報道がされていますが、イルカ2種(シワハイルカとカズハゴンドウ)に新たに捕獲枠が設けられ、合法的に獲ることができるようになってしまいました。
この時代に、まさかの許可対象種拡大です。要望していたのは和歌山県と沖縄県。
今年になって、算出根拠となる調査の内容も未公表のうちに突然パブリックコメントが行われ(推定生息数の数字のみ公表)、5月30日の水産政策審議会第83回資源管理分科会で諮問、その場で承認されてしまいました。もともと承認される予定とは聞いていましたが、念のため傍聴。
当日の資料が既にアップされていますが、ほかの魚などに比べると根拠になる資料もなくかなりアッサリしたもので、いろいろ驚きました。
水産政策審議会当日、パブコメ結果は、口頭で読み上げただけです。賛成が圧倒的多数で、反対意見は8件のみ。賛成意見は、おそらくパブコメがあることを知らされていた地域からの組織票でしょう。終了後に水産庁の方と話した感触では、やはり和歌山県太地町、あとは沖縄県です。
反対意見は、「国際組織に判断を任せるべき」という意見と、「既存の枠を消化できていないのに新たに拡大するのはおかしい」という意見だけ事務局が紹介。
しかし、IWCは小型鯨類について扱っておらず各国ルールでやっている(注:意見を出した人がIWCを想定していたのかどうかはわかりません)、安定的供給を優先する、といった理由をつけて反対意見をあっさり否定。もうやるつもりだからと言っているように聞こえます。
委員からは特に質問も出ず、枠拡大に賛成の意見が1件出ただけであっさり承認でした。全日本海員組合水産局長・高橋健二氏です。こういった賛成意見も仕込みなのかな!?と思いながら聞きました。
終わってから直接水産庁に聞いたところによると、シワハイルカは前回の7年ほど前の調査時からすると推定生息数は半減していますが、「日本よりもっと南方域に生息するイルカで日本は北限であり、日本近海での出没には変動があるだけだ」というのが水産庁の見解だそうです。日本に来ているのはおこぼれだから獲りつくしてもかまわないということなのでしょうか。しかし、母体となる南方の生息状況の調査はしていません。
カズハゴンドウも同じく南方に生息する種ですが、いきなり704頭も枠を設けるというのですから、驚きです。こちらについては、後日、専門家でもユメゴンドウと区別がつかないのにどうするのかという話を教えてもらいました。
枠の国内での割り当ては決まっていないので、南のほうが生息域ならは沖縄が有利なのだろうと思いきや、水産庁としては、国内は均一という判断なのだそうです! こうなってくると、科学的判断ではないものが作用しているのだろうと受け止めざるを得ません。
捕獲できる種を拡大したいのは、イルカが獲れなくなってきていることもあるはずで、だからこそイルカの「安定供給」のためと言っているわけですが、そこもあくまで「変動」という主張です。富戸のように、もう10年以上猟を行っていないところがあるにもかかわらず、枠は減らさずに、逆にその枠を他へ回すといったことが許されています。
今回、2種は拡大が決まってしまいましたが、獲る方向、獲る方向ばかりではなく、既存の捕獲枠の削減も真剣に検討すべきではないでしょうか。展示用の生体販売が許容されていることも理解しがたいです。
追記
その後、この2種が中国に輸出されていることもわかりました。詳しくはこちら。
日本から、生きたイルカがどれくらい輸出されているか、最近の情報をアップしていなかったので、貿易統計の品目コードが変更になった2012年以降でデータをまとめました。(2014年にアップした過去記事はこちら)PDFで見る👇[…]
▼またイルカを監禁するのか ※写真はイメージです