実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準への意見

3回目の動物愛護法改正についてまとめページ
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2013.7.6掲載
締切は7月12日(金)18時15分必着です。

以下は、動物愛護管理法に係る告示の改正案のうち、「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」の改正素案に対し、環境省に送った意見です。
あくまで参考として掲載したものですので、以下の改正案をごらんの上、皆さまのご意見をお送りください。

今回PEACEとしては「全面改正へ向けた具体的な議論をするべき」との意見を送っており、現状の縦割り行政の中で環境省が踏み込むことが困難と思われる部分についてはあまり詳細な意見は送っていませんが、国に対し動物実験規制を求めるチャンスですので、ぜひ皆さま思い思いのご意見を送っていただければと思います。


<告示の名称>
「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」

以下すべて、上記告示の改正素案に対する意見です。
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<該当箇所>
資料4 「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の改正素案」の新旧対照表

改正全体について

<意見内容>
関係者も交えた十分な検討を行い、全面改正とするべき。

<理由>
今回の実験動物の飼養保管基準の改正についてはあまりに議論不足であり、小手先の改正の感がある。関係者から、「各省指針・基準をすべて一本化した詳細指針を策定すべき」との意見も出始めており、今後あるべき方向性も含めた具体的な議論をまず重ね、その上での全面改定とするべきである。

特に、動物実験と実験動物は切り離せるものではないにもかかわらず、「『動物実験』は各省、『実験動物』は環境省」とする現在の縦割り行政によって、動物福祉を目的として動物実験の内容に踏み込むような規定が作りづらくなっている現状を打開し、国際的な状況に対応する詳細なガイドラインの整備を行うべきである。

その際には、最低限、OIE(国際獣疫事務局)の陸生動物規約及びCIOMS (国際医学団体協議会)の動物実験に関するバイオメディカル研究の原則を反映させ、国際的に用いられている「実験動物の管理と使用に関する指針(第8版)」等についても参考にしつつ、国際的な動向に対応するべきである。

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<該当箇所>
資料4 「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の改正素案」の新旧対照表
1ページ
第1 一般原則
1 基本的な考え方
「動物を科学上の利用に供することは、生命科学の進展、医療技術等の開発等のために必要不可欠なものであるが、その科学上の利用に当たっては……」

<意見内容>
該当部分を「動物を科学上の利用に供するに当たっては……」とする。

<理由>
現在、環境省は「動物実験の内容には踏み込まない、内容については判断する立場ではない」との見解を示しており、そうであるならば環境省の立場では動物実験を「必要不可欠」と判断するような表現はできないはずである。

また、そもそも動物実験が必要不可欠か否かは議論のあるところであり、動物愛護管理基本指針の「合意形成」の部分でもそのことが述べられている。ここで一方の立場を支持するのは矛盾があるため、「必要不可欠」の記述は削除し、単に「利用に供するにあたっては」とするべき。

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資料4 「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の改正素案」の新旧対照表
1ページ
第1 一般原則
1 基本的な考え方
「……科学上の利用の目的を達することができる範囲において、……」

<意見内容>
該当部分を削除する。

<理由>
実験動物福祉の実践が進んできている現在、科学上の目的の達成以上に動物福祉が優先される場合がある。ここは、単に「できる限り」で十分であり、該当部分を削除することによって、実験動物福祉の推進を図るべきである。

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資料4 「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の改正素案」の新旧対照表
1ページ
第1 一般原則
1 基本的な考え方
「……動物に対する感謝の念及び責任をもって……」

<意見内容>
該当部分を「……動物に対する尊重の念及び責任をもって……」とする。

<理由>
実験動物の苦痛と犠牲に対して心を痛める一般市民が要望していることは、研究者が必要とする動物の犠牲に対し「感謝の念」を持つことではなく、「共感とお詫びの気持ち」を持つことではないかと思われる。

また、「感謝の念」は動物自らが自己を差し出した場合に使われるべき言葉であり、一方的に搾取した場合に使うべきではない。さらに「感謝」は、動物の「犠牲」に対して言及されることが多く、その意味では実験後のプロセスであり、これから実験動物を使うことに対して定める基準に用いるのは適切ではないと考える。

もしここで人の感情に踏み込むのであれば、実験動物を扱うに先立ち持つべき感情について言及すべきであり、動物福祉を実現させるものとしては「尊重」とするのが最もふさわしいと考える。

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資料4 「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の改正素案」の新旧対照表
1ページ
第1 一般原則
2 動物の選定
「管理者は、……」

<意見内容>
該当部分を「管理者は、科学上の理由だけではなく、……」とする。

<理由>
現状の記述では、科学的観点が無視されているように受け止められる。動物の選定にあたっては、まず第一に科学的に合理的な理由があるかどうかが動物実験委員会の審査の対象となるが、ここでは、それのみならず動物の管理を行き届かせるために施設管理上の理由についても考慮せよと述べていると考えられ、そのことを明確にするために、「科学上の理由のみならず」と補足すべきである。

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資料4 「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の改正素案」の新旧対照表
1ページ
第1 一般原則
3 周知
「委員会の設置又はそれと同等の機能の確保」

<意見内容>
① 該当部分を「委員会の設置」とする。(「又はそれと同等の機能の確保」を削除する)
② 委員会の設置条件として、獣医師等、研究に使用する動物を取り扱うに当たり必要な専門性を備えている者と機関外の者を含めるように定める。

<理由>
① 日本において動物実験関係者が主張する「自主管理」の肝は、動物実験委員会の設置と実験計画書の審査である。であるならば、委員会の設置すら満たせない施設において動物実験は行われるべきではなく、この部分は削除するべき。

