日本語配信記事が与えている誤った印象についてはこちらをご参照ください)
以下は、アメリカ合衆国魚類野生生物局のウェブサイトの翻訳です。
(ちなみに、日本では医学目的の侵襲実験は既に終了しています)
チンパンジー(学名:Pan troglodytes)
アメリカ合衆国魚類野生生物局は絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律のもとに全てのチンパンジー属を絶滅危惧種として指定する規則を決定した
保護は飼育下個体群を含めるところまで拡大
アメリカ合衆国魚類野生生物局は野生群及び飼育下個体群を含め、全てのチンパンジーを、絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律(ESA)のもとに絶滅危惧種に分類するための最終規則を発表した。この変更が実施されるまでは、野生チンパンジーのみが絶滅危惧種として指定されており、飼育下のチンパンジーについては絶滅の恐れのある種として指定されていただけであった。この決定は強まる種の絶滅への恐れに応えるものであり、チンパンジーの地位を現行の法的要件でそろえるものである。
最終規則は2015年6月16日に連邦官報に発表され、連邦官報発行の90日後である2015年9月14日に発効となる。
チンパンジー絶滅の恐れは、生息地の喪失、密猟、病気を含め、1990年に野生動物群が絶滅危機に瀕しているとして指定されて以来強まりまた拡大している。これらの危惧は、人口増加、居住地拡大、人口増加に伴う天然資源についての需要供給への圧力の増大により悪化している。
動物の米国内外への輸出入、米国内、各州間及び外国通商において「テイク(take)」すること*1(ESAでは、害を及ぼす、苦しめる、殺す、傷つける等と定義されている)を含め、チンパンジーに関わる一定の活動については許可が必要となる。
これらの活動に対する許可は、野生チンパンジーの生息環境の回復、野生のチンパンジーについての管理と回復の改善に貢献する調査を含め、野生のチンパンジーの利益となる、あるいは繁殖や生存を高めるための科学的目的の場合にのみ発行される。
チンパンジーの分布は広いが、赤道アフリカの22か国において分布が途絶えている。チンパンジーの生存が人間の活動の影響で一層脅かされているので、大型類人猿保護基金(Great Ape Conservation Fund)が効果的な保護手段としてますます重要視されている。
この基金はチンパンジーを保護するための保全の取り組みのために940万ドル助成金資金を提供し、これはレバレッジにより1千150万ドルに値する追加資金を生んだ。これらの助成金は19か国におけるフィールドプロジェクトを支持し、これには保護政策の策定、現地での指導、チンパンジーとゴリラの長期生存及び保護を確実にする法の執行の改善が含まれる。
注釈:
“Take”: ESAでは“Take”は、苦しめる(harass)、害を及ぼす(harm)、追い立てる(pursue)、狩猟する(hunt)、撃つ(shoot)、傷つける(wound)、殺す(kill)、罠にかける(trap)、捕える(capture)、収集する(collect)、もしくは、このような行為を試みる事、と定義されている。他方、MMPAでは“Take”は、苦しめる(harass)、狩猟する(hunt)、捕える(capture)、もしくは殺す(kill)やこれらの行為を試みることと定義されている。((平成16年度(独)海洋研究開発機構委託事業「海洋調査観測活動に伴う海洋環境に対する配慮(取り組み)の調査・分析」報告書(平成17年3月 社団法人 海洋産業研究会)より)
原文
U.S. Fish and Wildlife Service > Endangered Species > Chimpanzee (Pan troglodytes)
http://www.fws.gov/endangered/what-we-do/chimpanzee.html