家庭動物等の飼養及び保管に関する基準改正への意見
以下は、動物愛護管理法に係る告示の改正案のうち、「家庭動物の飼養及び保管に関する基準」の改正素案に対し、環境省に送った意見です。
あくまで参考として掲載したものですので、以下の改正案をごらんの上、ご意見をお送りください。
<告示の名称>
「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」
以下すべて、上記告示の改正素案に対するものです。
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<該当箇所>
資料2「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準の改正素案」の新旧対照表
2ページ
第3 共通基準
1(2)「……みだりに殴打、酷使する等は、虐待となるおそれがあることを十分認識すること」
<意見内容>
該当箇所から「おそれがある」を削除する。
<理由>
改正法第四十四条第1項ではみだりに傷つけることが、また同第2項ではみだりに酷使することがそれぞれ虐待とされており、「おそれがある」という表現は虐待の過小評価につながる。ここでは、「おそれがある」とはせずに、明確に虐待に該当することを示すべき。
(6ページ「第4 犬の飼養及び保管に関する基準」第2項では「虐待に該当することを十分認識すること」との表現が用いられている。)
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<該当箇所>
資料2「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準の改正素案」の新旧対照表
2ページ
第3 共通基準
1
<意見内容>
①新設項として「できる限り行動に自由を与えられるような飼養環境で飼育すること。」を追加する。
②新設項として「みだりに恐怖を与えないこと、脅かしたりしないこと。」を追加する。
<理由>
昨年の法改正においては、動物福祉の「5つの自由」のうち、2つ(行動の自由、恐怖からの自由)が盛り込まれなかったが、法律に盛り込めなかった理由は、実験動物・畜産動物も対象になるためとの説明であった。であれば、それら以外の動物について、保管基準に盛り込むことについて、問題はないのではないか。「5つの自由」の理念を体現する基準とするために、ぜひこの2つを盛り込むべき。
①について:
運動量を確保することについては言及があるが、運動時以外はつなぐなどの飼い方がされる場合があるため、別途行動の自由についての記述が必要と考える。日常の飼養環境においてもなるべく行動の選択がとれるような自由があるべきであり、そのことを明記するべき。
②について:
動物虐待者が動物がおびえるようになることを楽しんでいる記述などもみられ、虐待に準ずる行為として、行なうべきでないと明記するべき。また、虐待の意図はなくとも、みだりに恐怖を与えることによって動物の人との関係を悪化させる場合もあり、ストレスを与えることにより健康を害することにつながる場合もある。また、みだりに驚かされたことで逸走につながる場合もある。
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<該当箇所>
資料2「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準の改正素案」の新旧対照表
3ページ
第3 共通基準
2(2)「……飼養及び保管することは虐待となるおそれがあることを十分認識し……」
<意見内容>
該当箇所から「おそれがある」を削除する。
<理由>
法第四十四条では「排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管すること」が虐待として定められており、ここで「おそれがある」とするのは虐待の過小評価につながる。ここでは、明確に虐待に該当することを示すべき。
(6ページ「第4 犬の飼養及び保管に関する基準」第2項では「虐待に該当することを十分認識すること」との表現が用いられている)
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<該当箇所>
資料2「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準の改正素案」の新旧対照表
4ページ
第3 共通基準
7(3)「逸走した場合に所有者の発見を容易にするためマイクロチップを装着する等の所有明示をすること。」
<意見内容>
該当箇所冒頭に「犬及び猫、特定動物等にあっては」を追加する。
もしくは、該当箇所文末を「……所有明示に努めること。」とする。
<理由>
当基準の文言と「動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置」の文言との間に矛盾があってはならないと考えられるため、ここはいずれかの修正を行なうべきである。
つまり、「動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置についての改正素案」の「第4 識別器具等の装着又は施術の方法」においては、文末は「常時動物に装着するように努めること。」となっており、以下の除外規定が設けられていることと整合性をつけるべきである。
「幼齢な個体又は識別器具等の装着若しくは施術に耐えられる体力を有しない老齢の動物である、疾病にかかった動物である等の特別な事情がある場合にあっては、この限りでない。」
また、家庭で飼育されている一般的な小動物のうち、特に体の小さいもの等(ハムスターなど齧歯類、小鳥等)に関しては、マイクロチップ挿入は一般的ではなく、所有者明示に関して有効かつ一般的に行なわれているような手段はないと考えられる。