② 文部科学省等の動物実験指針では委員会の構成に関しても定めがあり、動物の飼養管理の面からも最低限の構成については言及するべきである。その際、特に、OIEの求める動物実験委員会の構成(動物実験の専門家、獣医師、一般人)に近づく形とすることが望ましい。

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資料4 「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の改正素案」の新旧対照表
2ページ
第1 一般原則
4 その他
「……その結果について適切な方法により公表すること。」

<意見内容>
該当箇所を「……その結果および動物の飼養保管状況等(施設数及び収容規模、動物の種類及び使用数・購入数・繁殖数、管理状況等)について、毎年1回程度、インターネットの利用、年報の配付その他の適切な方法により公表すること。」とする。

<理由>
動物実験の透明性を図るために、情報公開についてはより詳細に項目を定めるべき。特に、文部科学省の動物実験指針において「動物の飼養保管状況等」が何を指すのかが明示的でないため、ここは動物の飼養保管を所管する環境省が具体的に内容を定めるべき。
その際、大型動物実験施設の近隣住民から開示の要望の強い動物種、及び、3Rのうち「使用数の削減」の目安となる使用数等の公開は必須とすべきである。
また、点検・公表の頻度についても目安を示すべきであり、公表方法についても文部科学省の動物実験指針と同様の例示をすることで適正化を図るべきである。

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資料4 「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の改正素案」の新旧対照表
2~3ページ
第3 共通基準
1 動物の健康及び安全の保持
(1)飼養及び保管の方法

<意見内容>
新設項として、以下の項目を追加する。
① 動物の欲求に適合した玩具や床材を与えるなど、実験動物の快適性の向上に努めること。
② みだりに恐怖を与えないこと、脅かしたりしないこと。

<理由>
① 日本が欧米に比べて遅れており、かつ法第41条の定めで不十分と考えられる点に、エンリッチメントの推進がある。今回、産業動物の基準に快適性に関する定めが盛り込まれることにならい、実験動物に関しても快適性の向上について盛り込むべきである。
② 「5つの自由」のうち、法改正には反映されなかった「恐怖からの自由」についても、基準で言及するべき。

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資料4 「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の改正素案」の新旧対照表
3ページ
第3 共通基準
1 動物の健康及び安全の保持
(1)飼養及び保管の方法

<意見内容>
野生動物の利用は望ましくないこと、家庭動物由来もしくは所有者不明の犬猫は導入しないことを追加する。

<理由>
野生動物及び自治体が引き取る犬猫の所管は環境省であり、国際的にも動物実験への利用が望ましくないとされるこれらの動物に関して、明確に規定を設けるべき立場にあるのではないか。
特に、今回、「犬及び猫の引取り並びに負傷動物の収容に関する措置」の改正により、自治体が収容した犬猫の動物実験への払い下げが不可能になることを反映させるべきである。

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資料4 「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の改正素案」の新旧対照表
4ページ
第3 共通基準
1 動物の健康及び安全の保持
(3)教育訓練等
「……必要な教育訓練が確保されるよう努めること。」

<意見内容>
該当部分を「……必要な教育訓練を定期的に行うこと。」とする。

<理由>
教育訓練を受けない者が動物実験に携わるべきではない。各省の動物実験指針では既に「必要な措置を講じること」とされており、ここでは「努めること」の表現を改めるべき。
また、教育訓練は一度行えばよいというものではなく、常に最新の知見をアップデートする必要があるため、定期的に行うものと定める必要がある。

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資料4 「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の改正素案」の新旧対照表
7ページ
第4 個別基準
1 実験等を行う施設
(2)事後措置
「……速やかに致死量以上の麻酔薬の投与、頸椎脱臼等の化学的又は物理的方法による等……」

<意見内容>
該当部分を「……速やかに致死量以上の麻酔薬の投与を行う等、」とする。

<理由>
頸椎脱臼はすべての動物種に対して許される方法ではなく、例示に示すのは適切ではない。また、頸椎脱臼等の物理的方法は熟練が必要でもあり、失敗した場合の動物の苦痛は非常に大きいため安易に受け止められないよう、例示として挙げることは避けるべき。

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資料4 「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の改正素案」の新旧対照表
8ページ
第5 準用及び適用除外
「また、この基準は、畜産に関する飼養管理の教育若しくは試験研究又は畜産に関する育種改良を行うことを目的として実験動物の飼養又は保管をする管理者等及び生態の観察を行うことを目的として実験動物の飼養又は保管をする管理者等には適用しない。」

<意見内容>
該当部分を削除する。

<理由>
畜産の試験研究はもちろん、育種研究にもバイオテクノロジーの波は押し寄せており、除外とするのは適当ではない。むしろ、畜産研究施設のほうが、一般公開時に実験動物をふれあいに供するだけで殺処分するなど、不適切と考えられる利用が散見されるため、基準を適用させる必要がある。

また、生態の観察を目的とする場合にも、採血などが行われることもあり、高等教育機関以上の研究・教育施設では、基準の及ぶところとするべきである。(初等中等教育においては、次項の改正を行うことで対応するべき)

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資料4 「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の改正素案」の新旧対照表
第5 準用及び適用除外
「……なお、生態の観察を行うことを目的とする動物の飼養及び保管については…」

<意見内容>
該当部分を「……なお、初等中等教育における生態の観察を行うことを目的とする動物の飼養及び保管については…」とする。

<理由>
いわゆる学校飼育動物に限定されることを明確にすべき。高等教育以上の生態の観察には侵襲的・実験的な手段が伴う場合がある。さらに動物種が特殊であるなど、施設の整備・管理に配慮が必要な場合もあり、基準の及ぶところとすべきである。

以上

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