実験動物が退役する? 薬事日報ウェブサイト記事に対する質問書

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薬事日報社のコラムに対して質問書を送りました。ブログもご参照ください。


2016年2月3日

株式会社 薬事日報社 御中

PEACE~命の搾取ではなく尊厳を
代表 東さちこ

薬事日報ウェブサイト記事に対する質問書

動物保護団体のPEACEと申します。私どもは、試験研究等に用いられる実験動物たちの現状に強い関心を抱いており、本日(2月3日)付けで貴社ウェブサイトに掲載された「実験動物からコンパニオンアニマルに」(http://www.yakuji.co.jp/entry48672.html)という記事に対し疑問を持ちましたので、本質問書を送付させていただきます。
大変恐縮ですが、以下の点について2月10日(水)までにご回答をお願いしたく、よろしくお願い申し上げます。

  1. 記事中に「医薬品開発の非臨床試験に用いられる実験動物は、ある程度高齢になればその役割を終える。退役した実験動物はその後どのように生きるのか。」とありますが、薬事日報社は、非臨床試験に用いられる動物は生きたまま「退役」を迎えるのが普通だとお考えなのですか。貴社でも日本の医薬品非臨床試験ガイドラインについて書籍を出されていますが、掲載されている試験のうち、使われる動物を殺さず「退役」とすることが標準となっているような試験があるとしたらどれなのか教えてください。
  2. 非臨床試験に用いられた動物は安楽殺されるのが通常であり、「退役」とすることができる動物のほうが限られているのが現実ではないかと思いますが、この記事を書かれた方は、そのことをご存じないのでしょうか。もしくは特定の動物種(例えば犬のみ。もしくは含まれたとしてもウサギ、モルモットあたり?)だけが実験動物だと勘違いをしているのではないかと感じましたが、いかがでしょうか。マウスやラットもまた動物であってモノではないという認識はお持ちですか。また、サルやブタも非臨床試験に使われていますが、コンパニオンアニマルとして「退役」しているということで間違いないのでしょうか。
  3. 記事中に、「ある専門家によると、コンパニオンアニマル(共生動物)として里親に引き取られるケースが増えているようだ」とありますが、「ある専門家」とは誰ですか。国内の専門家ですか? 確かに、海外ではそういった取り組みがふえているようには感じられますし、犬猫については法制化の動きもあるかとは思いますが、日本国内で使用後の実験動物をリタイアさせてコンパニオンアニマルとする例がどれほどあるのでしょうか。「ふえている」といえるほど存在するのであれば、根拠をお示しください。特に、具体的にそのような取り組みをしている企業名とこれまでの実績(頭数、動物種)をお願いします。どうやってそういった動物にアクセスできるのかも教えてください。「専門家」であれば答えられるはずですし、もし答えられないのであれば無責任に記事化をしないでください。もし海外の話であるなら、そのように訂正してください。
  4. 高齢者に動物を飼わせようとするペット業界の最近の動きに対し、動物愛護団体が神経をとがらせている現状をご存じですか。「万が一、里親が先立ってしまった場合にはNPO法人が動物を引き取るという取り組み」とも書かれていますが、高齢者による飼育放棄がふえている現状は愛護団体で賄い切れるものではありません。(参考「高齢者による犬猫の飼育放棄が増加 譲渡の上限設定も」朝日新聞 2015年11月30日 http://sippolife.jp/article/2015113000002.html
    動物愛護をめぐる状況を十分認識せず、安易にペット業界と同じような発言をするのであれば、「やはり医薬品業界は、動物を利用するだけの業界だ」と思われるだけですが、それで構わないのでしょうか。
  5. 記事中に「もともと人になつくようにトレーニングされており」とあり、まるで実験動物をすぐコンパニオンアニマルとして飼育できるかのような記述がありますが、これも現実とは異なります。実験犬を家庭に譲渡する活動をしている海外の取組みの中でも、実験犬は家庭犬として育てられてきていないために譲渡にあたって育て直しが必要であると言われています。実験施設でトイレトレーニングを受けていない等、しつけの問題もありますが、人間に心を開くのに半年かかるといった話もあり、譲渡活動には根気が必要です。海外ですらそのような問題を抱えつつですから、日本で家庭にすぐ迎えられるような状態で飼育している実験施設があるとは到底思えません。日本国内で動物福祉に配慮していると言われている実験施設でも、見学で人が来ればワンワンと吠えて大騒ぎになります。かまってほしくて吠えますが、これを見ただけでも家庭犬として迎えるには根気がいることがわかります。

    外部(犬を迎える側等)から見た現実を知らずに、動物実験関係者から聞いた話だけで記事を書いたのではないかと感じますが、いかがでしょうか。実態以上に動物実験を良く見せる意図があるように思われることも問題だと感じます。

  6. この記事の最後の部分は、コンパニオンアニマルになって人間を癒すようになった実験動物に対してのみ、ありがたみを感じているという論理構成になっています。しかし、医薬品のために犠牲になった多くの動物たちがそのような境遇にないことは明らかです。殺されていった圧倒的多数の動物たちに対するお詫びの気持ちはわかないのでしょうか。これが最大の疑問です。

長くなりましたが、以上、ご回答のほどよろしくお願い申し上げます。また、訂正が必要な部分については、記事に適宜訂正を入れていただくことを要望いたします。

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