化粧品の動物実験を禁止している国の一覧

2021年2月13日公開
2024年5月24日最終更新

化粧品の動物実験を禁止している国の一覧について

化粧品の動物実験禁止は、今まさに世界中で状況が動いています。できる限りリアルタイムで更新しますが、タイムラグがあることはご容赦ください。

化粧品の動物実験の法的禁止とは…

一般に「化粧品の動物実験禁止」とひとまとめにされていますが、実際には以下の2つの禁止が行われています。両方を禁止している場合を「完全禁止」と呼んでいます。ある国が化粧品及びその成分に動物実験を行うことを禁止しても、それだけでは他の国で動物実験が行われた製品の輸入を阻止することはできないため、販売の禁止も必要になります。

  • (施行日以降に)化粧品の完成品および原料に対して動物実験の実施を禁止する
  • (施行日以降に)完成品もしくは原料に対し動物実験が行われた化粧品の販売を禁止する

ただし、販売の禁止が行われていれば、実質的に実施の禁止もカバーされていると考えられます。

完全禁止が実現している国や地域

EU(欧州連合)

完全禁止を実現。ただし、化学物質規制「REACH」との競合が問題になっている。

1993年 段階的な廃止を合意。

※EU全体での禁止が実現する前に法的禁止を実現した国もあった。

  • オランダ 動物実験を規制する法律で禁止
  • ドイツ 動物保護法で禁止(メイク用品は1986年に禁止)
  • イギリス 化粧品の安全性に関する法律で禁止

2003年 「第7次化粧品指令」改正。何度も延期されてきたが、ようやく段階的な禁止のタイムテーブルが決まった。

2004年 化粧品の最終製品に対する動物実験の実施禁止施行。

2009年 化粧品成分も含めた動物実験の実施の完全禁止及びEU域外で動物実験された化粧品の販売の禁止の施行。ただし販売禁止は、一部の毒性試験(薬物動態・生殖毒性・反復投与毒性試験)が適用除外とされた。

2013年3月11日 完全禁止の施行。除外規定が撤廃された。

2013年7月11日 「EU化粧品規則」が施行された。(「化粧品指令」では加盟国に法制化の権限が委ねられていたが、「規則」は加盟国に対し直接の強制力を持つ)

企業に対し、PIF(Product Information File;製品情報ファイル)の保管が義務付けられており、そこには安全性データの記載が求められている。動物実験が実施された日付、場所、目的も記載しなければならないため、当局は、監査により違反がないかどうかを確かめることができる。

2018年5月 欧州議会が世界的な化粧品の動物実験禁止を求めていく決議を採択

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2020年8月 欧州化学品庁(ECHA)の上訴審委員会が、ドイツの化学品メーカー「シムライズ」(Symrise)に対し2つの成分(ホモサレートとサリチル酸2-エチルヘキシル)について動物実験を行うよう求める最終決定を行い、問題となっている

2021年1月 EU一般裁判所はフランスのEsso Raffinage(エッソラフィナージュ)の訴えに関しては、ECHAに対し、動物実験は最終的な手段でなければならないとし、代替法を考慮する義務があるとする判決

2021年8月、化粧品の動物実験禁止を守り、REACHにおいて新たな動物実験が必要とされる要件を廃し、動物実験廃止へ向けたロードマップを策定するための欧州市民イニシアチブ(100万人署名)が立ち上がった。2022年8月31日の期限までに目標を達成。

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イギリス

EU加盟国だったがEUの禁止実現より早く禁止を実現。

1996年 動物実験法(Animals (Scientific Procedures) Act)により化粧品の最終製品や成分の動物実験を禁止。

2020年12月31日 EUを脱退。化粧品の動物実験禁止は維持される。

※以下、欧州自由貿易連合(EFTA)/欧州経済領域(EEA)加盟国もEUの化粧品の動物実験禁止を受け入れている。

スイス

欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国(ただしEEA非加盟)

2016年3月 動物実験された化粧品の販売禁止を定めた法令が成立。2017年5月施行。

ノルウェー

欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国

2013年 EUの完全禁止施行と同時に、化粧品の動物実験禁止が発効。ただしボトックスを含む医薬品は、一部は化粧品として使用されているが、新しい規則から除外される。

アイスランド

欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国

リヒテンシュタイン

欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国 そもそも化粧品に限らず実験動物の利用が禁止されている。

