農林水産省通知:アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理

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農林水産省が2017年11月にアニマルウェルフェアに関する通知を各地方農政局等に通知しました。地方農政局から都道府県に周知するとともに、管理者及び畜産関係者へ周知を図るようにという流れになっています。

これが現状の日本政府のウェルフェアの考え方ということになりますが、例えば拘束飼育や、きわめて狭隘な設備での過密飼育等については、判断を避けているように感じます。

  • アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の基本的な考え方について
    ※改訂版が出ているため、既にリンク切れ

内容は以下の通り。


29生畜第794号
平成29年11月15日

地方農政局生産部長
北海道農政事務所長
内閣府沖縄総合事務局農林水産部長 殿

(農林水産省)生産局畜産部畜産振興課長

アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の基本的な考え方について

我が国では、これまで、専ら健康、生産性の向上及び栄養に着目した家畜の飼養管理の適正化が図られてきた。しかし、近年、家畜の感受性を理解し、その生態や欲求を妨げることがないよう、アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理が求められるようになっている。

また、我が国も加盟する国際獣疫事務局(OIE)では、「陸生動物衛生規約」において、アニマルウェルフェアに関する勧告が順次採択されてきた。

このような潮流の中で、農林水産省は、アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理(家畜の快適性に配慮した飼養管理)を行うことにより家畜のストレスや疾病を減らすことは、畜産物の生産性や安全の向上にもつながることから、アニマルウェルフェアの考え方を踏まえた(公社)畜産技術協会による「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の飼養管理指針」の策定等を支援するとともに、その普及を図ってきたところである。

しかし、(公社)畜産技術協会が同指針に基づく飼養管理の実施状況について調査した結果、給餌や給水等基本的な項目は、ほぼ全ての農家で概ね適切に行われていたものの、同指針で推奨している方法とは異なる飼養管理が行われている項目も一部見られる状況であった。

今後、畜産物の輸出拡大に向け、また、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会においても、持続可能性に配慮した畜産物の調達基準で快適性に配慮した家畜の飼養管理が求められていることから、我が国におけるアニマルウェルフェアに配慮した飼養管理の水準の向上を更に図っていく必要がある。

ついては、アニマルウェルフェアに配慮した飼養管理を広く普及・定着させるため、改めて同指針の基本的な考え方を整理したものを下記のとおり示すので、貴局管内の都道府県に周知するとともに、管理者及び畜産関係者への周知を依頼されたい。

なお、都道府県に対しては、各都道府県の生活衛生・環境部局等とも連携して周知を図るよう併せて要請ありたい。

1 アニマルウェルフェアの定義等

OIEによる勧告では、アニマルウェルフェアについて、「動物がその生活している環境にうまく対応している態様をいう。動物は(科学的証拠が示しているように)健康で、快適で、栄養豊かで本来の生態を発現できている場合であって、痛み、恐れ、苦痛等の不快な状態を経験していないときには、良好なウェルフェアの状態にある」と定義している。

また、同勧告ではアニマルウェルフェアに役立つ指針として、「5つの自由」(①飢え、渇き及び栄養不良からの自由、②恐怖及び苦悩からの自由、③物理的及び熱の不快からの自由、④苦痛、障害及び疾病からの自由、⑤通常の行動様式を発現する自由)が示されている。

これら5つの自由が全ての動物においての基本的な理念であることを踏まえ、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)第2条第2項に「何人も、動物を取り扱う場合には、その飼養又は保管の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、適切な給餌及び給水、必要な健康の管理並びにその動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保を行わなければならない」と基本原則が規定されている。

2 5つの自由の確保

家畜の飼養管理における「5つの自由」を確保するための対応は、以下のとおりである。家畜が良好なウェルフェアの状態にない場合、特定のストレス行動を始めとする異常行動の発現、乳量及び産卵率の低下、外貌の変化、疾病の罹患率や死亡率の上昇等が生ずることがある。このため、家畜の観察を少なくとも1日1回は実施し、これらの兆候が確認された場合には、原因の特定に努め、その改善を図ること。

なお、以下の各項目に示す対応は、別の項目に示す自由を確保するための対応としても有効なものである。

(1)飢え、渇き及び栄養不良からの自由

家畜の発育段階等にあわせ、各畜種ごとの栄養学的要求を考慮し、生理学的要求を満たす適切な量と質のバランスが取れた採餌を家畜が行えるよう努める。期待される成長曲線から逸脱した体重の変化及び急激な減少は、疾病や良好なウェルフェアの状態にない可能性を示すので留意する。

飼料については、家畜の健康に悪影響を与えるものが存在しないか必要に応じて検査し、汚染や劣化を最小限に抑えて保管する。

(2)恐怖及び苦悩からの自由

突然の予期せぬ騒音にさらす等の家畜の不適切な取扱いは、家畜に恐怖と苦悩を引き起こすことがあることを考慮する。各種施設や機器は、騒音が最小限となるよう維持・管理する。

(3)物理的及び熱の不快からの自由

家畜にとって快適な温度域は、品種や発育段階等により異なる。このため、飼養する家畜にあわせた暑熱対策や寒冷対策を行い、適温の維持に努める。アンモニア等有害物質の畜舎内の過度な滞留は、呼吸の不快感や疾病の原因となるので、その低減に努める。

(4)苦痛、傷害及び疾病からの自由

飼養管理の円滑化、飼養者の安全若しくはアニマルウェルフェアの改善(例えば牛の除角、去勢、蹄の手入れ)、又は特定の治療(例えば、牛の子宮脱)のために家畜に外科的・非外科的処置を行う場合、処置が適切に行われなければアニマルウェルフェアが損なわれることを考慮し、若齢時に実施する又は獣医師の指導の下で麻酔や鎮痛剤を使用する等により、家畜の苦痛を緩和するよう努める。また、外科的処置については、家畜への苦痛の少ない代替方法の採用を検討する。

(5)通常の行動様式を発現する自由

家畜を群飼する際には、群内の家畜同士の社会的相互作用を考慮する。多くの品種では家畜同士で優劣の序列をつける習性があることから、群内の家畜同士が敵対し緊張感が徒に増すことがないよう、群の構成に留意する。また、高い密度での飼養は怪我の発生を増やし、摂食・摂水、運動、休息等の行動に悪影響を与える可能性があることに留意する。

畜舎は、①突起物等家畜が怪我をする原因がない構造であること、②清浄性を保つため清掃・消毒ができること、③床面は排水がよく、表面が乾燥しやすいものであり、その材質は滑りにくいものであること ④家畜が容易に休息姿勢をとったり立ち上がったりすることができ、家畜が休息する際の十分なスペースが確保されていること、に留意する。

また、各飼養畜種の習性に応じた十分な光量が確保されるよう、自然光に加え、照明を適切に使用することにより家畜に不快感を生じさせないよう配慮する。

3 家畜の飼養管理に携わる者の責務

家畜の飼養管理に携わる者(管理者及び飼養者)は、その役割や責任に応じ、家畜の飼育方法や防疫措置とともに、家畜の行動、病気の一般的兆候、ストレス、痛み、不快感等の良好なウェルフェアの状態にない場合の把握方法やその改善方法を理解する必要がある。

4 その他

各畜種における詳細な飼養管理方法等については (公社)畜産技術協会が公表している「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の飼養管理指針」及びOIEの「陸生動物衛生規約」を参考にすること。
なお、現在、同協会において家畜輸送等に関する指針を検討中であることから、策
定後は同指針を参考にされたい。

※「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の飼養管理指針」に基づく飼養管理の実施状況調査結果(概要)は割愛。PDFをご覧ください。

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