ここで「すること」とするのであれば、犬猫及び特定動物等に限定すべきであるし、すべての家庭動物を対象にするのであれば、「装着が可能である動物については装着に努めること」とするのが妥当である。
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<該当箇所>
資料2「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準の改正素案」の新旧対照表
2ページ以降
第3 共通基準
<意見内容>
新設項として、「やむを得ず継続して飼養することができなくなった場合には、適正に飼養することのできる者に譲渡するように努めること。また、譲り渡しの際には、必ず新たな飼養者の適正を見極め、当該動物についての十分な情報提供を行うこと。」を追加する。
<理由>
「第4 犬の飼養及び保管に関する基準」と「第5 猫の飼養及び保管に関する基準」には、やむを得ず継続して飼養することができなくなった場合の記載があるが、本来、遺棄や放置をすべきではないことは、すべての動物に対して言うべきではないか。
また、その際、新たな飼養者はだれでもよいというわけではなく、飼育者としての適正について判断をするべきである旨も盛り込むべきである。
さらに、元の飼い主の責任として、それまでの飼育環境や動物の性格、病歴、治療歴等について、十分な情報提供を行なうものとするべきである。
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<該当箇所>
資料2「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準の改正素案」の新旧対照表
5ページ
第3 共通基準
8(7)「……譲渡先又は譲渡先を探すための……」
<意見内容>
該当箇所を「……適切な譲渡先又は適切な譲渡先を探すための……」とする。
(「適切な」を追加する。)
<理由>
同じように飼養保管が困難となるような施設、もしくは飼養保管に問題のある施設等に譲渡されても、動物の幸せにはつながらない。ここは適切な譲渡先に限定するべき。
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<該当箇所>
資料2「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準の改正素案」の新旧対照表
6ページ
第4 犬の飼養及び保管に関する基準
「犬をけい留する場合には、けい留されている犬の……」
<意見内容>
該当箇所を「犬をつなぐ場合には、つながれている犬の……」とする。
<理由>
一般の飼い主にわかりやすい表現にする。一時的なけい留を指す印象もあたえるため、つなぎ飼いの飼い主に自覚をうながす意味でも、つなぐこと全般であることを明確にするべき。
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<該当箇所>
資料2「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準の改正素案」の新旧対照表
8ページ
第5 猫の飼養及び保管に関する基準
3「猫の所有者は、……を講じること。」
<意見内容>
該当部分冒頭を「猫の所有者等は……」とし、文末に「(自己の所有しない猫に給餌等を行なう場合を含む。)」と追加する。
<理由>
「所有者」のみならず、自己の所有しない猫に給餌等を行なう場合についても、繁殖制限を行なうべきことを明確にする。繁殖制限をせず餌やりをして不幸な子猫を生み出しているケースが多いのは周知のとおりであり、対策がとれるような記述を盛り込むべき。
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<該当箇所>
資料2「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準の改正素案」の新旧対照表
8ページ
第6 学校、福祉施設等における飼養及び保管
1「管理者は、……努めること。」
<意見内容>
該当部分の前に「学校、福祉施設等の動物の飼育については、飼養保管にかかわる人員や時間の配分が困難である場合が多いこと等から限定的であるべきこと、また、適正な飼養には十分な経費等が必要であることを認識し、その飼養に先立ち慎重に検討すること。」と追加する。
<理由>
学校等での動物の飼育は、本来の業務の片手間に行われているものであり、動物に目が行き届かないのが現状である。長期休暇中の十分な世話が困難、予算に治療費が考慮されていない、季節ごとの暑さ寒さ対策がなされていないなど、本基準に合致した条件での飼育が行なわれていない実態があるため、本来は飼育自体が望ましくない旨を明記すべき。
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<該当箇所>
資料2「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準の改正素案」の新旧対照表
9ページ
第6 学校、福祉施設等における飼養及び保管
7「……動物の飼養及び保管が適切に行なわれるように配慮すること。」
<意見内容>
該当部分を「……動物の避難もしくは飼養及び保管が適切に行なわれるように、緊急時に採るべき措置に関する計画をあらかじめ作成すること。」と変更する。
<理由>
学校や福祉施設の動物についても、災害時には避難させる必要が出てくる場合もあるはずであり、「避難」も選択肢として追加するべき。
また、そもそも動物を飼育する必要のない施設であり、災害時対策ができないのであれば、飼育自体をやめるべきという意味でも、「配慮」といった弱い文言は避けるべき。特に、実験動物の飼養保管基準から除外されている生態観察の目的の動物が含まれるため、ここでは実験動物の飼養保管基準に準じ、具体的な計画の立案を求めることが妥当だと考える。
以上