PEACEも加盟する美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会で連携して活動しているNPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)さんが、『JAVAコスメガイド』の最新版(Vol.6)を発行されました。動物実験していない化粧品メーカー等の情報をまとめた冊子になります。
普段なにげなく使っている化粧品やシャンプー、洗剤などの製品は、私たちの生活を支え、豊かにしてくれます。しかし、こういっ…
日本から中国への普通化粧品の輸出に関しても、動物実験は回避できるようになったが…
新しいコスメガイドで注目していた点のひとつに、中国での動物実験の問題があります。中国へ化粧品を輸出する場合、中国国内の試験機関で動物実験を実施する必要がありましたが、一定の要件を満たした普通化粧品(一般化粧品)については、2021年5月1日から、その義務付けが免除されています。
2021年2月13日公開2025年1月19日最終更新世界45カ国に広がる法的禁止化粧品の動物実験を禁止している国の一覧について化粧品の動物実験禁止は、今まさに世界中で状況が動いています。できる限りリアルタイムで更新し[…]
3月4日、中国が一般化粧品(普通化粧品)の輸入についても動物実験の義務づけを廃止するとしていたことについて、新たに施行日が5月1日に決まりました。ただし、今のところ、動物実験なしで中国に輸出できることがはっきりしているの[…]
フランスやイギリスは中国が求める輸出国政府発行のGMP証明書を出すことによって、中国での動物実験を回避できるようになったと報道されていることを受け、PEACEでは日本の厚生労働省に対応について問い合わせましたが、担当者が変わった時期とも重なり、はっきりした回答が得られませんでした。
そこで日本でGMP証明書を発行している日本化粧品工業会(粧工会)*に問い合わせたところ、国際部から以下の回答をいただきました。回答は2年前にいただいていたものですが、現在も変わりないことを確認しています。
*日本化粧品工業連合会(粧工連)が2023年4月に改組され、日本化粧品工業会(粧工会、JCIA)となりました。
粧工会国際部回答より
一定の条件を満たした化粧品の動物実験免除には、ご記載の通り「輸出国政府の発行する」という条件があるため、当会発行のGMP証明書は要件を満さず、動物実験免除のための資料としては認められません。
日本からの申請では、厚労省が発給する「製造業に関する証明」で対応しており、提出した企業からは、中国政府に受理され、動物実験データ提出の要求は受けていないと聞いています(すべての企業を調査したものではありません)。
つまり、日本からの輸出においても、厚労省が発給する「製造業に関する証明」によって、一定の要件を満たした普通化粧品の輸出については動物実験を回避できるようになっているということになります。
詳しくは以下の通りとのことです。
以下に若干捕捉説明いたします。
化粧品登録と届出資料管理規定33条(二)(以下参照)では、以下のように定められています。
(二)普通化粧品の製造企業がすでに所在国(地区)の行政主管部門に発行される生産品質管理システム関連の資格認証を取得し、且製品安全性リスク評価の結果が十分に製品の安全性が確認できた場合、当該製品の毒性学試験報告書の提出が免除できるが、下記状況に当てはまる場合は除く:
1.製品が乳幼児や子供用と訴求している;
2.製品にモニタリング期間中の化粧品新原料を使用している;
3.採点評価の結果に基づき、届出人、境内責任者、製造企業が重点監督対象とされている。
複数の製造企業で製造する場合、全ての製造企業が所在国(地区)の行政主管部門に発行される生産品質管理システム関連の資格認証を取得した上で毒性学試験報告書の提出が免除できる。
ここに記載の、「生産品質管理システム関連の資格認証」という部分を一般的には「GMP証明」ととらえられているかと思いますが、正確に言えば「生産品質管理システムに沿って生産していることを証明するもの」であって必ずしもGMP証明である必要はないと解釈できます。
また、GMP証明を国が発給する仕組みは日本にはありませんし、それを実現するにはかなりの困難と長い期間が予想されました。
この状況を踏まえ、当会と厚労省とで協議した結果、以下を根拠に厚生労働省が発給する「製造業に関する証明」で対応することとしました。
・ 日本では、化粧品の製造にあたっては、厚労省(窓口は都道府県庁)が製造所を審査したうえで「化粧品製造業の許可証」を発給している。
・ 「製造業に関する証明」は「化粧品製造業の許可証」をもとに通常粧工連が発給しているが、「輸出先国の法令等により要求されている場合に限り、厚生労働省が証明書の発給を行うこととする」と定められている。
この結果、前述の通り厚労省が発給した「製造業に関する証明」が中国政府に受理されている状況です。
日本の厚生労働省も、中国での動物実験の問題に対応してくれており、実際に中国でも受理されていることが、この回答でわかりました。
しかし実際には、多くの企業がまだ中国での動物実験を行っている…
新しい『JAVAコスメガイド』でわかったことですが、実際にはまだ多くの企業(大手・有名化粧品会社を含む)が中国への輸出に際しての動物実験を許容する方針をとっていました。
普通化粧品については動物実験が回避できるようになったのに、なぜ?と思いましたが、これはやはり、特殊化粧品や、動物実験を回避できない一部の普通化粧品の輸出が行われているためと考えられます。
中国では化粧品には、特殊化粧品と普通化粧品の2つのカテゴリがあり、特殊化粧品は染髪⽤、パーマネント用、シミ取り⽤と美白、⽇焼け⽌め、抜け毛予防、および新たな効果のある化粧品が該当し、普通化粧品はそれ以外のものになります。
動物実験を回避できるようになったのは、乳幼児・子供用とうたっていない等の要件を満たした普通化粧品なので(上記の粧工会回答参照)、それ以外の化粧品の輸出を行っている企業は、中国での動物実験を許容せざるを得ないのだと思います。1つ1つの企業に確認したわけではありませんが、粧工会からも、その通りでございますとの回答をもらいました。
中国での動物実験については、中国での販売を止めるという選択をした企業もあります。また動物実験を回避できる範囲で販売することも可能です。しかし巨大な中国市場が企業にとって魅力であることも事実であり、企業が個別に対応するには限界のある大きな問題となっています。中国政府へ更なる動物実験の回避を可能にするよう、国際的な働きかけが必要であり、輸出企業もぜひそのような働きかけに尽力をしてほしいと伝えていく必要があります。
中国への輸出に際しての動物実験を許容している企業の一覧については、JAVAさんのコスメガイド最新版でご確認ください。
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