メキシコ

2021年9月 化粧品の動物実験を禁止する法律が成立。北米で初。国外で動物実験された化粧品の輸入や販売も禁止される。

イスラエル

2007年5月 一般化粧品、家庭用洗剤及びそれらの原料のための動物実験の実施禁止が施行(Animal Experimentation Law)。

2013年1月 動物実験された化粧品の輸入と販売の禁止が施行(2010年に成立、Pharmacists Ordinance)。

インド

2014年5月 化粧品のための動物実験の実施の禁止が施行。

2014年11月 動物実験された化粧品の輸入を禁止が施行。

カナダ

2018年6月20日 議会上院で「Cruelty-Free Cosmetics Act」が可決された。下院の通過待ち。(このときは成立せず)

2023年、化粧品の動物実験禁止の方針が公表された。

2023年6月、化粧品の動物実験禁止を盛り込んだ食品医薬品法の改正法が成立。

チリ

2020年12月、化粧品の動物実験を禁止する法案が提出された
2023年12月20日、化粧品のための動物実験の実施と、世界の他の地域で動物実験が行われた化粧品の製造・輸入・販売を禁止する法案が可決された。南米で化粧品の動物実験を廃止する3番目の国となった。正式な公布後、12カ月で施行されることになっている。

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完全禁止ではないが禁止が行われている国や地域

ニュージーランド

2015年 化粧品の完成品や成分(化粧品のみに利用されることを目的とした原料及び規定されたその他の原料)のために動物実験を実施することを禁止(Animal Welfare Amendment Act (No 2) 2015)。

トルコ

2015年 化粧品の動物実験禁止が成立(Regulation Amending the Regulation on Cosmetics (2015))。国内における化粧品の完成品のための動物実験の実施が禁止される。評価済みの代替法がある場合は、化粧品の原料に対しても動物実験の実施が禁止される。動物実験が実施された完成品の販売及び動物実験が実施された原料が含まれる化粧品の販売が禁止されるが、輸入化粧品については、代替法がない部分については動物実験は禁止されない。

2016年1月 施行。

韓国

2017年 動物実験された化粧品の販売禁止が成立したが、代替法がある試験のみの禁止。また特定の製品や原料分野等は除外されている。2018年より施行。(Cosmetics Act改正)

グアテマラ

2017年 化粧品の動物実験の実施を禁止。

台湾

2019年、化粧品の完成品や成分の動物実験の実施を禁止。ただし、適用除外がある。

コロンビア

2020年 動物実験禁止に関する法案を承認。輸入もしくは国内製造された化粧品・トイレタリー製品・吸収剤製品もしくはそれらに使われる成分について、試験のために動物を使用することが禁止される。

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オーストラリア

2020年7月1日 何度も施行延期されてきたが、動物実験の禁止が施行された。この日以降に行われた動物実験による安全性データは、新たな化粧品成分を国内に導入する際には無効となる。

エクアドル

2018年の環境法典(Código Orgánico del Ambiente (COA))で、化粧品の試験のための動物の利用が禁止された。

ブラジル

2014年 サンパウロ州、マトグロッソ州で化粧品の動物実験の実施の禁止。

その後、パラナ州、パラー州、アマゾナス州が続いた。

2017年12月 リオデジャネイロ州で、化粧品の動物実験の禁止と、動物実験された化粧品の販売の両方を禁止する州法が成立。(両方の禁止は南北アメリカ大陸で初

2021年9月現在 10州が化粧品の動物実験を禁止。

2022年12月 連邦法案 PL 3062/2022 が連邦議会上院を通過。

2023年2月24日付けで、国の動物実験管理評議会(CONCEA)が新たな規制を導入。化粧品成分の既知の効能については動物実験を禁ずるが、未知の成分については代替法を義務付けるのみとなっている。(新たに動物実験を行った化粧品を他国から輸入・販売することは妨げられていない。)

※販売禁止も含む連邦法の下院通過が待たれている状態。

禁止法案の動きがある国/一部の州で禁止されている国

アメリカ

2015年 動物実験された化粧品の製造や国内での販売を排除する「Humane Cosmetics Act」が法案提出された。(その後も提出されているが成立していない)

その後、以下の州で何らかの化粧品の動物実験禁止を実現する州法が成立している。

2018年 9月 カリフォルニア州
2019年 6月 ネバダ州
2019年 9月 イリノイ州
2021年 3月 バージニア州
2021年 5月 メリーランド州
2021年 6月 メイン州
2021年 7月 ハワイ州
2021年11月 ニュージャージー州
2022年 6月 ルイジアナ州
2022年12月 ニューヨーク州
2023年8月 オレゴン州
2024年3月 ワシントン州

