酪農学園大学へ「大動物(家畜)の実習・安楽死等に関する質問書」
未承認で動物実験が行われている等、酪農学園大学内部からの情報と思われる情報をもとに文部科学省でも調査中とのことであり、大学に事実確認のための質問書を送付しました。大学として正式にこの件について公開する予定であり、回答はそのときにいただくことになっていましたが、結局文書での回答は来ていません。(追記:その後、正式に公表されました。)
参考:
- <大学における実習>公私立大学実験動物施設協議会の見解
(酪農学園大学は会員ではありませんが、私大の動物実験施設から構成される関係団体の見解を確認をしました)
2016年2月9日
酪農学園大学
学長 竹花 一成 殿
PEACE~命の搾取ではなく尊厳を
代表 東さちこ
大動物(家畜)の実習・安楽死等に関する質問書
動物保護団体のPEACEと申します。私どもは、研究・教育のために犠牲になる実験動物の現状に強い関心を抱いている市民グループです。日本では過去に、貴大学だけではなく、東京農工大学、北里大学等で牛の無麻酔放血殺が動物福祉に反するとして問題となってきましたが、現在、再び貴大学にてこの問題が表面化してきていると聞いております。
この件については、動物実験計画書の提出・審査が行われていなかったとの指摘もあり、文部科学省も調査を行うとのことですので、既に貴大学としてもある程度問題を把握していらっしゃることかと存じます。
私たちとしましても、動物の扱い方に関して強く疑問を感じましたので、事実関係を教えていただきたく、本質問書を送付させていただきました。下記の点について、ご回答のほどよろしくお願い申し上げます。
【質問事項】
1.貴大学において、動物実験計画書の提出・承認がなされなかったにもかかわらず、家畜(大動物)を用いた致死的な実習が行われたと聞きました。以下の点について教えてください。
- このことは事実でしょうか。
- 事実であるとすれば、誰が責任者となっているどの実習で、いつからいつまで続いていたのか、また実際に行われたのはどのような内容の実験であったか、詳細な事実関係を教えてください。
- 実験計画の承認がないまま犠牲になった動物の数も教えてください。
- また、そもそも疑問なのは、飼育施設の動物の管理方法として、実験計画書の承認がない実験・実習に関して、施設や動物を使うことができるようになっているのかということです。そもそも動物の管理方法に問題がなかったのかどうかについても教えてください。
- 調査結果について、大学として正式に公表される予定はありますか。当会としては、関係者の氏名の公表を求めます。
補足:
この牛の血液を使ってマウスで行う研究について実験計画書の申請がなかったということのようです。大学が公表した事柄についてはこちら。科研費についてはこちらをご参照ください。
2. 実習では、牛はキシラジン単剤での放血殺によって苦痛死を迎えたのではないかと言われています。
- このことは事実でしょうか。
- 事実であれば、そのような手法による実習は、いつからいつまで、年何回、何頭に対して行われていたのか教えてください。
- 今回、実験計画書が出されていなかったと指摘されている実習がこれに該当しますか。
- 実習時には、動物の苦痛の軽減について、使用する薬剤の特性や量、使用手順等を学生に説明しながら行うものと思っていました。実際には、特に説明もなくことが進んだのではないかと考えられる節もあります。貴大学では、実習時には、どのような教育方法がとられているのでしょうか。
- 貴大学では現時点で最も苦痛がないと考えられる牛の殺処分方法として、どのような手段が適正であると考えていますか。その方法はいつから採用されていて、現時点で実際に行われているのかどうかについて教えてください。
- 過去に、牛の実習に関して、貴大学は刑事告発を受けたことが報じられています(2010年)。当時から今回問題として浮上している実習まで、実習のやり方が変わっていなかったということでしょうか。
- 過去の事件当時、自殺をした学生がいたことも知られています。大学側の動物に対する扱いだけではなく、改善を求めた学生への対応についても疑問が残ります。当時、大学として改善へ向け、どのような対応をされたのでしょうか。学生たちに対する説明は行われましたか。
3. 問題の実習に使われた牛について、放牧が行われていなかったと指摘されている点について教えてください。
- これは事実でしょうか。
- 「酪農学園大学実験動物の飼養及び保管に関する基準」には、「従事者は、当該実験動物に固有の生理、生体(原文ママ)、習性が発揮され動物実験等の実施に支障がないように動物の健康管理と安全確保を行わなければならない」とありますが、貴大学で飼育する大動物(家畜)には、本来の生態が発現できるような放牧形式は採用されていないのでしょうか。
- 採用されていない場合、今後検討をいただくことはできますか。
4. 動物実験計画書の承認を受けずに動物を実験等に利用した場合や、動物の取扱いが不適切であった場合の処罰について教えてください。
- これらのことが判明した場合、処罰規定は設けられていますか。
- 今回指摘されている事柄について、関係者に対する処罰は行われますか。
日本には、諸外国のような動物実験に関する法制度がなく、動物実験関係者は「自主規制(機関管理)が行われているのだから問題ない」との態度をとり続けていますが、今回のような疑義が生じた場合に、事実関係が認定されたにもかかわらず、当事者の処分が行われないのであれば、市民感情として納得が行きません。また、これまでの動物実験関係者の主張が虚偽であることが証明されることになりますので、大学としても厳正に処分を行う必要があると考えます。厳正な対処をよろしくお願いいたします。
5. 情報公開について、文部科学省の「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」(以下、動物実験指針)では、「研究機関等の長は、研究機関等における動物実験等に関する情報(例:機関内規程、動物実験等に関する点検及び評価、当該研究機関等以外の者による検証の結果、実験動物の飼養及び保管の状況等)を、毎年1回程度、インターネットの利用、年報の配付その他の適切な方法により公表すること」と定められています。
このうち、「実験動物の飼養及び保管の状況」が何を指すかについては、公私立大学動物実験施設協議会が「動物実験に関する情報公開に関する更なる取組について」の中で、動物種(哺乳類、鳥類、爬虫類)、動物数(毎年の特定日の飼養数あるいは一日当たりの平均飼養数。マウスとラットでは二桁の概数)、施設の情報(機関の長によって承認された飼養保管施設の総数並びに主要な飼養保管施設の名称)の3つを挙げています。
しかし、現在の酪農学園大学のウェブサイトを見ても、これらの情報に該当するものを見つけられません。動物の使用数の削減は、「動物の愛護及び管理に関する法律」にも定められた動物実験の原則であり、削減の努力がされているかどうかの指標として、大学は自ら使用数の把握をする必要があるはずです。
- インターネット以外の方法で開示していたのでしょうか。どのような方法で公開していたのか、もしくは全く開示していなかったのか、状況を教えてください。
- 今後、インターネット上にて公開をしていただくことはできないでしょうか
- c過去5年分の情報を教えてください。
また、最後になりましたが、人間の医師の養成のために人間を殺さないのと同様、獣医学教育においても、動物を犠牲にせずに教育を行う道を歩んでいただきたく、何卒よろしくお願い申し上げます。(動物を全く扱うなと言っているわけではなく、臨床実習等や、自然死もしくは人道的理由で安楽死処置された動物の死体等を使うことは否定しておりません)
質問については2月中の回答を希望しますが、本件に関して大学として公表がなされる場合には、公表と同時であっても構いません。詳細にわたる質問になってしまい恐縮ですが、何卒よろしくお願い申し上げます。