酪農学園大学での牛の実習方法の問題点や、動物実験計画書が出されないまま研究が行われていた件について質問書を送り、その後、該当の研究者の科研費に関連する事項について再度質問をしていたのですが、文書での回答は得られないままなので、科研費については、日本学術振興会に情報公開請求をしました。
その結果、大学関係者から口頭で「科研費が振り込まれる前に問題が発覚したので取り下げただけだった」と聞いていたのとは異なる事実が判明しました。
文部科学省の科研費を用いて動物実験を伴う研究を行う際には、同省の動物実験基本指針の遵守が求められており、この指針に違反した場合、科研費の補助条件違反に該当するため、助成金返還等の対象となるというのが文部科学省の見解です。
こういった処分は本当に行われるのか?というのが、この酪農学園大学のケースで確かめたかったことでした。
開示資料からは、昨年5月13日付けで、研究者本人から「学内規定に抵触する不適切な研究活動を実施していたことが判明し、科研費の執行および応募資格の無期限停止処分が決定した」ことを理由とする科研費廃止のための申請書が日本学術振興会に提出されていることがわかりました。
▼「科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)補助事業廃止承認申請書」より
そして、7月5日付けでこの申請の承認と、それに伴う交付決定の取消、および既に支払われた科研費の返還命令が大学経由で本人あてに通知されていました。
取消額は247万円であり、返還期限は平成28年7月25日です。
科研費応募資格の無期限停止処分を行ったのは、このケースでは大学であり、文科省が処分を行うのとは異なる形でしたが、科研費の返還命令自体は存在したことになります。
この件については、時事通信の報道が昨年の3月7日、大学による公表が4月28日でしたが、その後に科研費取り下げの申請が出されていたことになります。
(申請書上、補助事業廃止の発生年月日が2月25日となっているので、大学の処分はこの日だったのでしょうか?)
当会が事実関係を問い合わせる最初の質問書を送ったのは2月9日、科研費について質問書を送ったのは5月25日でした。この時点で日本学術振興会と相談中だというのは、嘘というわけではなかったのかなと思います。
しかし、結果について大学は回答してきませんでしたが、
科研費は国民の血税で賄われている研究費です。国民には、その運用について知る権利があります。
日本は、先進国には珍しく、動物実験について何の罰則規定もない科学者天国です。せめて研究費の返還が実際にはあるということが公表されなければ、ほかの同様の問題ももみ消されるだけでしょう。
下記の質問をしていました。(大学から回答はなかったので、各質問に対して当会で補足しました)
【追加質問】
平田晴之准教授の科研費について教えてください。
① 科研費の応募に際しては文部科学省の動物実験基本指針の遵守が求められていますので、実験計画書の未提出等の指針違反は補助条件違反になると聞いています。2015年から3年間の予定で採択されていた平田晴之准教授の研究課題について文部科学省に問い合わせたところ、大学のほうから取り下げをする予定だと伺いました。この件について、日本学術振興会との間でどのような話し合いになっていますでしょうか。取り下げとなる場合、理由がどのようなものになるかも教えてください。
⇒取り下げ理由は「学内規定に抵触する不適切な研究活動を実施していたことが判明し、科研費の執行および応募資格の無期限停止処分が決定したため」でした。
② この課題について、採択はされたが、科研費は支払われていなかったというのは事実でしょうか。
⇒「支払われていたが、廃止の申請をしたので返還命令が出た」が事実でした。
③ 平田晴之准教授の科研費応募資格は現在停止中ということでしょうか。停止中である場合、いつからいつまで、何年間の停止となっているか教えてください。
⇒無期限停止処分が出ていました。