また、オハイオ州、ロードアイランド州も同様の法案の動きがある。

施行スケジュール:
2020年1月1日 カリフォルニア州、イリノイ州、ネバダ州の3州で動物実験された化粧品の完成品や成分の販売禁止が施行された。
2021年11月1日 メイン州で、動物実験された化粧品の販売禁止が施行された。
2022年1月1日 バージニア州で化粧品の動物実験の実施と、動物実験された化粧品の販売禁止が施行された。
2022年3月1日 ニュージャージー州で動物実験を行った化粧品の販売禁止が発効。
2022年7月1日 メリーランド州で動物実験を行った化粧品の販売禁止が発効。
2022年 8月 ルイジアナ州で動物実験を行った化粧品の販売禁止が発効。
2023年1月 ニューヨーク州で動物実験を行った化粧品の販売禁止が発効。
2024年1月1日 オレゴン州で動物実験を行った化粧品の販売禁止が発効。
2025年1月1日 ワシントン州で動物実験を行った化粧品の販売禁止が発効する。

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2023年9月、人道的化粧品法が連邦議会に再提出されました。

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12日、アメリカ議会で、化粧品の動物実験廃止のための連邦法案「人道的化粧品法」が再提出されました。初めて法案提出がなされたのは2014年ですが、これまで進展はありませんでした。しかし、世界44か国およびアメリカ 11 州で化粧品の動物実験が[…]

2022年化粧品規制近代化法

2022年、 化粧品規制近代化法(MOCRA)を含む2023年統合法が成立しました。このなかで「化粧品の安全性試験のために動物実験を使用すべきではなく、適切な許容範囲を除いて段階的に廃止すべきであるというのが議会の意思である。」との一文が盛り込まれました。

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アメリカでは現在、10州で動物実験された化粧品の販売の禁止をする州法が定められていますが、現在でも連邦法は実現していません。しかし昨年、 2022年化粧品規制近代化法(MOCRA)を含む2023年統合法が議会を通過し、12月29日、[…]

アルゼンチン

2015年6月 化粧品の動物実験禁止の法案が提出された。(成立していないと思われる)

【参考情報】その他の動向

中国本土

中国に輸出する企業にとって中国の動物実験の義務付けがネックだが、徐々に解除の方向にある。ただし、市販後に抜き取り検査があり、動物実験が行われている問題もある。

2014年6月 国内で製造される化粧品に対する動物実験の義務付けを解除。

2019年3月 動物実験代替法の受け入れ公表。2020年1月から実施。

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中国では、2016年4月から、中国国内で製造される化粧品については動物実験の義務付けが外れていますが、輸入化粧品については依然として動物実験が求められています。しかし、この3月22日、中国の国家薬品監督管理局 (NMPA※)[…]

2020年6月29日 国務院が2021年1月1日から施行予定の「中国化粧品監督管理条例」を公布。旧「化粧品衛生監督条例」を改定したもの。

  • 化粧品は「特殊化粧品」と「一般化粧品」に分けられる。前者は登録制、後者は届出制で管理する。(特殊化粧品は、ヘアカラー用、パーマ用、シミ抜き用、日焼け止め用、抜け毛防止用の化粧品および新たな効能をうたう化粧品)
  • 原料は「新原料」と「すでに使用された原料」に分けられる。新原料は、リスクの高いものを登録制、それ以外は届出制で管理する。

2020年11月5日 中国国家薬品監督管理総局(NMPA、旧CFDA)が「化粧品登録及び備案資料規範」「新化粧品原料の登録及び備案資料規範」「化粧品機能性声明評価規範」の2度めのパブリックコメント案公開。一般化粧品については、輸入についても、一定の条件を満たした場合に動物実験を行わなくてよいことになる。

2021年1月 フランスが一般化粧品を動物実験なしで中国に輸出できる最初の国となったとの報道。(国もしくは地方政府によるGMP証明書を求める中国側の要件をクリア)

2021年3月4日 一般化粧品の動物実験義務づけ撤廃の施行日は、2021年5月1日との公表があった。

ASEAN

歴史的にEUの規制に合わせてきており、世界的な動物実験禁止の拡大に抵抗することはないと考えられている。

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